カテゴリー: 季語
季語|えごの花(えごのはな)
仲夏の季語 えごの花
ツツジ目エゴノキ科エゴノキ属エゴノキは日本原産で、全国の雑木林に自生していたり、庭木として植えられていたりする。
5月頃に、芳香のある白い花を下向きにたくさんつける。ピンク色の花をつける品種もある。花が散る時には、花びらを散らさずに、ひとつの花のまま回転しながら落花する。
エゴノキの別名には、チシャノキ・ロクロギ・セッケンノキ・ドクノミなどがある。花や果皮にはエゴサポニンという物質が含まれており、かつては石鹸の代わりとして利用することもあった。このことから、エゴの花を「セッケン花」「シャボン花」ともいう。
果実にえぐみがあることから「えご」と呼ばれるようになったとされる。英名は japanese Snowbell(ジャパニーズ スノーベル)である。
季語|棕櫚の花(しゅろのはな)
初夏の季語 棕櫚の花
ヤシ目ヤシ科シュロ属の植物の総称が「シュロ」であるが、「棕櫚の花」は、日本各地で見られる「ワジュロ(和棕櫚)」を詠むことが多い。ワジュロは日本原産とも、平安時代に中国から持ち込まれ九州に定着したとも言われ、現在では東北地方でも栽培されている。
中国から持ち込まれたものを「トウジュロ(唐棕櫚)」として区別する場合がある。この場合、葉柄が長く、葉が垂れ下がりやすいものが「ワジュロ」である。
栽培されたものではなく、林内などに野性化したものは、「ノジュロ」「ノラジュロ」と呼ぶ。
雌雄異株で、雌株は5月頃に粟状の黄色い花をつける。
俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部四月に、「椶櫚の花(しゆろのはな・すろのはな)」として掲載され、「かたち、魚腹のはらめるが如し。これを椶魚(そうぎょ)、また椶笋(そうじゅん)といふ」とある。
関連季語に「棕櫚剥ぐ」があり、冬の季語になる。幹を包む「シュロ皮」を剥ぐ作業のことをいうが、このシュロ皮は、縄・タワシ・ホウキなどに加工される。
鐘を撞く「撞木」には、撞いた時の音色の良さから、棕櫚の木が使われることが多い。
棕櫚の花言葉は「勝利」である。古代ギリシャでは、勝者に、オリーブの冠とともに棕櫚の枝が贈られたという。
【棕櫚の花の俳句】
吾も亦愛す吾廬や棕櫚の花 正岡子規
季語|黐の花(もちのはな)
季語|雛芥子(ひなげし)
三夏の季語 雛芥子
雛罌粟(ひなげし)・虞美人草(ぐびじんそう)・ポピー(ぽぴー)
ケシ科ケシ属ヒナゲシ。4月から7月頃に花が咲く。ヨーロッパ原産で、フランスやポーランドでは国花ともなっている。
初夏の季語になる「芥子の花」で知られる「芥子」は麻薬の原料となるため栽培が禁止されているが、「雛芥子」は栽培が許されている。芥子に比べると華奢で、花が小さいことから「雛芥子」と名付けられた。
また、「四面楚歌」が生まれた故事において、項羽の愛人であった虞は自害したが、その血が「虞美人草」になったという伝説があり、「虞美人草」とも呼ぶ。
フランス語では「コクリコ」と言う。英語では、麻薬となる芥子は「オピウムポピー」と言うが、雛芥子は「シャーレイポピー」と言う。単に「ポピー」と呼ぶ場合、大概は「雛芥子」を指す。
俳諧歳時記栞草(1851年)には、「虞美人草」として秋之部八月に分類されている。ここにおける「虞美人草」は、「紅蕉」を指すものか「雛芥子」を指すものか定かではない。「是は四五月花をひらく者也」と説明されている箇所があり、これを見れば夏(旧暦4月5月)に咲く「雛芥子」であるが、何故か秋に分類されている。
よく栽培されているのはアイスランドポピーで、黄・橙・白の花をつける。1759年に北極探検隊によってシベリアで発見された種で、シベリアヒナゲシとも呼ぶ。
近年では4月から5月頃になると、道端などに橙色の花を咲かせる「長実雛罌粟(ながみひなげし)」をよく見かけるようになった。1961年に東京都で初めて確認されてから、全国に爆発的に広がっていき、生態系への影響が懸念されている。
夏目漱石の小説に「虞美人草」(1907年)がある。
季語|柿の花(かきのはな)
季語|花柘榴(はなざくろ)
季語|茄子の花(なすのはな)
季語|泰山木の花(たいさんぼくのはな)
初夏の季語 泰山木の花
モクレン科モクレン属タイサンボク。樹高20メートルに達する常緑高木で、6月から7月頃に、芳香を持つ大きな盃形の白い花をつける。花は3日ほど咲き、褐変していく。
北米南東部原産で、ミシシッピ州にはタイサンボクが多いため、タイサンボクの州と呼ばれることがある。日本へは明治時代に渡来し、公園や庭で栽培され、多くの園芸品種も生まれている。
泰山木には強いアレロパシーがあり、他の植物の生育を阻害するため、泰山木の近くにはあまり植物が育たない。
マグノリアと呼ぶモクレンの香水は、泰山木が原料になっている。
語源は、花を大きな盃にみたてた「大盞(たいさん)」にあり、「泰山木」の字が当てられた。
季語|著莪の花(しゃがのはな)
仲夏の季語 著莪の花
胡蝶花(こちょうか・しゃが)・射干(しゃが)・花著莪(はなしゃが)
アヤメ科アヤメ属シャガ。林縁部などの湿った場所に群生することが多く、4月から5月頃に花をつける。中国原産で、日本へは室町時代以前に渡来してきたと考えられている。種子をつくらないため、野生化しているものも、もとは人為的に持ち込まれたものが地下茎で広がったものである。
中国語では「蝴蝶花」と書き、日本では「胡蝶花」と書いて「しゃが」と読ませるが、春の季語となる「三色菫」も「胡蝶花」と書くことがあるので注意が必要である。
また、「射干」とも書くが、本来これはひおうぎのこと。「射干」の語感から「著莪」を指すようになったとも言われている。
ちなみに、俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部四月に「胡蝶花」があり、「しゃが」と読ませ、「烏扇、是今云、胡蝶花なり」とある。「烏扇」は「ひおうぎ」の古名ではあるが、「著莪」を指すこともあったと思われる。
【著莪の花の俳句】
かたまつて雨が降るなり著莪の花 清崎敏郎