俳句

季語|破芭蕉(やればしょう)

晩秋の季語 破芭蕉

破れ芭蕉(やぶればしょう)

破芭蕉の俳句と季語芭蕉の大きな葉も、寒さで枯れ落ちる前、晩秋になると、風雨でぼろぼろになる。

松尾芭蕉 元禄5年8月「移芭蕉詞」に、名月の装いに芭蕉を移したことの記述がある。その破れた姿を「鳳鳥尾を痛ましめ」と表現し、「青扇破れて風を悲しむ」とある。そして、「ただそのかげに遊びて、風雨に破れやすきを愛するのみ」と。

▶ 関連季語 芭蕉(秋)

【破芭蕉の俳句】

芭蕉破れ女出でゆく風の中  伊達幹生

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季語|鰯雲(いわしぐも)

三秋の季語 鰯雲

鱗雲(うろこぐも)鯖雲(さばぐも)

鰯雲の俳句と季語5kmから15kmの高い空にできる上層雲に、巻積雲がある。薄い小さな雲片が多数出現し、鱗のように見えることから、鱗雲との名がつく。また、この雲が出ると鰯の大漁があると言われ、鰯雲とも、鯖の背紋に似ていることから、鯖雲とも呼ばれる。
巻雲の次に現れ、この雲が現れると、天気は下り坂に向かうことが普通である。

【鰯雲の俳句】

鰯雲ひとに告ぐべきことならず  加藤楸邨

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季語|鶏頭(けいとう)

三秋の季語 鶏頭

鶏頭の俳句と季語ヒユ科の一年生植物で、7月から12月頃に、ニワトリのトサカに似た花を咲かせるために「鶏頭」の名がある。原産地は、インドと言われ、日本には奈良時代には渡来しており、韓藍(からあい)と呼ばれていた。万葉集には4首登場し、山部赤人の和歌に

我が屋戸に韓藍蒔き生し枯れぬれど 懲りずてまたも蒔かむとぞ思ふ

とあるように、当時から好んで栽培されていた花である。また、詠み人知らずの和歌に

秋さらばうつしもせむと我が蒔きし 韓藍の花を誰れか摘みけむ

があるが、この歌より、花をうつし染めに用いたことが分かっている。因みに韓藍は、「美しい藍色」の意味をも持つ。
学名は Celosia cristata で、 Celosia はギリシャ語の「燃焼」を語源とする。花と葉は、食用とされることもある。

【鶏頭の俳句】

鶏頭の十四五本もありぬべし  正岡子規

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|葡萄(ぶどう・えび)

仲秋の季語 葡萄

葡萄園(ぶどうえん)

葡萄の俳句と季語ブドウ科のつる性落葉低木は、8月から10月にかけて実をつける。ペルシアやカフカスを原産とするヨーロッパブドウと、北アメリカを原産とし、狐臭いとも表現されるラブルスカ種があり、大航海時代から交雑がはじまった。また、生食用のテーブルグレープと、酒造用のワイングレープに分ける分類もある。
世界的には、バナナ、柑橘類に次いで生産量が多く、日本では、ウンシュウミカン、リンゴ、ナシ、カキに次いで多い。ワインでも知られる山梨県が、国内生産量トップの地位にある。国内で生産される品種は、巨峰・デラウェア・ピオーネ・キャンベルアーリー・ナイアガラ・マスカットベリーA・スチューベン・甲州など。

葡萄栽培の歴史は古く、世界最古の果物とされる。カスピ海南部では、紀元前3000年には栽培が始まっており、ワインの醸造も行われていたと考えられている。
紀元前2世紀頃にはヨーロッパブドウが中国にも伝播し、日本でも平安時代末期には栽培が始まっていたとされる。1186年には、甲斐国勝沼地方の雨宮勘解由によって甲州ブドウが発見され、栽培された。

「ぶどう」の語源は、ギリシア語の「botrus」にある。中国に伝わり「葡萄」となり、それを音読みして「ぶどう」になったとされる。
日本には、古くからの野生種として山葡萄があり、葡萄葛(えびかづら)・海老蔓(えびづる)と呼ばれていた。その葉の裏が海老柄に見えることが語源とされる。
古事記や日本書紀には既に「蒲子(えびかずら)」として山葡萄が出てくる。黄泉の国の項で、伊邪那岐が逃げ帰る際に、黄泉醜女に黒御縵を投げると蒲子が生り、それを食べている間に逃げたとあるから、既に食用にされていた可能性がある。
また、染色の名に葡萄染(えびぞめ)があり、元は山葡萄の実の色の染め色を言ったが、次第に織物の色、襲(かさね)の色目をも表すようになった。

【葡萄の俳句】

枯れなんとせしをぶだうの盛りかな  与謝蕪村

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季語|雁(かり・がん)

晩秋の季語 

かりがね・初雁(はつかり)雁渡る(かりわたる)雁行(がんこう)

雁の俳句と季語カモ目カモ科ガン亜科の水鳥の中でも、カモより大きくハクチョウよりも小さい一群をいう。マガン、カリガネ、コクガン、ハクガン、ヒシクイなどがこれに当たり、首が長く、雌雄同色の特徴を持つ。冬鳥として日本に渡ってくるが、渡りの季節に目立つため、秋の季語となる。
V字になったりなどの編隊飛行で10月頃に北方から渡って来て、沿岸部の湖沼などで生活し、3月頃まで留まる。千葉県の印旛沼などが飛来地として知られていたが、現在では温暖化や開発の影響で、太平洋側では宮城県がマガンの飛来の南限となっている。その宮城県には、国内の8割に当たる10万羽が飛来するという、ラムサール条約にも登録されている伊豆沼・内沼がある。

現在では漢語を元にした「がん」が正式名だが、室町時代以前は「かり」と呼ばれており、現代俳句でも「かり」として詠むのが一般的。なお「かり」の名は、その鳴き声を元にしていると言われる。
古くから狩猟の対象として生活に溶け込んでいた雁は、文学上にも多く登場する。漢書の蘇武伝には、捕らえられた蘇武が、手紙を雁の足に結びつけて放ったという故事があり、そこから「雁の使い」「雁の玉章」という言葉が生まれた。60首あまりの雁の歌が載る万葉集にも、遣新羅使の和歌

天飛ぶや雁を使に得てしかも 奈良の都に言告げ遣らむ

のように「雁の使い」が詠み込まれている。
また「かりがね」という種類の雁が存在するが、もとは「雁が音」で、雁の鳴き声を言い表す言葉だったことが知られており、それが次第に「雁」全般を指す言葉に変化していき、現在では特定種を指す言葉になった。万葉集にも

我が宿に鳴きし雁がね雲の上に 今夜鳴くなり国へかも行く

という詠み人知らずの和歌をはじめ、多数が歌いこまれている。
紛らわしい季語に雁渡しがあるが、これは、雁が渡ってくる9月から10月頃に吹く北風のことである。
雁は遠くから渡ってくるため、「遠つ人」が枕詞となる。万葉集に大伴家持の和歌で、

今朝の朝明秋風寒し遠つ人 雁が来鳴かむ時近みかも

がある。
「雁字」は、雁が飛ぶ様子をいう言葉であり、「雁の使い」にも通じ「手紙」のことも指す。

【雁の俳句】

風の香の身につきそめし雁のころ  岸田稚魚
雲とへだつ友かや雁のいきわかれ  松尾芭蕉

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季語|芭蕉(ばしょう)

初秋の季語 芭蕉

芭蕉の俳句と季語中国あるいは東南アジア原産のバショウ科の多年草で、英名は、シーボルトによりジャパニーズ・バナナと名付けられた。冬に葉を枯らすが、春には再び葉をつけ、稀に大きな黄色い花をつける。それは「芭蕉の花」として夏の季語となる。秋に実となるが、バナナに似た形状の、その実を食すことはない。
主に観賞用に植えられるが、琉球諸島では、葉鞘の繊維で芭蕉布が作られる。

渡来した時期は定かではないが、既に平安時代にはあったと見えて、紀乳母による「笹」「松」「枇杷」「芭蕉葉」を組み合わせた和歌が、古今和歌集に載る。

いささめに時まつまにぞ日は経ぬる 心ばせをば人に見えつつ

「芭蕉」はもともと漢名で、それを音読みしたものが「ばしょう」。和名類聚抄では、「苑(えん)」「甘蕉(かんしょう)」とも呼ばれていたとある。
葉が風で破れやすいために、「庭忌草(にわきぐさ)」とも呼ばれた。

江戸時代の俳諧師・松尾芭蕉は、天和2年(1682年)に「芭蕉」と号した。延宝8年(1680年)に江戸深川に居を移した時に、そこにあった芭蕉が立派なことから、弟子がその庵を「芭蕉庵」と呼んだことに因る。

▶ 関連季語 破芭蕉(秋)

【芭蕉の俳句】

この寺は庭一盃の芭蕉かな  松尾芭蕉

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季語|金木犀(きんもくせい)

仲秋の季語 金木犀

木犀(もくせい)・銀木犀(ぎんもくせい)

金木犀の俳句と季語モクセイ科モクセイ属の常緑小高木に、金木犀・銀木犀・薄黄木犀などがある。中国原産。単に「木犀」と言った場合には「銀木犀」を指す。
9月から10月頃に、金木犀はオレンジ、銀木犀は白、薄黄木犀は淡いオレンジ色の花を咲かせて、特に金木犀はよく薫る。雌雄異株で、日本で雌株を見ることは、まず無い。
「木犀」の名は「下学集」に見られることから、室町時代には渡来していたと考えられる。金木犀は、江戸時代に雄株が渡来し、挿し木で増やされていった。

サイの足に似た樹皮を持つために「木犀」と言う。中国では「木犀」のことを「桂花」とも言い、日本でも「桂の花」と呼ぶことがある。
1970年代から1990年頃まで、金木犀の香りが芳香剤としてしばしば使用されていたため、トイレを連想する者がある。中国では、金木犀の花を茶に入れて、桂花茶にする。

【金木犀の俳句】

木犀のこぼれ花より湧ける香も  皆吉爽雨

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|燕帰る(つばめかえる)

仲秋の季語 燕帰る

帰燕(きえん)燕去る(つばめさる)去ぬ燕(いぬつばめ)秋燕(しゅうえん・あきつばめ)

燕帰る春に渡ってきた燕は、子作りをした後、9月から10月頃、集団を作って南へ帰っていく。七十二候にも玄鳥去があり、9月の中旬から下旬に当たる。
中には、日本国内で越冬する燕もおり、「越冬ツバメ」などと呼ばれる。

▶ 関連季語 燕(春)

【燕帰るの俳句】

ある朝の帰燕高きを淋しめり  鈴木真砂女
篁に一水まぎる秋燕  角川源義

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季語|梨(なし)

三秋の季語 

梨の俳句と季語バラ科ナシ属。梨の花は春の季語、梨の実は秋の季語。8月から11月頃に実をつける。普通に梨と呼ばれるのは和梨(日本なし)のことで、他に中国梨・洋梨(西洋梨)がある。
和梨の原産地は中国であり、弥生時代に大陸から導入されたものと考えられている。

日本では発掘遺物より、弥生時代に既に食用にされていたと考えられている。日本書紀では、持統天皇7年(693年)に、五穀を補うために桑・紵・梨・栗・蕪菁などの草木を植えることが奨励されている。
栽培技術が発達したのは江戸時代で、明治時代になると、千葉県松戸市において二十世紀、神奈川県川崎市で長十郎が発見されるに至った。さらに戦後には、幸水や豊水も生まれている。
なお、果皮の色から、幸水や豊水などの赤梨系と、二十世紀などの青梨系に分けられる。幸水は、最もはやく市場に現われ、7月に店頭に並ぶこともある。

梨の語源は、中心部ほど酸味が強い「中酸(なす)」であるとも言われるが、古くは「つまなし」と呼ばれてきたことから、その丸さを表現した「端(つま)無し」に見るのが妥当だろう。
「なし」は「無し」に通じるため、これを忌み「ありのみ」と呼ぶことがある。また、鬼門の方角に梨を植え、「鬼門無し」と縁起を担ぐこともある。「栄養なし」などと言われることもあり、実際にビタミン類などの含有量は多くないが、夏バテ防止や発汗作用を持つ成分が含まれており、夏に食べるのに適した果物だと言える(秋の季語だということを残念に思う)。
果実を歌ったものではないが、万葉集に「梨」は3首掲載されている。その内2首は「妻梨」の名で出ており、「妻無し」に掛けた歌である。

黄葉のにほひは繁ししかれども 妻梨の木を手折りかざさむ(詠み人知らず)

梨を使った熟語なども比較的多く、歌舞伎界を意味する「梨園」、「梨」を「無し」に掛けた「梨のつぶて」などがある。

【梨の俳句】

この梨の二十世紀の残り食ふ  須原和男

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季語|新涼(しんりょう)

初秋の季語 新涼

秋涼し(あきすずし)涼新た(りょうあらた)

新涼の俳句と季語凉しは夏の季語であるが、新涼は秋の季語となる。初秋のころの涼しさをいう。この頃、ひと雨ごとに涼しさを増す。
「新涼灯火」という言葉があるが、この頃、明かりの下で読書をするのに丁度よい。

【新涼の俳句】

秋涼し手毎にむけや瓜茄子  松尾芭蕉
新涼や起きてすぐ書く文一つ  星野立子
新涼や白きてのひらあしのうら  川端茅舍

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