季語|芙蓉(ふよう)

初秋の季語 芙蓉

白芙蓉(しろふよう)酔芙蓉(すいふよう)

俳句と季語(当盛六花選・芙蓉)アオイ科フヨウ属の落葉低木。中国では蓮のことを芙蓉と呼んでおり、日本では、区別するために「木芙蓉(もくふよう)」と呼ぶ。蓮のことは「水芙蓉(すいふよう)」とも呼ぶ。ただし、俳諧歳時記栞草では、「木芙蓉」と書いて「ふよう」と読ませ、蓮のことを「草芙蓉」と呼んでいる。

槿(むくげ)と似ているが、槿は雌しべの先が真っすぐなのに対し、芙蓉は上に向いて曲がる。ハイビスカスも近縁種である。
中国原産で、沖縄、九州・四国の海岸近くに自生する。7月から10月頃に花をつける。朝咲いて夕方には萎む1日花で、次々に花を咲かせる。「酔芙蓉」は、朝は白く、時間が経つにつれて赤みがかってくるため、酔った姿に擬して名がついた。

富士山には、「芙蓉峰」あるいは「芙蓉」の名がついている。

【芙蓉の俳句】

日を帯びて芙蓉かたぶく恨みかな  与謝蕪村
たちいでて芙蓉のしぼむ日に逢へり  加舎白雄

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|踊(おどり)

初秋の季語 

踊子(おどりこ)

踊の俳句と季語俳句で「踊」と言えば、盆踊りのことで秋の季語となる。盆に帰ってきた先祖の霊を慰めるための行事である。
俳諧歳時記栞草の「踊」の項には、「懸踊」「念仏踊」「題目踊」「燈籠踊」「伊勢踊」「木曾踊」「小町踊」「七夕踊」が載る。

平安時代に空也上人が始めた、死者を供養するための踊念仏が、盂蘭盆会の行事と結びつき、盆踊りになったと言われている。原初の盆踊りは、死者に扮して頬被りをし、新盆を迎える家の前で輪を作って踊ったという。本来は、旧暦7月15日の晩に満月の下で盆踊りを行い、16日に精霊送りをした。
時代が下ると、男女の出会いの場としての性格を帯び、風紀を乱すとして、取締り対象となることもあった。

「踊り」は、「尾」と、操るの意味の「取る」からなるという説がある。犬の尾をイメージした躍動感が、「おどる」なのかもしれない。
因みに、「踊」は跳躍運動をもとにした動きで、「舞」は旋回運動をもとにする動きだと言われている。

現在では、全国各地で盆踊りが開催されている。中には阿波踊りのように、一地方で開催されていたものが全国に広がっていった例もある。
踊りと言えば、出雲阿国の歌舞伎踊りも知られるが、こちらは現在の「歌舞伎」に受け継がれている。阿国は、出雲大社勧進のために、「ややこ跳」を行ったとされる。

【踊の俳句】

六十年踊る夜もなく過しけり  小林一茶

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季語|西瓜(すいか)

初秋の季語 西瓜

西瓜ウリ科の西瓜の原産地は、アフリカの砂漠地帯。日本への伝来は室町時代と考えられているが、鳥獣戯画に西瓜と見られる貢物が描かれており、平安時代に伝来していた可能性もある。
西瓜は、江戸時代後半に全国に広まったと考えられているが、当時のものに縦縞はなく、「鉄かぶと」と呼ばれる黒色のものだった。
明治時代には、世界各地から様々な品種の西瓜が導入され、栽培されるようになった。現代では交配も進み、大玉種、小玉種ともに多くの種類の西瓜が作られている。
赤肉系大玉品種で一般的な「祭ばやし777」の露地物は、7月から9月上旬に出回る。ハウス栽培だと、4月下旬に店頭に出ていることもある。

立秋を過ぎた頃に旬となるため、秋の季語として扱われる。しかし、現代の日本では夏の風物詩となっており、夏の砂浜では西瓜割りに興じる姿をよく目にする。
迷信に、「西瓜の種を食べると臍から芽が出る」ということがあるが、スイカの種は栄養価も高い。アジアやアフリカでは、西瓜の種を食材にしている地域もある。

中国の西方から伝来した瓜であるため「西瓜」の名がついたとされるが、水分を多く含んでいるから「水瓜」の意味で、スイカと名付けられたとの説もある。

【西瓜の俳句】

こけざまにほうと抱ゆる西瓜かな  向井去来

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季語|蜩(ひぐらし・かなかな)

初秋の季語 

かなかな

蜩の俳句と季語カメムシ目セミ科に属するの一種で、春蝉と近縁。朝夕に甲高い声で合唱し、「カナカナ」と聞きなす。
俳句を詠むに当たって、蝉は夏に分類されるが、蜩は秋に分類され、七十二候にも初秋に寒蝉鳴(ひぐらしなく)がある。しかし、実際には蝉の中でも春蝉に次いで早くから鳴き始め、梅雨時には合唱が始まり、9月くらいまでその声が聞こえる。

日が暮れる頃に合唱が聞かれることから、日を暮れさせるものとの意味で「ひぐらし」の名がついた。万葉集には蝉を詠んだ歌10首の内、9首が蜩の歌となっている。詠み人知らずの

ひぐらしは時と鳴けども片恋に たわや女われは時わかず泣く

は、片想いに泣く自らの立場と、時間通りに鳴く蜩の立場とを見事に対比させている。

【蜩の俳句】

蜩や一日一日をなきへらす  正岡子規
かなかなの鈴ふる雨となりにけり  久保田万太郎

【蜩の鳴き声】
北海道から奄美大島の各地に生息し、日の出・日の入り時を中心に、森の中で合唱する。6月下旬から9月頃まで鳴き声を聞くことができる。その鳴き声は「カナカナ」と聞きなす。(YouTube 動画)

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季語|残暑(ざんしょ・のこるあつさ)

初秋の季語 残暑

秋暑(しゅうしょ)秋暑し(あきあつし)

残暑の俳句と季語立秋を過ぎても残る暑さを言い秋の季語となる。立秋は8月7日前後なので、それ以降の暑さは残暑となる。概ね8月いっぱいの暑さを残暑と言う。
東京では、8月1日から8月10日頃に、最高気温・最低気温ともに1年を通じて最も高くなる。よって立秋あたりでは、秋の気配はなかなかに見つけにくい。
また、最高気温も8月いっぱいは30度を超えるため疲労が蓄積し、真夏以上に暑さが堪えるのが残暑の特徴と言える。

【残暑の俳句】

草の戸の残暑といふもきのふけふ  高浜虚子
秋暑しわれを死なしむ夢いくたび  佐藤鬼房

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季語|立秋(りっしゅう)

初秋の季語 立秋

秋立つ(あきたつ)秋来る(あきくる)今朝の秋(けさのあき)

立秋の俳句と季語二十四節気の第13。夏至と秋分の中間で、太陽暦では8月7日頃。暦上は、この日から秋になる。
立秋を期間と捉えた場合の七十二候は、涼風至(すづかぜいたる)・寒蝉鳴(ひぐらしなく)・蒙霧升降(ふかききりまとう)。

古今和歌集に載る藤原敏行の

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

が、立秋の歌として広く知られる。

【立秋の俳句】

そよりともせいで秋たつことかいの  上島鬼貫
立秋や雲の上行く雲とほく  鈴木真砂女

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季語|七夕(たなばた・しちせき)

初秋の季語 七夕

星祭(ほしまつり)星合(ほしあい)

七夕の俳句と季語旧暦七月七日の夜のこと。五節句のひとつで、裁縫の上達を願い素麺が食されたりもする。現代の七夕祭りは、新暦7月7日に行われることが多いが、月遅れの8月7日に行われるところもある。
神事は、7月6日から7月7日に変わる「夜明けの晩」に行われる。民間では、7月6日に願い事を書いた短冊を笹に飾り、7月7日未明に海に流す。

中国には、農作業を司る星「牽牛星」と針仕事を司る星「織女星」に、女性が願掛けをする祭りがあった。それを「乞巧奠」と言い、中国では7月7日に行われていた。それが奈良時代に伝わり、日本の棚機津女(たなばたつめ)と結びついたと言われている。棚機津女の正体は解明されていないが、古事記・日本書紀の「アメノワカヒコ」の項に現われる「オトタナバタ」との関連が考えられる。
オトタナバタは、シタテルヒメが詠んだ歌の中に出てくる神の名で、裏切り者とされたアメノワカヒコと間違われたアジスキタカヒコネと関係する神である。この時に歌われたのはヒナブリ(夷振・夷曲)と言い、古今和歌集仮名序で、紀貫之が和歌の起源と見たものである。

天なるやオトタナバタのうながせる 玉の御統の穴玉はや み谷ふた渡らすアジスキタカヒコネ

天離る夷つ女の い渡らす迫門 石川片淵 片淵に網張り渡し 目ろ寄しに寄し寄り来ね 石川片淵

日本書紀には、男女の掛け合いとも見られるこの二首が載るが、古事記に載るのは前半部分のみである。アジスキタカヒコネは、シタテルヒメの兄神とされ、高鴨神社の御祭神で、農業の神である。大神とされるが、伝承の少ない謎の神である。

▶ 関連季語 天の川(秋)

【七夕の俳句】

七夕の逢はぬ心や雨中天  松尾芭蕉

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季語|天の川(あまのがわ・あまのかわ)

初秋の季語 天の川

銀河(ぎんが)銀漢(ぎんかん)

天の川の俳句と季語七夕伝説における織女星と牽牛星を隔てる河であることから、秋の季語となる。東アジアでは河と見る銀河も、西洋では Milky Way のように乳と見る。ギリシャ神話では、女神ヘラの母乳とされている。
季節により、天の川の見え方には違いがあり、北半球では、冬場よりも夏場の銀河の方がより広く濃く観察される。

万葉集には天河・天漢と表記され、50首を超える歌が七夕伝説に関連付けて掲載されている。

天の川浮津の波音騒くなり 我が待つ君し舟出すらしも

これは、 巻八に載る山上憶良の歌である。

▶ 関連季語 七夕(秋)

【天の川の俳句】

別るるや夢一筋の天の川  夏目漱石
荒海や佐渡に横とう天の川  松尾芭蕉

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季語|萩(はぎ)

初秋の季語 

鹿鳴草(しかなぐさ・しかなきぐさ)・白萩(しらはぎ)

萩の俳句と季語マメ科ハギ属。秋の七草のひとつで、7月から10月に紫や白などの花をつける。痩せた土地でも良く育つため、緑化資材としても用いられる。中秋の名月に、ススキ・月見団子と共に供える。
花札の7月札は、「萩に猪」。徒然草の第十四段に、「恐ろしき猪のししも、臥猪の床といへば、やさしくなりぬ」とあるように、邪気を払う植物として知られた「萩」は「臥猪の床」と呼ばれ、猛々しさを和らげるものと考えられた。

万葉集に萩を詠んだ歌は142首が知られており、花を詠んだ歌では最多となっている。中でも大伴旅人は

わが岡にさ男鹿来鳴く初萩の 花嬬問ひに来鳴くさ男鹿

と歌い、萩の花を鹿の妻に見立てている。
毎年古株から生えてくることから「生え木」が、萩の語源になっていると考えられている。漢字の「萩」は、「秋」に草冠をつけた国字。中国での「萩」は、ヨモギの類を指す。

上島鬼貫の「独ごと」(1718年)には「萩はむかしより風にしたしみてそよぐの名あり」とある。

【萩の俳句】

一家に遊女もねたり萩と月  松尾芭蕉
行行てたふれ伏とも萩の原  河合曾良

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|蕎麦の花(そばのはな)

初秋の季語 蕎麦の花

花蕎麦(はなそば)

季語中国南部原産のタデ科ソバ属の一年草で、イネ科以外の穀類である。乾燥した冷涼な土地でも栽培が容易で、3カ月ほどで収穫できることから、救荒作物ともなる。播種の時期にもよるが、初秋に小さな白い花をつける。ただし、悪臭を放つ。
日本では、弥生時代以前から焼き畑農法で栽培されていたと考えられているが、万葉集にその名は見られない。また、古事記の須佐の男の命の条の穀物の起源神話においても、稲種、粟、小豆、麦、大豆は表れるものの、蕎麦の記述はない。ただし、これらの時代から栽培は奨励されていたことは伺われ、文化的位置付けが難しい穀物である。「ソバムギ」「クロムギ」と呼ばれていたことから、「麦」と同化したものとも考えられる。
「ソバ」とは、古語で尖ったものを表す。蕎麦の実が尖っていることから、蕎麦自体をも表す言葉となった。

【蕎麦の花の俳句】

蕎麦はまだ花でもてなす山路かな  松尾芭蕉

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