俳句

季語|乾鮭(からざけ)

三冬の季語 乾鮭

塩鮭(しおざけ)干鮭(ほしざけ)

乾鮭北海道や東北地方で作られる、を用いた保存食を「乾鮭」という。内臓を取り除き塩漬けにした雄鮭を塩抜きし、軒先などで1週間ほど寒風にさらして作る。
塩漬けにした鮭は「塩鮭」と呼び、水揚げしたばかりの鮭を甘塩漬けにしたものが荒巻鮭である。塩を強くしたものは塩引鮭という。

「乾鮭」は、とるに足らない人や老婆を指したり、首を吊ることの隠語としても使用される。橙色がかった桃色のことを「乾鮭色」ともいう。

【乾鮭の俳句】

塩鮭を女抱きゆく田の日暮  皆川盤水

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季語|氷魚(ひうお・ひお)

三冬の季語 氷魚

氷魚の稚魚。タラ科の海水魚にも氷魚と呼ばれるものがいて、こちらも氷魚と呼ばれるが、通常は「氷下魚(こまい)」として冬の季語にする。
鮎は晩秋に河川の下流域で産卵するが、2週間ほどして孵化する。数カ月経過して3センチほどになった半透明の稚魚は河口付近で生活する。ただし、琵琶湖に生息する鮎は海に下らず、ずっと琵琶湖で生活する。増水する冬には瀬田川や宇治川へ入り、捕獲された稚鮎は朝廷に献上された。陰暦九月から十二月晦日まで、宇治と田上の両地から氷魚が奉られたが、これを受け取るために朝廷が派遣した使者のことを「氷魚の使」と呼び、現在でも冬の季語として用いられる。

【氷魚の俳句】

赤彦の歌の諏訪湖の氷魚を得ぬ  青木敏彦

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季語|鰰(はたはた)

三冬の季語 

雷魚(かみなりうお)

鰰「鱩」「燭魚」とも書く。スズキ目ハタハタ科の魚で、約20センチメートル。主に日本海側の深海で生活し、産卵に寄ってくる冬場に漁獲量が多くなる。この頃は、雷がよく鳴るので、雷魚の別名もある。
食材としては、東北地方で特に馴染みが深く、塩焼きや干物など、様々に調理して食されるほか、塩漬けにして発酵させた魚醤「しょっつる」にもなる。旬は、卵を持った冬場とされるが、身は春の方が脂がのって旨い。ちなみに鰰の卵はブリコと呼ぶ。

なお、秋の季語に「はたはた」があるが、こちらは「ばった」のことである。

【鰰の俳句】

鰰に映りてゐたる炎かな  石田勝彦

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季語|鎌鼬(かまいたち)

三冬の季語 鎌鼬

鎌風(かまかぜ)

鎌鼬(国会図書館蔵鳥山石燕「画図百鬼夜行」)つむじ風に乗って現われて人を切りつけるという妖怪。雪国を中心に、全国に伝承があり、鎌のような爪を持ったイタチの姿で描かれることが多い。つむじ風自体を「鎌鼬」と呼ぶこともある。
鎌鼬は、人の皮膚を刃物で切ったように裂くと言われ、その傷は痛みがなく、血も出ないと言われることがある。寒い日に突然皮膚が裂ける現象は、実際に生じるものであるが、現在では、気化熱によって急激に冷やされ皮膚表面の組織が変性して裂けると言われている。

【鎌鼬の俳句】

三人の一人こけたり鎌鼬  池内たけし

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季語|相撲(すもう)

初秋の季語 相撲

相撲取(すもうとり)角力(すもう)草相撲(くさずもう)九月場所(くがつばしょ)秋場所(あきばしょ)

相撲日本の国技ともされる相撲は、「古事記」(712年)にも登場する。その起源は、葦原中国平定の時の建御雷神(鹿島神宮の御祭神)と建御名方神(諏訪大社の御祭神)の力競べだったとされる。「すもう」の言葉は、日本書紀の垂仁天皇七年条に現れる。そこでは、当麻蹴速の力自慢の噂を聞いた天皇が野見宿禰を召し出して、七月七日に「捔力らしむ(すまひとらしむ)」とある。ただし、この時は向かい合って蹴り合ったとあり、現在の相撲のようなものではなかったと見られている。当麻蹴速と野見宿禰が競い合ったとされる奈良県桜井市には、相撲神社が建立されている。この時に勝利した野見宿禰は出雲の人で、出雲大社境内に野見宿禰神社がある。

江戸時代に入ると神事にからめて勧進相撲が興行され、庶民の娯楽として定着するようになった。寛政年間には、谷風や雷電といった力士が現れ大人気となり、1833年からは両国を定場所とするようになった。1925年には日本相撲協会が誕生し、1958年からは15日興行を年6場所行う大相撲が定着した。
もとは豊穣を占う神事だったことから、「相撲」は秋の季語とされるが、日本相撲協会が主催する大相撲の「初場所」「春場所」「夏場所」「秋場所」といった、季節に応じた季語もある。

【相撲の俳句】

みやこにも住みまじりけり相撲取り  向井去来
宿の子をかりのひいきや草相撲  久保より江

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季語|草虱(くさじらみ)

三秋の季語 草虱

藪虱(やぶじらみ)

草虱セリ科ヤブジラミ属ヤブジラミのことで、高さ約50センチ。全国の野原の藪などに生える二年草。
花期は5月から7月頃で、白い花を咲かせる。秋になる果実は鉤状の刺毛を持ち、衣類にくっつく。そのため「虱」の名を含む。秋の季語になっており、主にその果実を詠む。

【草虱の俳句】

けふの日の終る着物に草虱  山口誓子

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季語|雁渡し(かりわたし)

三秋の季語 雁渡し

雁渡し9月から10月頃に吹く北風で、この風に乗ってが渡ってくると言われる。もとは伊豆や伊勢の漁師の方言。

岸田稚魚の昭和26年の句集に「雁渡し」がある。

【雁渡しの俳句】

へつつひの火のたらたらと雁渡し  黛執

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季語|獺祭忌(だっさいき)

仲秋の季語 獺祭忌

子規忌(しきき)糸瓜忌(へちまき)

獺祭忌正岡子規の忌日の明治35年(1902年)9月19日。「獺祭書屋主人(だっさいしょおくしゅじん)」の別号を持つことから「獺祭忌」、絶筆三句と呼ばれる糸瓜を詠んだ俳句から「糸瓜忌」と呼ばれる。近代俳句ばかりでなく、近代文学に大きな足跡をのこした人物である。

ちなみに「獺祭」は「獺の祭(おそのまつり)」とも呼ばれる獲った魚を並べるカワウソの習慣で、中国の七十二候に「獺祭魚」があることから、春の季語とされる。

【獺祭忌の俳句】

感無量まだ生きて居て子規祭る  柳原極堂
老いて尚君を宗とす子規忌かな  高浜虚子

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季語|松茸(まつたけ)

晩秋の季語 松茸

松茸キシメジ科キシメジ属キシメジ亜属マツタケ節のキノコの一種で、秋の赤松林などで子実体(キノコ)が見られる。日本では高級食材として利用され、「香り松茸味しめじ」の慣用句でも知られる。マツタケオールによる独特の芳香を持っている。ただし、海外では不快な臭いだとされることが多い。
松茸が採れる山は「松茸山」と呼ばれ、痩せた乾燥気味の赤松林であることが多い。松茸の傘が開き切ってしまえば、味も香りも落ちるため、地表から少し顔を出したタイミングで採取しなければならない。近年では松枯れなどの影響で国産のものは減少しており、韓国や中国産のものなどが多く出回っている。

古くから日本人に親しまれてきた食材であり、万葉集にある

高松のこの峰も狭に笠立てて 満ち盛りたる秋の香のよさ

も、松茸を歌ったものだとされている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では秋之部八月に分類され、「山城の北山の産、最も佳也」とある。

【松茸の俳句】

松茸や知らぬ木の葉のへばりつく  松尾芭蕉

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季語|朱鷺(とき)

三秋の季語 朱鷺

鴇(とき)・桃花鳥(とうかちょう・つき)

朱鷺ペリカン目トキ科トキ属トキは、学名を Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)といい、日本を代表する鳥であった(ただし国鳥はである)。しかし、明治時代以降の羽毛目的の乱獲や農薬による影響などにより減少し、1981年に佐渡の5羽が保護されて野生絶滅した。1999年には中国産トキの贈呈を受け人工繁殖が始まり、2008年からは野生復帰の試みもなされている。現在までに数百羽が放鳥され、野生で生活している。なお、トキに亜種などはなく、中国産トキも日本産と同一種である。
朱鷺は秋の季語とされるが、秋には大きな集団をつくって行動していたことによる。朱鷺色の語源にもなった鳥であるが、その色が目立つのは春から夏にかててだと言われている。また、その色から桃花鳥とも呼ばれ、日本書紀には陵墓名として使われている。
古くは「つき」と呼ばれており、墓を表す奥津城(おくつき)と関係する鳥だったのかもしれない。古代エジプトではトートと呼ばれ、知恵を司る神だとされる。

【朱鷺の俳句】

狼も朱鷺も絶えたる国に生く  伊藤白潮

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