季語|鳥貝(とりがい)

三春の季語 鳥貝

鳥貝の俳句と季語二枚貝綱マルスダレガイ目ザルガイ科に属し、日本では東北以南の内湾の泥地に生息している。雌雄同体で大きさは10センチほど。産卵期は春と秋、寿命は1年から2年である。
高級食材であり、オハグロと呼ばれる足の部分を主に食す。この足の部分が鳥の嘴に似ているために「鳥貝」となった。

春の季語に分類されるが、旬は4月から7月となる。現在では、冷凍ものが通年出回っている。また養殖も行われており、安定供給が可能となった。特に「丹後とり貝」はブランドとなっている。

【鳥貝の俳句】

鳥貝や風音遠き日暮来る  角川春樹

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季語|陽炎(かげろう・かげろふ・かぎろい・ようえん)

三春の季語 陽炎

かげろふ糸遊(いという・いとゆふ・いとゆう)

陽炎の季語と俳句風が弱く日差しが強い日には、大地からの蒸気で、遠くのものが揺らいで見える。「陽炎」は、春に限られた現象ではないが、春の陽気を酌んで春の季語とする。また、「かぎろひの」は、「春」「あるかなきか」などに掛かる枕詞でもある。
古くは、揺れながら輝くもの全てを「かぎろひ」と表現しており、「輝く火(陽)」の意であった。「陽炎」はそれが限定的になったものである。そのため、カゲロウやトンボのような光を反射する羽を持った昆虫を、「かげろう」と言うこともある。
俳諧歳時記栞草では、「篗纑輪」(1753年千梅)の引用で、「陽炎」と「糸遊」を同じものだとしながらも、「春気、地より昇るを陽炎或はかげろふもゆる」「空にちらつき、又降るをいとゆふ」と言っている。
万葉集には、柿本人麻呂の和歌

東の野に炎の立つ見えて かへり見すれば月傾きぬ

があるが、この炎(かぎろひ)は、東の空が赤くなって明けていく様を言っている。万葉集ではこの他にも

今さらに雪降らめやもかぎろひの 燃ゆる春へとなりにしものを

とも歌われている。

陽炎は、直進する光線が、空気の密度が異なる場所で、密度のより高い方へ傾くために起こる現象である。この揺らぎを「シュリーレン現象」と呼ぶ。同じメカニズムで発生するものに「蜃気楼」があり、こちらも春の季語となっている。

【陽炎の俳句】

入かゝる日も糸ゆふの名残かな  松尾芭蕉
陽炎や昔し戀せし道の草  夏目成美

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季語|桜貝(さくらがい)

三春の季語 桜貝

桜貝二枚貝綱ニッコウガイ科に「サクラガイ」という種がある。よく似た貝に「ベニガイ」「カバザクラ」「モモノハナガイ」などもあり、これら数センチの大きさのピンク色の二枚貝を総称して「桜貝」という。
日本各地の浅瀬の砂泥底に潜り込んで生活しており、貝殻は、風や波に運ばれて海岸に打ち上げられる。その貝殻を拾うと幸せになれると言われており、よく小瓶などに入れて御守にする。

「桜貝」は春特有のものというわけではなく、色を表す「桜」の名に因んで春の季語になっている。また、潮干狩シーズンである春に目にしやすいということもある。「花貝」「紅貝」などとも呼ばれ、古くから親しまれており、藤原定家(建保百首)に

伊勢の海たまよる浪に桜貝 かひあるうらの春の色哉

の和歌もある。
桜貝などの貝殻が砂浜に打ち上げられる名所を「日本三大小貝名所」として、鎌倉の由比ヶ浜・石川県の増穂浦海岸・和歌山県の和歌の浦が挙げられることがある。

【桜貝の俳句】

二三枚重ねてうすし桜貝  松本たかし
おなじ波ふたたびは来ず桜貝  木内怜子

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季語|春の山(はるのやま)

三春の季語 春の山

春山(はるやま・しゅんざん)春嶺(しゅんれい)

春の山の季語草木は芽吹き、小鳥はうたう。春になると、山に生気が満ちて賑やかになる。けれども、靄がかかって、冬場ほど明瞭な影を見せなくなるのも春の山である。
郭熙(北宋の山水画家)の「画品」に「春山淡冶而如笑 夏山蒼翠而欲滴 秋山明淨而如粧 冬山惨淡而如睡」とあり、夏の「山滴る」、秋の「山粧ふ」、冬の「山眠る」とともに、春は「山笑ふ」と表現する。
万葉集に、作者不詳の和歌で

春山の馬酔木の花の悪しからぬ 君にはしゑや寄そるともよし

がある。

【春の山の俳句】

小酒屋の出現したり春の山  小林一茶
赤い鳥青い鳥ゐる春の山  甲斐遊糸

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季語|摘草(つみくさ)

三春の季語 摘草

草摘む(くさつむ)蓬摘む(よもぎつむ)

摘草の季語春の行楽に草摘みがある。対象となるのは、土筆などの食用となるもの、紫雲英蒲公英などの花がある。食用となるものを摘む場合、「菜摘む」ともいう。
万葉集の冒頭に雄略天皇の歌で、

籠もよみ籠持ち 掘串もよみ掘串持ち この丘に菜摘ます子家告らせ 名告らさね そらみつ大和の国はおしなべてわれこそ居れ しきなべてわれこそ座せ われこそは告らめ 家をも名をも

があり、その他にも「菜摘」の歌は数首歌われており、春の行事であったことが伺える。
東洋学者の白川静は、草摘みは魂振りのためにする宗教的なものであったと指摘している。これは、七草粥を食することにもつながる。ただ、七草や若菜摘みは、「新春」が区分される現代では、新春の季語となる。

【摘草の俳句】

指先の傷やきのふの蓬摘み  能村登四郎

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季語|春の暮(はるのくれ)

三春の季語 春の暮

春の夕(はるのゆう・はるのゆうべ)春夕べ(はるゆうべ)

春の暮の俳句と季語古くは春の終わりの意味で用いたが、現在では春の夕方の意味で用いることが多い。混乱を避けるために、春の終わりには「暮の春」という季語もある。ただ、松尾芭蕉の「鐘撞かぬ里は何をか春の暮」は、新古今和歌集の能因法師の和歌

山里の春の夕ぐれ来てみれば 入相の鐘に花ぞ散りけり

を本歌取りしたもの。

【春の暮の俳句】

春の暮家路に遠き人ばかり  与謝蕪村
ふる雨のおのづから春の夕かな  久保田万太郎

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季語|春燈(しゅんとう)

三春の季語 春燈

春の灯(はるのひ)春灯(はるともし)春の燭(はるのしょく)

季語と俳句の春燈日が伸びゆく中に明りを灯せば、明るく艶やかなイメージが広がる。和歌では、玉葉和歌集の藤原定家に

山の端の月まつ空の匂ふより 花にそむくる春のともし火

がある。
また、安住敦と大町糺が久保田万太郎を主宰として創刊した俳句誌に「春燈」があり、創刊の辞には「いくら苦しくなつても、たとへば、夕霧の中にうかぶ春の灯は、われわれにしばしの安息をあたへてくれるだらう」とある。

【春燈の俳句】

春の灯のあるひは暗くやはらかく  久保田万太郎
春燈消すやいよいよ眠れぬ夜  大野朱香

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季語|春風(はるかぜ・しゅんぷう)

三春の季語 春風

春の風(はるのかぜ)

季語の春風と俳句春一番も春風であり、春風は時に恐ろしいものであるが、季語で「春風」を用いる時には、「春風駘蕩」の言葉もあるように、のどかなあたたかさが強調される。また、「風光る」などの季語もあるように、春の風は心を躍らせるものを内包している。
万葉集には「春風」として歌われた和歌が2首あり、大友家持は

春風の音にし出なばありさりて 今ならずとも君がまにまに

と歌った。

【春風の俳句】

春風にこぼれて赤し歯磨粉  正岡子規
春風や闘志抱きて丘に立つ  高浜虚子
ドア開いてゐれば出て見る春の風  稲畑汀子

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季語|日永(ひなが)

三春の季語 日永

永き日(ながきひ)永日(えいじつ)

季語と俳句で日永春の日中は、日脚がのびて長く感じる。因みに、「短夜」は夏、「夜長」は秋、「日短」は冬の季語。
東京では、12月に16時半頃に日の入りしていたものが、3月下旬には18時をまわる。

万葉集には作者不詳の和歌で、

霞立つ春の永日を奥処なく 知らぬ山路を恋ひつつか来む

がある。

▶ 関連季語 遅日(春)

【日永の俳句】

飛べそうな気がする永き日の岬  五島高資

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季語|風車(かざぐるま)

三春の季語 風車

風車売(かざぐるまうり)

季語と俳句で風車俳句での「風車」は、玩具の風車であり、「かざぐるま」として春の季語となる。ただし、キンポウゲ科に「風車」の名を持つ花があり、「風車の花」で夏の季語となる。
その歴史は古く、既に平安時代にはあったと考えられ、中国でも「風車」と書くことから、渡来してきたものと考えられる。江戸時代には、新春の遊び道具の一つとなる。江戸雑司ヶ谷の鬼子母神で参拝みやげとして売られていたものは有名で、「玄英の雑司ヶ谷詣」として喜多川歌麿の浮世絵にもなっている。

【風車の俳句】

あたたかき風がぐるぐる風車  正岡子規
峠くだる子胸にくるくる風車  加藤楸邨
風背負ひ風車売去りにけり  石原八束

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