俳句

季語|泰山木の花(たいさんぼくのはな)

初夏の季語 泰山木の花

泰山木の花の季語と俳句モクレン科モクレン属タイサンボク。樹高20メートルに達する常緑高木で、6月から7月頃に、芳香を持つ大きな盃形の白い花をつける。花は3日ほど咲き、褐変していく。
北米南東部原産で、ミシシッピ州にはタイサンボクが多いため、タイサンボクの州と呼ばれることがある。日本へは明治時代に渡来し、公園や庭で栽培され、多くの園芸品種も生まれている。

泰山木には強いアレロパシーがあり、他の植物の生育を阻害するため、泰山木の近くにはあまり植物が育たない。
マグノリアと呼ぶモクレンの香水は、泰山木が原料になっている。

語源は、花を大きな盃にみたてた「大盞(たいさん)」にあり、「泰山木」の字が当てられた。

【泰山木の花の俳句】

泰山木樹頭の花を日に捧ぐ  福田蓼汀

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季語|著莪の花(しゃがのはな)

仲夏の季語 著莪の花

胡蝶花(こちょうか・しゃが)・射干(しゃが)・花著莪(はなしゃが)

著莪の花の季語と俳句アヤメ科アヤメ属シャガ。林縁部などの湿った場所に群生することが多く、4月から5月頃に花をつける。中国原産で、日本へは室町時代以前に渡来してきたと考えられている。種子をつくらないため、野生化しているものも、もとは人為的に持ち込まれたものが地下茎で広がったものである。

中国語では「蝴蝶花」と書き、日本では「胡蝶花」と書いて「しゃが」と読ませるが、春の季語となる「三色菫」も「胡蝶花」と書くことがあるので注意が必要である。
また、「射干」とも書くが、本来これはひおうぎのこと。「射干」の語感から「著莪」を指すようになったとも言われている。
ちなみに、俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部四月に「胡蝶花」があり、「しゃが」と読ませ、「烏扇、是今云、胡蝶花なり」とある。「烏扇」は「ひおうぎ」の古名ではあるが、「著莪」を指すこともあったと思われる。

【著莪の花の俳句】

かたまつて雨が降るなり著莪の花  清崎敏郎

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季語|栴檀の花(せんだんのはな)

仲夏の季語 栴檀の花

樗の花(おうちのはな)花樗(はなおうち)・楝の花(おうちのはな)

栴檀の花の季語と俳句センダン科センダン属センダン。ヒマラヤ山麓原産の落葉高木で、伊豆以西に自生する。5月から6月にかけて、芳香のある淡紫色の小さな花を多数つける。

万葉集には「おうち」の古名で4首歌われている。山上憶良には次の和歌がある。

妹が見し楝の花は散りぬべし 我が泣く涙いまだ干なくに

また、枕草子37段には、下記のようにある。

木のさまにくげなれど、楝の花いとをかし。かれがれにさまことに咲きて、かならず五月五日にあふもをかし。

かつては端午の節句に花を錦の袋に入れて薬玉とし、無病息災を祈った。
「平家物語」に平宗盛・清宗親子が三条河原で生首をかけられた場面があり、罪人の首を架ける木として忌み嫌われたともいう。

材木としては反りやすいために使い勝手が悪く、木偏に悪と書いて「あての木」とも呼んだ。
大成する人物をいう諺「栴檀は双葉より芳し」の「栴檀」は、香木の「白檀」を指す。本来の「センダン」はこちらであり、サンスクリット語の「candana」が語源となっている。
季語となる「栴檀の花」の「センダン」は、樹皮を染色に使うと一気に千段染めることができるからという語源説や、実がたくさんつくことから「千珠(せんだま)」の意味を持つという説などがある。

【栴檀の花の俳句】

千年の樗の花に棲み古りぬ  三橋鷹女
栴檀の花のさかりの睡き昼  日野草城

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季語|忍冬の花(すいかずらのはな・にんどうのはな)

初夏の季語 忍冬の花

忍冬(すいかずら・にんどう)・金銀花(きんぎんか)

忍冬の花の季語と俳句スイカズラ科スイカズラ属の常緑つる性木本スイカズラ。5月から6月頃に花をつけ、夕方に甘い香りを漂わせる。繁殖力が旺盛で、全国の林縁や道端などに生え、庭に植えることもある。英名は、ジャパニーズハニーサックル(Japanese honeysuckle)という。
花をくわえて蜜を吸っていたことから「すいかずら」の名がつき、「吸葛」の字が当てられる。「忍冬」の字は、冬になっても葉を散らさないことから当てられた。花の色ははじめピンクであるものの、次第に白から黄色に変わることから、「金銀花」とも呼ぶ。
俳諧歳時記栞草(1851年)には、夏之部五月に分類され、「忍冬花」と書いて「にんどうのはな」「すひかづら」と読ませている。
かつては、砂糖の代わりとして用いられたこともある。

蔓で絡みつくことから、花言葉は「愛の絆」「友愛」となっている。「金銀花」の別名から、金運上昇につながる縁起のよい花とされる。

疲労回復効果などがある漢方薬としても用いられる。徳川家康も飲んだとされる薬味酒「忍冬酒」は、忍冬の花や葉などを焼酎に漬け込んだもので、1997年に浜松市で復活した。また、酒造の神として知られる奈良の大神神社の鎮花祭では、御神酒として、日本酒に花蕾が漬け込まれた「忍冬酒」が奉納されるという。

【忍冬の花の俳句】

忍冬の花のこぼせる言葉かな  後藤比奈夫

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季語|浮人形(うきにんぎょう)

三夏の季語 浮人形

浮いてこい(ういてこい)

浮人形の季語と俳句水に浮かべて遊ぶ玩具の総称。壺の上の人形を下部の笛を吹いて回す玩具(猩々小僧)も「浮人形」と呼ぶが、こちらは季語とはならない。
人形が乗った小舟の端に樟脳をつけて、水上を走らせるようにしたものがあり、これは、水鳥をかたどった中国の玩具が江戸時代に伝わり、夏の遊びとして定着したものであった。
現在では、ブリキ・ゴム・プラスチックなど様々な素材を用い、あひるや金魚・船など様々な形に作られる。行水や入浴時に、子供が浮かべて楽しむ。

「浮いてこい」は、パスカルの原理を応用した、水に浮き沈みする玩具のことで、「浮沈子(ふちんし)」とも呼ぶ。

【浮人形の俳句】

泣くよりは笑ひながらに浮いてこい  後藤比奈夫

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季語|百日紅(さるすべり・ひゃくじつこう)

仲夏の季語 百日紅

猿滑(さるすべり)・紫薇(しび・さるすべり)

百日紅の季語と俳句ミソハギ科サルスベリ属の落葉中高木サルスベリ。その花は、夏の季語となる。
中国南部原産で、日本へは1700年代以前に渡来してきたと考えられている。それ以前は、夏椿が「さるすべり」と呼ばれていた。

樹皮が滑らかで、猿も滑り落ちるほどだということで「さるすべり」と呼び、「猿滑」と書くこともある。また、花期が7月から10月と長く、その間、赤い一日花が次から次に咲くことから「ひゃくじつこう」とも呼ばれ、「百日紅」の字が当てられた。

【百日紅の俳句】

散れば咲き散れば咲きして百日紅  加賀千代女

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季語|芍薬(しゃくやく)

初夏の季語 芍薬

芍薬の季語と俳句別名に「白犬」「花の宰相」「花相」「将離」「えびす草」「えびす薬」「かほよ草」など。
ボタン科の多年草で、牡丹に似た花を咲かせ、牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は「花の宰相」「花相」と呼ばれる。牡丹が樹木であるのに対して、芍薬は草本で、牡丹が咲き終わる5月から6月頃に花をつける。
中国原産で、平安時代に薬用として渡来してきたと考えられている。江戸時代には多くの園芸品種が開発された。

「芍薬」は漢名で、「美しい薬草」のような意味を持つ。根を乾燥した生薬「芍薬」は、鎮痛や止血などの効果がある。また、姿がしなやかで美しいことを指す「婥約(しゃくやく)」から名前がついたとも言われる。美女の形容として、「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」という都々逸もある。
小野小町の伝説「百夜通い」の一説に、芍薬が出てくるものがある。思いを寄せる深草少将へ「百夜通い続けたなら契りを結ぶ」と告げると、深草少将は毎日芍薬を手にしてやってきた。百日目の夜、芍薬を持った少将は橋ごと流されて亡くなってしまった。小野小町は99本の芍薬を移植し、その芍薬一本一本に和歌を捧げて供養した。

実植えして九十九本のあなうらに 法実歌のみたへな芍薬

中国では、別れの時に芍薬(花)を贈る習慣がある。

【芍薬の俳句】

芍薬のはなびらおつるもろさかな  久保田万太郎

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季語|片蔭(かたかげ)

晩夏の季語 片蔭

片陰(かたかげ)日蔭(ひかげ)日陰(ひかげ)

片蔭の季語と俳句「片蔭」とは、道の片側に陰が生じることである。「片かげり」ともいう。
「片蔭」「日蔭」を詠む時、俳句では午後の風景となる。太陽が西に廻るとともに暑さが増し、人々は涼しい日陰を求めるようになる。そうすると、人は道の片側に寄って行くようになる。

【片蔭の俳句】

片蔭や滅びし寺の名の町の  野中亮介

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季語|月見草(つきみそう)

晩夏の季語 月見草

待宵草(まつよいぐさ)

月見草の見分け方花が夕方から咲くアカバナ科マツヨイグサ属の大まかな分類として、白い花を咲かせるものを「月見草」、黄色い花を咲かせるものを「待宵草」、赤い花を咲かせるものを「夕化粧」とする。しかし、白花と黄花はひとくくりにして、「月見草」と呼ぶことが多い。「月夜草」とも呼び、6月から9月頃に花をつける。

分類学上のツキミソウは、アカバナ科マツヨイグサ属の多年草で、花が夕方から咲くために月見草という。花は白色であるが、朝になって萎み始めるとピンク色になる。北米原産で、江戸時代末期に渡来して栽培された。
園芸品種のオオマツヨイグサや、北米原産のマツヨイグサ・メマツヨイグサ・コマツヨイグサは、現代では「待宵草」の名よりも「月見草」の名で親しまれている。こちらも江戸時代末期から明治時代にかけて日本に持ち込まれたもので、野生化した。特にメマツヨイグサやコマツヨイグサは、空き地や道端などに広く定着している。

文学上では太宰治の「富嶽百景」の一節「富士には月見草がよく似合う」が有名であるが、ここにいう「月見草」はオオマツヨイグサではないかと言われている。また、「待てど暮らせど…」で有名な竹久夢二の「宵待草」も、マツヨイグサ属の花を歌ったものだと言われている。
「月見草」は、街頭売春婦の隠語でもあった。因みに「待宵」は秋の季語である。

【月見草の俳句】

唯一人船繋ぐ人や月見草  高浜虚子
魚籠の中しづかになりぬ月見草  今井聖

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ツキミソウツキミソウ
アカバナ科マツヨイグサ属ツキミソウ。6月から9月頃に花をつける。夕方に白い花を開かせ、翌朝には桃色になって萎む。メキシコ原産で江戸時代に鑑賞用として渡来した。白花夜咲月見草(しろばなよるさきつきみそう)とも呼ぶ。

ヒルザキツキミソウヒルザキツキミソウ
アカバナ科マツヨイグサ属ヒルザキツキミソウ。5月から7月頃に花をつける。花は白または桃色で、夜だけではなく昼も咲いているところから名がついた。大正末期に観賞用として渡来したものが野生化している。

マツヨイグサマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属マツヨイグサ。6月から8月頃に花をつける。夕方に黄色い花を開かせ、翌朝には赤くなって萎む。江戸時代に鑑賞用として渡来し野性化したが、現在では減少している。中央の白い葉脈が目立つのが特徴。

オオマツヨイグサオオマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属オオマツヨイグサ。6月から8月頃、夕方に黄色い花を開く。ヨーロッパで品種改良された園芸品種で、明治時代初期に鑑賞用として渡来し野性化したが、現在ほとんど見られない。直径5cm以上になる花を咲かせるのが特徴。

コマツヨイグサコマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属コマツヨイグサ。4月から11月頃に花をつける。夕方に黄色い花を開かせ、翌朝には赤くなって萎む。明治時代の終りに渡来し、野性化したものが生態系に影響を及ぼしている。花は直径2cmくらい、葉に切れ込みがあるのが特徴。

メマツヨイグサメマツヨイグサ
アカバナ科マツヨイグサ属メマツヨイグサ。6月から9月頃、夕方に黄色い花を開き、萎んでも赤くならない。明治時代に渡来し、日本で一番よくみかけるマツヨイグサ属の花となり、生態系に影響を及ぼしている。花は直径3cmくらい。

ユウゲショウユウゲショウ
アカバナ科マツヨイグサ属ユウゲショウ。5月から9月頃、午後から夜間にかけて薄紅色の花をつける。明治時代に観賞用として渡来したものが野生化している。オシロイバナの通称との混同を避けるため、赤花夕化粧(あかばなゆうげしょう)とも呼ぶ。

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季語|夏花(げばな)

三夏の季語 夏花

夏花の季語と俳句仏教用語で陰暦4月16日から3ヵ月を「夏(げ)」と呼び、僧は外出せずに一所にこもって修行をする「夏安居(げあんご)」に入る。夏安居の間、仏前に供える花を「夏花(げばな)」という。
起源は、修験道の花供(はなく)にあるとも考えられ、山から花を折ってきて供えることは、山神を祀ることにも通じる。

【夏花の俳句】

或時は谷深く折る夏花かな  高浜虚子

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