季語|椎の花(しいのはな)

仲夏の季語 椎の花

花椎(はなしい)

スダジイの花椎は、ブナ科クリ亜科シイ属の常緑広葉樹の総称で、日本にはスダジイとツブラジイが自生している。マテバシイ属のマテバシイの花も「椎の花」として詠んで差し支えないが、通常、「椎」と言った場合「スダジイ」を指す。
花は淡黄色で、6月頃に樹を覆うように咲く。雌雄同株ではあるが、雄花は新枝の下部から垂れ、雌花は新枝の上部に直立する。雄花は栗の花に似た生臭い香りを漂わせる。元は風媒花であったものが、虫媒花へ進化したものだと考えられている。

「しい」の語源は、下に落ちている実を意味する「したひ」が転訛したものとの説がある。

【椎の花の俳句】

椎の花友の境涯もてあそぶ  草間時彦

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季語|えごの花(えごのはな)

仲夏の季語 えごの花

えごの花の季語と俳句ツツジ目エゴノキ科エゴノキ属エゴノキは日本原産で、全国の雑木林に自生していたり、庭木として植えられていたりする。
5月頃に、芳香のある白い花を下向きにたくさんつける。ピンク色の花をつける品種もある。花が散る時には、花びらを散らさずに、ひとつの花のまま回転しながら落花する。
エゴノキの別名には、チシャノキ・ロクロギ・セッケンノキ・ドクノミなどがある。花や果皮にはエゴサポニンという物質が含まれており、かつては石鹸の代わりとして利用することもあった。このことから、エゴの花を「セッケン花」「シャボン花」ともいう。
果実にえぐみがあることから「えご」と呼ばれるようになったとされる。英名は japanese Snowbell(ジャパニーズ スノーベル)である。

【えごの花の俳句】

えごの花ながれ溜ればにほひけり  中村草田男

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季語|棕櫚の花(しゅろのはな)

初夏の季語 棕櫚の花

棕櫚の花の季語と俳句ヤシ目ヤシ科シュロ属の植物の総称が「シュロ」であるが、「棕櫚の花」は、日本各地で見られる「ワジュロ(和棕櫚)」を詠むことが多い。ワジュロは日本原産とも、平安時代に中国から持ち込まれ九州に定着したとも言われ、現在では東北地方でも栽培されている。
中国から持ち込まれたものを「トウジュロ(唐棕櫚)」として区別する場合がある。この場合、葉柄が長く、葉が垂れ下がりやすいものが「ワジュロ」である。
栽培されたものではなく、林内などに野性化したものは、「ノジュロ」「ノラジュロ」と呼ぶ。
雌雄異株で、雌株は5月頃に粟状の黄色い花をつける。

俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部四月に、「椶櫚の花(しゆろのはな・すろのはな)」として掲載され、「かたち、魚腹のはらめるが如し。これを椶魚(そうぎょ)、また椶笋(そうじゅん)といふ」とある。
関連季語に「棕櫚剥ぐ」があり、冬の季語になる。幹を包む「シュロ皮」を剥ぐ作業のことをいうが、このシュロ皮は、縄・タワシ・ホウキなどに加工される。

鐘を撞く「撞木」には、撞いた時の音色の良さから、棕櫚の木が使われることが多い。
棕櫚の花言葉は「勝利」である。古代ギリシャでは、勝者に、オリーブの冠とともに棕櫚の枝が贈られたという。

【棕櫚の花の俳句】

吾も亦愛す吾廬や棕櫚の花  正岡子規

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季語|黐の花(もちのはな)

初夏の季語 黐の花

黐の花の季語と俳句モチノキ科モチノキ属モチノキは常緑広葉樹で、4月から5月頃に黄緑色の小花をつける。日本を含む東アジア原産で、本州から南西諸島に分布する。
モチノキは、完全な雌雄異株で、両方向の性転換を行うことが知られており、咲く花は、年によって雄花だけだったり雌花だけだったりする。
赤い果実は「黐の実」で秋の季語になる。この実が美しいため、多くの園芸品種が開発されている。

「黐」の名は、樹皮から鳥黐(とりもち)を作るところから来ている。

【黐の花の俳句】

まぶしかる海に垣して黐の花  森澄雄

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季語|雛芥子(ひなげし)

三夏の季語 雛芥子

雛罌粟(ひなげし)虞美人草(ぐびじんそう)ポピー(ぽぴー)

雛芥子の季語と俳句 ケシ科ケシ属ヒナゲシ。4月から7月頃に花が咲く。ヨーロッパ原産で、フランスやポーランドでは国花ともなっている。
初夏の季語になる「芥子の花」で知られる「芥子」は麻薬の原料となるため栽培が禁止されているが、「雛芥子」は栽培が許されている。芥子に比べると華奢で、花が小さいことから「雛芥子」と名付けられた。
また、「四面楚歌」が生まれた故事において、項羽の愛人であった虞は自害したが、その血が「虞美人草」になったという伝説があり、「虞美人草」とも呼ぶ。
フランス語では「コクリコ」と言う。英語では、麻薬となる芥子は「オピウムポピー」と言うが、雛芥子は「シャーレイポピー」と言う。単に「ポピー」と呼ぶ場合、大概は「雛芥子」を指す。
俳諧歳時記栞草(1851年)には、「虞美人草」として秋之部八月に分類されている。ここにおける「虞美人草」は、「紅蕉」を指すものか「雛芥子」を指すものか定かではない。「是は四五月花をひらく者也」と説明されている箇所があり、これを見れば夏(旧暦4月5月)に咲く「雛芥子」であるが、何故か秋に分類されている。

よく栽培されているのはアイスランドポピーで、黄・橙・白の花をつける。1759年に北極探検隊によってシベリアで発見された種で、シベリアヒナゲシとも呼ぶ。
近年では4月から5月頃になると、道端などに橙色の花を咲かせる「長実雛罌粟(ながみひなげし)」をよく見かけるようになった。1961年に東京都で初めて確認されてから、全国に爆発的に広がっていき、生態系への影響が懸念されている。

夏目漱石の小説に「虞美人草」(1907年)がある。

【雛芥子の俳句】

陽に倦みて雛罌粟いよよくれなゐに  木下夕爾

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季語|柿の花(かきのはな)

初夏の季語 柿の花

柿の花の季語と俳句キク類ツツジ目カキノキ科カキノキ属カキノキ。中国揚子江沿岸原産で、日本では野生種であるヤマガキから果樹として改良されたと考えられている。果実は「」と呼び、秋の季語になる。
柿には雄花と雌花があり、雄花は群がって咲き、雌花は単体で咲く。雌雄同株のものと、雄花をつけない品種があり、多くの品種は受粉しなくても結実する。5月から6月頃に、目立たない白黄色の花をつける。

刺し子のポピュラーな図案に「柿の花」があり、「五穀豊穣」の意味を持つ目出度い図柄となっている。

▶ 関連季語 柿(秋)

【柿の花の俳句】

二三町柿の花散る小道かな  正岡子規

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季語|花柘榴(はなざくろ)

初夏の季語 花柘榴

石榴の花(ざくろのはな)

花柘榴の俳句と季語ミソハギ科ザクロ属に分類される植物の花。5月下旬から6月にかけて、オレンジ色の花をつける。秋に結実する硬い実が柘榴の象徴になっているが、6月に花をつける「ハナザクロ」という八重咲きの園芸品種は結実しない。「ザクロ」「ハナザクロ」ともに、その花は「花柘榴」で、夏の季語となる。
果実を指す「柘榴」は、仲秋の季語となる。

三好達治の随筆に「柘榴の花」があり、「強烈な生命的な感銘を覚える」とし、複雑な感情の中にも、「私の好きな花」であると告白している。

【花柘榴の俳句】

ふるさとの路ならなくに花ざくろ  三好達治

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季語|茄子の花(なすのはな)

三夏の季語 茄子の花

茄子の花の季語と俳句「茄子の花」は夏の季語であるが、茄子の実も、「茄子」として夏の季語になっている。
4月から5月頃に植え付けた茄子は、6月から10月頃に花をつける。花をつけて約1か月で、茄子の実を収穫できる。
茄子の花は咲いたらほとんど結実することから、「親の意見と茄子の花は千に一つも無駄は無い」という慣用句が生まれ、「親の意見と茄子の花」という諺になった。

【茄子の花の俳句】

山の墓地まだ余地ありて茄子の花  松崎鉄之介

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季語|泰山木の花(たいさんぼくのはな)

初夏の季語 泰山木の花

泰山木の花の季語と俳句モクレン科モクレン属タイサンボク。樹高20メートルに達する常緑高木で、6月から7月頃に、芳香を持つ大きな盃形の白い花をつける。花は3日ほど咲き、褐変していく。
北米南東部原産で、ミシシッピ州にはタイサンボクが多いため、タイサンボクの州と呼ばれることがある。日本へは明治時代に渡来し、公園や庭で栽培され、多くの園芸品種も生まれている。

泰山木には強いアレロパシーがあり、他の植物の生育を阻害するため、泰山木の近くにはあまり植物が育たない。
マグノリアと呼ぶモクレンの香水は、泰山木が原料になっている。

語源は、花を大きな盃にみたてた「大盞(たいさん)」にあり、「泰山木」の字が当てられた。

【泰山木の花の俳句】

泰山木樹頭の花を日に捧ぐ  福田蓼汀

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季語|著莪の花(しゃがのはな)

仲夏の季語 著莪の花

胡蝶花(こちょうか・しゃが)・射干(しゃが)・花著莪(はなしゃが)

著莪の花の季語と俳句アヤメ科アヤメ属シャガ。林縁部などの湿った場所に群生することが多く、4月から5月頃に花をつける。中国原産で、日本へは室町時代以前に渡来してきたと考えられている。種子をつくらないため、野生化しているものも、もとは人為的に持ち込まれたものが地下茎で広がったものである。

中国語では「蝴蝶花」と書き、日本では「胡蝶花」と書いて「しゃが」と読ませるが、春の季語となる「三色菫」も「胡蝶花」と書くことがあるので注意が必要である。
また、「射干」とも書くが、本来これはひおうぎのこと。「射干」の語感から「著莪」を指すようになったとも言われている。
ちなみに、俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部四月に「胡蝶花」があり、「しゃが」と読ませ、「烏扇、是今云、胡蝶花なり」とある。「烏扇」は「ひおうぎ」の古名ではあるが、「著莪」を指すこともあったと思われる。

【著莪の花の俳句】

かたまつて雨が降るなり著莪の花  清崎敏郎

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