季語|月見草(つきみそう)

晩夏の季語 月見草

待宵草(まつよいぐさ)

月見草の見分け方花が夕方から咲くアカバナ科マツヨイグサ属の大まかな分類として、白い花を咲かせるものを「月見草」、黄色い花を咲かせるものを「待宵草」、赤い花を咲かせるものを「夕化粧」とする。しかし、白花と黄花はひとくくりにして、「月見草」と呼ぶことが多い。「月夜草」とも呼び、6月から9月頃に花をつける。

分類学上のツキミソウは、アカバナ科マツヨイグサ属の多年草で、花が夕方から咲くために月見草という。花は白色であるが、朝になって萎み始めるとピンク色になる。北米原産で、江戸時代末期に渡来して栽培された。
園芸品種のオオマツヨイグサや、北米原産のマツヨイグサ・メマツヨイグサ・コマツヨイグサは、現代では「待宵草」の名よりも「月見草」の名で親しまれている。こちらも江戸時代末期から明治時代にかけて日本に持ち込まれたもので、野生化した。特にメマツヨイグサやコマツヨイグサは、空き地や道端などに広く定着している。

文学上では太宰治の「富嶽百景」の一節「富士には月見草がよく似合う」が有名であるが、ここにいう「月見草」はオオマツヨイグサではないかと言われている。また、「待てど暮らせど…」で有名な竹久夢二の「宵待草」も、マツヨイグサ属の花を歌ったものだと言われている。
「月見草」は、街頭売春婦の隠語でもあった。因みに「待宵」は秋の季語である。

【月見草の俳句】

唯一人船繋ぐ人や月見草  高浜虚子
魚籠の中しづかになりぬ月見草  今井聖

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

ツキミソウツキミソウ
アカバナ科マツヨイグサ属ツキミソウ。6月から9月頃に花をつける。夕方に白い花を開かせ、翌朝には桃色になって萎む。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。白花夜咲月見草(しろばなよるさきつきみそう)とも呼ぶ。

ヒルザキツキミソウヒルザキツキミソウ
アカバナ科マツヨイグサ属ヒルザキツキミソウ。5月から7月頃に花をつける。花は白または桃色で、夜だけではなく昼も咲いているところから名がついた。大正末期に観賞用として渡来したものが野生化している。

マツヨイグサマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属マツヨイグサ。6月から8月頃に花をつける。夕方に黄色い花を開かせ、翌朝には赤くなって萎む。江戸時代に鑑賞用として渡来し野性化したが、現在では減少している。中央の白い葉脈が目立つのが特徴。

オオマツヨイグサオオマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属オオマツヨイグサ。6月から8月頃、夕方に黄色い花を開く。ヨーロッパで品種改良された園芸品種で、明治時代初期に鑑賞用として渡来し野性化したが、現在ほとんど見られない。直径5cm以上になる花を咲かせるのが特徴。

コマツヨイグサコマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属コマツヨイグサ。4月から11月頃に花をつける。夕方に黄色い花を開かせ、翌朝には赤くなって萎む。明治時代の終りに渡来し、野性化したものが生態系に影響を及ぼしている。花は直径2cmくらい、葉に切れ込みがあるのが特徴。

メマツヨイグサメマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属メマツヨイグサ。6月から9月頃、夕方に黄色い花を開き、萎んでも赤くならない。明治時代に渡来し、日本で一番よくみかけるマツヨイグサ属の花となり、生態系に影響を及ぼしている。花は直径3cmくらい。

ユウゲショウユウゲショウ
アカバナ科マツヨイグサ属ユウゲショウ。5月から9月頃、午後から夜間にかけて薄紅色の花をつける。明治時代に観賞用として渡来したものが野生化している。オシロイバナの通称との混同を避けるため、赤花夕化粧(あかばなゆうげしょう)とも呼ぶ。

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季語|射干(ひおうぎ)

晩夏の季語 射干

射干の季語と俳句アヤメ科アヤメ属。本州から九州の草地に自生する多年草で、扇状に広がった葉が檜扇に似ていることから「ひおうぎ」という。7月から8月に、赤い斑点があるオレンジ色の一日花を咲かせる。
初秋になる種子は、「射干玉」と書いて「ぬばたま」と読み、古事記や万葉集の時代から、「黒」や「夜」にかかる枕詞として登場する。しかし、植物そのものは歌われていない。また、一般に「ぬばたま」は季語として認識されていない。
俳諧歳時記栞草(1851年)に「射干(ひあふぎ・からすあふぎ)」は、夏之部六月に分類されている。

「射干」は漢名で、「やかん」ともいう。また、「射干」を「しゃが」と読ませることもあるが、この場合はアヤメ科の近縁種「シャガ」を指し、「著莪の花」で夏の季語になる。

【射干の俳句】

射干の炎々燃ゆる芝の中  石塚友二

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|白南風(しろはえ・しらはえ・しろばえ)

晩夏の季語 白南風

白栄(しろはえ・しらはえ・しろばえ)

白南風の季語と俳句梅雨時の暗い空に吹く湿った風を「黒南風」というが、それに対して、梅雨が明ける頃、あるいは梅雨明け後に吹く南風を「白南風」という。
黒南風が曇天の風であるのに対し、白南風は好天を予想させる風である。ただし、梅雨の最中に雨が小降りになって、明るくなってきた空から吹いてくる南風を「白南風」と呼ぶこともある。
「白ばえて」と動詞にして使うこともある。

▶ 関連季語 南風(夏)

【白南風の俳句】

白栄やある夜の雲の霽れぎはに  原石鼎

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季語|三伏(さんぷく)

晩夏の季語 三伏

三伏の俳句と季語夏至後の第三庚を初伏、第四庚を中伏、立秋後初めての庚を末伏と呼び、それを総称して「三伏」と言う。七月中旬から八月上旬に当たり、一年で最も暑いころである。
五行思想に基づくもので、金は火に伏せられること(火剋金)から、陽金である庚は、火性を当てられる夏には凶となる。つまり晩夏は、秋の金気が勢いを増しながらも、夏の火気におさえられて伏している状態であり、庚の日にはそれが特に強くなるとする。種蒔き、男女和合など、諸々の行いが慎まれてきた。
酷暑の頃を表す言葉として、手紙などで「三伏の候」「三伏の猛暑」などとして使われてきた。

【三伏の俳句】

三伏の琴きんきんと鳴らしけり  長谷川かな女

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季語|浜木綿(はまゆう・はまもめん)

晩夏の季語 浜木綿

浜万年青(はまおもと)

浜木綿の俳句と季語ヒガンバナ科の常緑多年草で、関東から九州にかけての海岸に、7月から9月にかけて芳香のある白い花を咲かせる。浜芭蕉ともいう。
神道で神事に用いる木綿(ゆう)に似ていることから「浜木綿(はまゆう)」の名がついた。また、葉が万年青に似ることから、「浜万年青」とも呼ぶ。
海岸の砂地に育つが、海流によって種子が運ばれたためである。温暖な地域に育つ植物であり、主に黒潮に乗って分布域を広げてきた。

浜木綿は、古く万葉集にも取り上げられた植物で、柿本人麻呂には

み熊野の浦の浜木綿百重なす 心は思へど直に逢はぬかも

の和歌がある。俳諧歳時記栞草(1851年)には「浜木綿の花」が立項されているが、ここでは秋之部八月に分類されている。因みに、「浜木綿の実」は、秋の季語になる。

【浜木綿の俳句】

雲よりも白き帆船浜木綿咲く  小島花枝

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|土用鰻(どよううなぎ)

晩夏の季語 土用鰻

土用鰻の季語俳句四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間、つまり、季節の終わりを土用という。「土用」とは、陰陽五行説で、土の気がもっとも働く期間のことである。因みに、春土用は戌の日に「い」のつく食べ物、夏土用は丑の日に「う」のつく食べ物、秋土用は辰の日に「た」のつく食べ物、冬土用は未の日に「ひ」のつく食べ物を食べると良いとされている。

「土用鰻」とは、夏の土用の丑の日に鰻を食べる事。また、食べる鰻のこともいう。この日に鰻を食べることで、夏負けしないと言われる。
古くから滋養強壮に良いと認識されていた鰻は、夏になると食味が落ちるために人気がなかった。そこで平賀源内が一計を案じ、丑の日に「う」のつくものを食べると良いという伝承を利用し、「本日土用の丑の日」と大書して、夏場の鰻屋の窮状を救ったという。また、鰻屋「神田川」に頼まれて、丑の日の鰻の狂歌を歌った太田南畝が、宣伝に一役買ったとの話もある。
青山白峰の「明和誌」(1822年)に、「土用に入、丑の日にうなぎを食す、寒暑とも家毎になす。安永天明の頃よりはじまる」とあり、土用鰻は、18世紀中ごろより一般化したと考えられている。

▶ 関連季語 鰻(夏)

【土用鰻の俳句】

遣り過す土用鰻といふものも  石塚友二

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季語|花氷(はなごおり)

晩夏の季語 花氷

花氷の俳句花を入れて氷をつくり、涼しさを演出する。冷房が普及していなかった時代には、涼をとるために、デパートなどによく置かれた。現在では少なくなったが、装飾目的で置かれたものを、飲食店などで目にすることがある。
氷柱(こおりばしら)も花氷と似たようなもので、冷気を得るための柱状の氷のことで、夏の季語となる。ただし、冬の季語にも「氷柱」があり、これは「つらら」と読む。
日野草城の第1句集に「花氷」(1927年)がある。

【花氷の俳句】

くれなゐを籠めてすゞしや花氷  日野草城

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季語|冷房(れいぼう)

晩夏の季語 冷房

冷房の俳句と季語エアコンやクーラーで室内の空気を冷やすことを冷房という。ちなみにクーラーは冷却専用機器、エアコンは暖房も兼ねた機器のことである。キヤリア社を設立するウィリス・キャリアによって、冷房用機器が発明されたのは1906年。
日本における冷房は、江戸時代の1773年に、加賀藩の前田候が諸大名を接待するに当たって、雪や氷を使って客間を冷やしたことにはじまるとされる。1960年ころより、空調設備を入れるビルが増加し、1973年のオイルショックを経て空調技術も向上した。

【冷房の俳句】

冷房にゐて水母めくわが影よ  草間時彦

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季語|夕顔(ゆうがお)

晩夏の季語 夕顔

夕がほ(ゆうがお)

夕顔の俳句と季語「夕顔の実」は秋の季語であり、かんぴょうの原料となる。「夕顔」ではその花を指し、夏の季語となる。ちなみに、秋の季語となる「朝顔」はヒルガオ科サツマイモ属であるが、「夕顔」はウリ科ユウガオ属である。瓢箪は夕顔の変種である。
実の形によって、細長い「ナガユウガオ」と、丸みを帯びた「マルユウガオ」とに大別される。
夏の夕方に白い花を咲かせるところから夕顔といい、翌日の午前中まで咲いている。北アフリカまたはインドが原産地とされ、古くから日本に渡来していたと考えられている。

清少納言は、花はともかくも、鬼灯に似た実を好ましく思わず、枕草子に、

夕顔は花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に、実の有様こそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし。されどなほ夕顔といふ名ばかりはをかし。

とある。このように、かつては卑俗な地位に甘んじていたが、源氏物語で名を上げる。
源氏物語では「夕顔」の巻に、垣根の夕顔に目が留まり出会った女性との話が出てくる。夕顔は、凡河内躬恒の「心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花」を本歌取して和歌を贈り、それに光源氏の返歌がつく。

心あてにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花
寄りてこそそれかとも見めたそかれに ほのぼの見つる花の夕顔

しかし夕顔は、逢引きした某院で魔物に襲われてはかなく死んでしまう。

【夕顔の俳句】

夕貌や妹見ざる間に明けわたる  高桑闌更
夕がほや月の鏡もまたでさく  横井也有

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|茄子(なす・なすび)

晩夏の季語 茄子

なすび初茄子(はつなす・はつなすび)

茄子ナス科ナス属。インド東部が原産とされ、隋の煬帝はこれを崑崙紫瓜(こんろんしか)と言った。「茄子の花」とともに、その実は「茄子」として夏の季語となる。延喜式に栽培法が載ることから、奈良時代にはすでに伝来していたと考えられているが、俳諧が盛んになるまで、和歌にその名は見られない。
5月に植え付けた苗は6月中旬から実をつけはじめ、9月まで収穫できる。秋にとれる茄子は「秋茄子」といい、特に美味とされ、秋の季語となる。

品種は多く、世界で1000種、日本でも180種を超え、加茂茄子・丸茄子・長茄子・白茄子などがある。料理方法も多岐にわたり、加熱調理したり漬物にしたりして食す。
文化的には秋との結びつきが深く、盆の「精霊馬」や七夕の「七夕馬」になるほか、「秋茄子は嫁に食わすな」の慣用句もある。
初夢に「一富士、二鷹、三茄子」と言われるが、「茄子」は「成す」に掛けられることがある。また、平凡な人物から天才は生まれないという「瓜の蔓にナスビはならぬ」という慣用句もある。
関西では「なすび」と言うが、これが元の名である。室町時代の女官が「おなす」と呼んだところから、「なす」に転訛した。語源は、夏の実を表す「なつみ」にあるとされる。
表面につやのないものを「ぼけ茄子」と言い、ぼんやりした人を罵る言葉にもなっている。

【茄子の俳句】

うれしさよ鬼灯ほどに初茄子  岩田涼菟
茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね  杉田久女

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