俳句

季語|葱(ねぎ・き)

三冬の季語 

根深(ねぶか)

葱の俳句と季語中国西部原産で、ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属。塩害に強いため、海岸近くの砂地で栽培されることが多い。同属には、タマネギ、ニンニク、ラツキョウ、ニラ、ワケギなどがある。
東日本では、陽に当てないように盛土して育てた、白くて太い根深ネギ(白ネギ)を好む。有名なものに、深谷葱・下仁田葱・千住葱がある。西日本では、陽に当てて育てた、青くて細い葉ネギ(青ネギ)を好む。有名なものに九条葱がある。
葱は一文字とも呼ばれ、真っすぐに伸びることが特徴であるが、東北地方では、地下水位の不利を補うために、成長した時点で植え直しをして、あえて曲げた「曲がりねぎ」を出荷するところもある。因みに、ニラのことは二文字と呼ぶ。
料理としては、生食されたり、熱を通して食べたりする。特に鍋物には欠かせない食材であり、「鴨が葱を背負って来る」という言葉まで生まれた。これは、鴨と葱があればすぐに鴨鍋ができることから、好都合であることを半ば茶化していう。

古くは「き」と呼ばれていたが、中世以降「ねぎ」になったとされる。これは、根を食用にするためである。臭いが強いことから、「葱」は「気」に通じるとされる。ゆえに、葱坊主を模した擬宝珠は「葱台」とも言われ、魔除けの意味を持つ。
日本書紀の仁賢天皇六年には、「秋葱(あきき)」が出てくることから、古墳時代には既に栽培されていたものと考えられる。

【葱の俳句】

島原や根深の香もあり夜の雨  池西言水
夢の世に葱を作りて寂しさよ  永田耕衣

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季語|小春(こはる・しょうしゅん)

初冬の季語 小春

小春日(こはるび)小六月(ころくがつ)

小春の俳句と季語初冬に、春を思わせる穏やかな晴天が広がることがあり、小春日和とも言う。小春の穏やかな晴天を「小春空」、凪いだ海のことを「小春凪」と言う。
「小春」は、漢籍で陰暦10月の異称でもある。北米では、「インディアン・サマー」と呼ぶ。

季語とは関係ないが、近松門左衛門「心中天網島」の曽根崎新地紀伊国屋の遊女に、「小春」がいる。小売紙商紙屋治兵衛との心中事件を扱っている。

【小春の俳句】

ねこの眼に海の色ある小春かな  久保より江
動くもの見えて小春の忘れ潮  三森鉄治

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季語|冬蜂(ふゆばち)

三冬の季語 冬蜂

冬の蜂(ふゆのはち)

季語と俳句冬蜂気温が下がっても、全ての蜂が死んでしまうわけではなく、冬の日向に蜂を見かけることがある。
種類によって越冬方法は異なり、スズメバチやアシナガバチは、秋に生れた女王蜂を残して死に絶える。その女王蜂は、交尾したのち樹皮の間などで冬眠して、春からの生殖活動に備える。初冬に、冬眠場所を探し回っている女王蜂を見かけることが稀にある。
ミツバチは、集団で越冬することが可能で、巣の中で身を寄せ合って蜂球をつくり、巣の内部の温度調整を行っている。暖かい日には、外へ出て活動する。よって、冬の蜂と言った場合、ほとんどの場合がミツバチである。

▶ 関連季語 蜂(春)

【冬蜂の俳句】

冬蜂の死にどころなく歩きけり  村上鬼城
冬蜂の尻てらてらと富士の裾  秋元不死男

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季語|初氷(はつごおり)

初冬の季語 初氷

初氷の俳句と季語その冬、初めて張った氷のこと。東京では12月20日頃となる。因みに終氷は3月10日頃。初雪は1月5日頃、初霜は初氷と同じく12月20日頃である。

【初氷の俳句】

手へしたむ髪の油や初氷  炭太祇

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季語|立冬(りっとう)

初冬の季語 立冬

冬に入る(ふゆにいる)今朝の冬(けさのふゆ)冬来る(ふゆきたる)冬立つ(ふゆたつ)

立冬の俳句と季語二十四節気の第19で、この日から立春の前日までが冬となる。立冬日は、11月7日頃となる。
立冬の期間の七十二候は、山茶始開(つばきはじめてひらく)・地始凍(ちはじめてこおる)・金盞香(きんせんかさく)。
中国では、立冬に餃子を食べて、寒い冬に備えるという。立冬の日の朝を、感慨を込めて「今朝の冬」という。

【立冬の俳句】

立冬や窓に始まる雨の音  岩田由美

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季語|山茶花(さざんか・さんさか)

初冬の季語 山茶花

山茶花の俳句と季語ツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹。晩秋から初冬に、赤や白やピンクの、椿に似た花をつける。中国地方や四国・九州に自生し、日本原産とされる。
山茶花と椿は見分けがつきにくいが、山茶花には、葉の縁がギザギザしているなどの特徴がある。また、椿の花季は12月から4月で、春の季語に分類されるのに対し、山茶花は10月から12月で冬。椿の花は、首から落ちるのに対し、山茶花は、花びらが一枚一枚散っていく。

中国ではツバキを「山茶」とし、それを音読みした「さんさ」に「花(か)」がついて「さんさか」と呼ばれていたものが転訛して、日本では「さざんか」になった。因みに中国では、サザンカは「茶梅」。「サザンカ」の名は、江戸時代以前の文献には現れないが、俳諧歳時記栞草(1851年)には「十月」の項に「山茶花(さざんくわ)」として出てくる。
サザンカの古名は「コカタシ」「ヒメカタシ」と言う。「カタシ」とは椿のことで、古くは小さい椿と認識されていた。

近代に入っては、文芸上でも取り上げられることが多い。特に有名なのは、「さざんか、さざんか、咲いた道…」で知られる童謡「たきび」であろうが、1982年には演歌「さざんかの宿」も大ヒットしている。

【山茶花の俳句】

山茶花に雨待つこころ小柴垣  泉鏡花

▶ 冬の季語になった花 見頃と名所

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季語|破芭蕉(やればしょう)

晩秋の季語 破芭蕉

破れ芭蕉(やぶればしょう)

破芭蕉の俳句と季語芭蕉の大きな葉も、寒さで枯れ落ちる前、晩秋になると、風雨でぼろぼろになる。

松尾芭蕉 元禄5年8月「移芭蕉詞」に、名月の装いに芭蕉を移したことの記述がある。その破れた姿を「鳳鳥尾を痛ましめ」と表現し、「青扇破れて風を悲しむ」とある。そして、「ただそのかげに遊びて、風雨に破れやすきを愛するのみ」と。

▶ 関連季語 芭蕉(秋)

【破芭蕉の俳句】

芭蕉破れ女出でゆく風の中  伊達幹生

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季語|鰯雲(いわしぐも)

三秋の季語 鰯雲

鱗雲(うろこぐも)鯖雲(さばぐも)

鰯雲の俳句と季語5kmから15kmの高い空にできる上層雲に、巻積雲がある。薄い小さな雲片が多数出現し、鱗のように見えることから、鱗雲との名がつく。また、この雲が出ると鰯の大漁があると言われ、鰯雲とも、鯖の背紋に似ていることから、鯖雲とも呼ばれる。
巻雲の次に現れ、この雲が現れると、天気は下り坂に向かうことが普通である。

【鰯雲の俳句】

鰯雲ひとに告ぐべきことならず  加藤楸邨

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季語|鶏頭(けいとう)

三秋の季語 鶏頭

鶏頭の俳句と季語ヒユ科の一年生植物で、7月から12月頃に、ニワトリのトサカに似た花を咲かせるために「鶏頭」の名がある。原産地は、インドと言われ、日本には奈良時代には渡来しており、韓藍(からあい)と呼ばれていた。万葉集には4首登場し、山部赤人の和歌に

我が屋戸に韓藍蒔き生し枯れぬれど 懲りずてまたも蒔かむとぞ思ふ

とあるように、当時から好んで栽培されていた花である。また、詠み人知らずの和歌に

秋さらばうつしもせむと我が蒔きし 韓藍の花を誰れか摘みけむ

があるが、この歌より、花をうつし染めに用いたことが分かっている。因みに韓藍は、「美しい藍色」の意味をも持つ。
学名は Celosia cristata で、 Celosia はギリシャ語の「燃焼」を語源とする。花と葉は、食用とされることもある。

【鶏頭の俳句】

鶏頭の十四五本もありぬべし  正岡子規

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|葡萄(ぶどう・えび)

仲秋の季語 葡萄

葡萄園(ぶどうえん)

葡萄の俳句と季語ブドウ科のつる性落葉低木は、8月から10月にかけて実をつける。ペルシアやカフカスを原産とするヨーロッパブドウと、北アメリカを原産とし、狐臭いとも表現されるラブルスカ種があり、大航海時代から交雑がはじまった。また、生食用のテーブルグレープと、酒造用のワイングレープに分ける分類もある。
世界的には、バナナ、柑橘類に次いで生産量が多く、日本では、ウンシュウミカン、リンゴ、ナシ、カキに次いで多い。ワインでも知られる山梨県が、国内生産量トップの地位にある。国内で生産される品種は、巨峰・デラウェア・ピオーネ・キャンベルアーリー・ナイアガラ・マスカットベリーA・スチューベン・甲州など。

葡萄栽培の歴史は古く、世界最古の果物とされる。カスピ海南部では、紀元前3000年には栽培が始まっており、ワインの醸造も行われていたと考えられている。
紀元前2世紀頃にはヨーロッパブドウが中国にも伝播し、日本でも平安時代末期には栽培が始まっていたとされる。1186年には、甲斐国勝沼地方の雨宮勘解由によって甲州ブドウが発見され、栽培された。

「ぶどう」の語源は、ギリシア語の「botrus」にある。中国に伝わり「葡萄」となり、それを音読みして「ぶどう」になったとされる。
日本には、古くからの野生種として山葡萄があり、葡萄葛(えびかづら)・海老蔓(えびづる)と呼ばれていた。その葉の裏が海老柄に見えることが語源とされる。
古事記や日本書紀には既に「蒲子(えびかずら)」として山葡萄が出てくる。黄泉の国の項で、伊邪那岐が逃げ帰る際に、黄泉醜女に黒御縵を投げると蒲子が生り、それを食べている間に逃げたとあるから、既に食用にされていた可能性がある。
また、染色の名に葡萄染(えびぞめ)があり、元は山葡萄の実の色の染め色を言ったが、次第に織物の色、襲(かさね)の色目をも表すようになった。

【葡萄の俳句】

枯れなんとせしをぶだうの盛りかな  与謝蕪村

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