季語|帰雁(きがん)

仲春の季語 帰雁

帰る雁(かえるかり)行雁(ゆくかり)・雁帰る(かりかえる)・去ぬる雁(いぬるかり)・雁の別れ(かりのわかれ)・雁の名残(かりのなごり)

帰雁「雁」と呼ばれるマガン、カリガネ、コクガン、ハクガン、ヒシクイなどは冬鳥として日本で越冬し、2月頃から北方へ帰っていく。七十二侯の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」は4月中旬となり、越冬地ではほとんど見られなくなるが、渡りの中継地となる北海道ではよく観察されるという。
津軽地方には雁風呂という風習がある。羽根を休めるためにくわえてきたとされる枝が、雁が去ったあとの浜辺に残っていると、その雁は命を落としたものと考え、その枝で風呂を焚き、供養をしたという。

「行雁」は春の季語となるが、「雁行」は秋の季語となる。

▶ 関連季語 雁(秋)

【帰雁の俳句】

帰る雁田毎の月の曇る夜に  与謝蕪村
壁ちかくねまりて聞けり帰る雁  石橋秀野

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季語|朝寝(あさね)

三春の季語 朝寝

朝寝目覚める時間になっても体を起こさず、朝遅くまで寝ていることをいう。特に何時までということはないが、夏の季語で仮眠を指す「昼寝」とは性質が異なる。
唐の詩人である孟浩然の五言絶句「春暁」に『春眠不覚暁 處處聞啼鳥 夜来風雨聲 花落知多少』があり、起句の『春眠暁を覚えず』からきた春の季語。寝坊という感覚よりも、春の穏やかさを言い表すことが多い。

【朝寝の俳句】

雨ふるとのみおもほへる朝寝かな  久保田万太郎

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季語|プラタナスの花(ぷらたなすのはな)

晩春の季語 プラタナスの花

鈴懸の花(すずかけのはな)・釦の木の花(ぼたんのきのはな)

プラタナスの花プラタナスは、スズカケノキ科スズカケノキ属に属する植物の総称で、日本ではスズカケノキ・モミジバスズカケノキ・アメリカスズカケノキが見られる。落葉樹である上(夏は木陰を作り冬は陽を遮らない)、虫がつきにくく排気ガスにも強いことから街路樹としてよく利用され、ニレ・ボダイジュ・マロニエと共に「世界四大並木樹種」の一つに挙げられる。日本へは明治時代前半に持ち込まれ、街路樹としては、明治39年に東京都港区田村町交差点(新橋)に導入された。
プラタナスの語源は、葉の特徴を表したギリシャ語の platys(広い)であるが、鈴懸の木と呼ばれるのは、本種の果実に似た球形の房が付く山伏の法衣「鈴懸」からきている。
雌雄同株で、新葉が出てくる4月から5月頃に花をつける。雄花は薄黄緑、雌花は朱色である。

【プラタナスの花の俳句】

プラタナスの花咲き河岸に書肆ならぶ  加倉井秋を

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季語|寒の雨(かんのあめ)

晩冬の季語 寒の雨

寒九の雨(かんくのあめ)

寒の雨寒の内(寒の入から立春の前日まで:1月5日頃から2月3日頃まで)に降る冷たい雨。寒々とした冬の雨を指す「寒雨(かんう)」とは異なる。
「寒九の雨」とは、寒の入りから9日目(1月13日頃)に降る雨をいい、「寒九の雨は豊作のしるし」と言われた。寒九には、一番水が澄むとの言い伝えがある。

【寒の雨の俳句】

雁さわぐ鳥羽の田づらや寒の雨  松尾芭蕉

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季語|狸(たぬき)

三冬の季語 

狸哺乳綱食肉目イヌ科タヌキ属タヌキ。極東にのみ生息していたが、毛皮目的で旧ソビエト連邦に持ち込まれ、それがヨーロッパなどに広がり、生態系を乱すとして問題になっている。
夜行性で、雑食。主に湿地や森林で生活するが、都市部で見られることもある。複数の個体が糞をする場所を「ため糞(ためふん)」と呼ぶ。個体同士の情報交換を行っていると考えられている。
積雪の多い地方を除き、狸に冬眠の習性はなく、冬場の個体は脂肪を蓄え、毛も長くなるため、丸々としている。冬場の狩猟対象となるために、冬の季語となっている。

狸は驚くと擬死状態になるため、「たぬき寝入り」という慣用句が生まれた。また、悪賢い者同士のたとえに「狐と狸」、当てにならないことを計算に組み込む「とらぬ狸の皮算用」などの言葉も生まれている。
ちなみに「たぬき」の語源は、「たぬき寝入り」を「魂抜き(たまぬき)」と見たことによるものとの説がある。

【狸の俳句】

戸を叩く狸と秋を惜しみけり  与謝蕪村

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季語|熊(くま)

三冬の季語 

北極熊(ほっきょくぐま)・白熊(しろくま)・羆(ひぐま)・赤熊(あかぐま)・月輪熊(つきのわぐま)・黒熊(くろくま)

熊哺乳綱食肉目クマ科に属する動物の総称がクマであるが、これにはジャイアントパンダも含め、8種が属する。その内、日本に生息するのはツキノワグマとヒグマ(エゾヒグマ)であり、ツキノワグマは本州と四国に、ヒグマは北海道に生息する。最大のものは白熊と呼ばれるホッキョクグマで、日本では動物園で観察される。
初冬の季語に「熊穴に入る」があるように、ツキノワグマもヒグマも、秋にドングリなどをたくさん食べて、12月から3月頃にかけて巣穴に籠る。この間に出産も行われる。よって、通常は秋の活動が活発で、冬の間には熊の姿は見られないものであるが、暖冬の影響や餌の減少の影響で、冬眠しない熊も増えている。それらが狂暴化して人に被害を与えるニュースが増えており、それらの熊を近年では「穴持たず」と呼ぶ。

【熊の俳句】

穴に入る熊になりたく思ひをり  高木晴子

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季語|干大根(ほしだいこん)

初冬の季語 干大根

懸大根(かけだいこん)・大根干す(だいこんほす)

干大根大根は冬の季語である。その大根を収穫して、寒風の中に干したものをいう。11月頃から、畑や田圃に干し棚を作って、そこに1週間程度吊るして水分を抜く。そうしたものは栄養分が濃縮され、甘味などの味わいが増す。
1本丸ごと干すこともあるが、干しあがりを早くするために半分に切ったり、千切りにして天日干ししたりもする。千切りにしたものは「切干大根」と呼ぶ。

干しあがった大根は、沢庵漬などの漬物にしたり、水に戻して煮物などにして食す。

【干大根の俳句】

掛大根月あそばせて家眠る  柴田白葉女

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季語|このわた

三冬の季語 このわた

このわた漢字では「海鼠腸」と書くとおり、海鼠の腸などの内臓の塩辛。雲丹や唐墨と並んで日本三大珍味の一つとなっており、酒の肴としてよく登場する。海鼠のことを古くは「こ」と呼んでいたため、「このわた」は海鼠の内臓という意味である。
延喜式(927年)では、能登国の貢納物として挙げられている。伊勢湾や三河湾も産地として知られ、瀬戸内でもつくられる。

【このわたの俳句】

このわたが好きで勝気で病身で  森田愛子

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季語|鮫(さめ)

三冬の季語 

鱶(ふか)

鮫軟骨魚綱板鰓亜綱に属する魚類のうち、鰓裂が体の側面にあるもの。鰓裂が下面にあるものはエイである。世界では553種、日本近海では約130種が確認されている。アオザメ(青鮫)・シュモクザメ(撞木鮫)などの、人喰鮫と呼ばれる獰猛な種類もある。また、大きなものは鱶(ふか)とも呼ばれ、古代には鰐(わに)とも呼ばれていた。
鮫は、一般的な魚とは異なり、交尾を行い、卵生のほか胎生の種類も存在する。生きた化石と呼ばれることもあるなど、古い形態を残した魚類である。

「ジョーズ」などの映画の影響で、海水浴シーズンにクローズアップされることが多い鮫であるが、フカヒレを取るための鮫漁は、大型鮫類の水揚げが多くなる冬場が好まれたために、「鮫」は冬の季語になったものと考えられる。
日本神話の「因幡の白兎」に登場する鰐(わに)は、鮫のことだと考えられている。また、皇孫を生んだ豊玉姫は八尋鮫(やひろわに)の姿をしていたとされる。

【鮫の俳句】

本の山くづれて遠き海に鮫  小澤實

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季語|乾鮭(からざけ)

三冬の季語 乾鮭

塩鮭(しおざけ)干鮭(ほしざけ)

乾鮭北海道や東北地方で作られる、を用いた保存食を「乾鮭」という。内臓を取り除き塩漬けにした雄鮭を塩抜きし、軒先などで1週間ほど寒風にさらして作る。
塩漬けにした鮭は「塩鮭」と呼び、水揚げしたばかりの鮭を甘塩漬けにしたものが荒巻鮭である。塩を強くしたものは塩引鮭という。

「乾鮭」は、とるに足らない人や老婆を指したり、首を吊ることの隠語としても使用される。橙色がかった桃色のことを「乾鮭色」ともいう。

【乾鮭の俳句】

塩鮭を女抱きゆく田の日暮  皆川盤水

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