仲夏の季語 紅粉の花
紅藍花(べにばな)・紅花(べにばな)・紅の花(べにのはな)・末摘花(すえつむはな)
エジプト原産、キク科ベニバナ属の一年草。末摘花(すえつむはな)とも呼ぶ、夏の季語となる花。日本には3世紀に呉から渡来してきたと考えられており、「呉藍(くれのあい)」「久礼奈為(くれない)」などと呼んだ。
染めた衣類は色落ちしやすいことから、紅花は「うつろう」「はかない」に結びつく。大伴家持が、その移ろい易さを橡と比較した和歌が、万葉集に載る。
紅はうつろふものぞ橡の なれにし来ぬになほしかめやも
紅花からとれる紅は、「紅一匁金一匁」と言われるほどに高価で、江戸時代の産地だった最上川流域を潤した。今では中国産に押され生産量は減ったものの、紅花は山形県の県花に指定されている。山形県では、紅花が咲く7月上旬に、「べにばな祭」が開催される。
紅花は、染料以外にも用途が広い。乾燥させた花は紅花(こうか)と呼ぶ、血行促進作用がある生薬にする。小町紅と呼ぶ口紅も製造された。紅花の種子を搾れば、紅花油にもなる。
【紅粉の花の俳句】
まゆはきを俤にして紅粉の花 松尾芭蕉

体臭を消すことが本来の使用目的であり、体臭が最もきつくなる夏場は、活躍の場が広がるために、夏の季語となる。
江戸時代に初物が縁起物として珍重されたことから、現在に至るまで鰹と言えば初夏の風物詩となっている。しかし、フィリピン沖から北上を始める鰹は、3月には鹿児島を通過し、8月頃に三陸沖にまで達して南下する、日本では春から秋にかけて親しまれる魚である。
シソ目キリ科キリ属の落葉高木。中国原産。青桐とは異なるため、白桐とも表記する。5月から6月が花の見ごろであるため、夏の季語となる。
鞘翅目テントウムシ科の小型甲虫。葉の先端から飛び立つ様を、太陽に向かって飛んで行くと解し、「天道虫」と表記する。
アジサイ科ウツギ属の落葉低木にウツギがあり、5月から6月頃に白い花をつける。ウツギは「空木」と書き、茎が中空になっているところからこの名前がついた。
1656年の伊勢暦に記され、1685年からはじまる貞享暦に正式に採用された、日本独自の雑節のひとつ。
その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶のことで、
蚕に似たさやを空に向かってつけるために、ソラマメの名がついた。空豆とも書き、野良豆・天豆・夏豆・四月豆などともいう。西南アジア原産で、イスラエルの新石器時代の遺跡からも出土。インド僧・菩提仙那が行基に贈ったとされ、日本へは8世紀ごろ渡来したと考えられている。
イネ科タケ亜科タケ類の若芽・筍は夏の季語。これを食す習慣は、主に中華圏のものである。しかし、日本でも古くから食されていたことが知られており、古事記にも記載がある。