俳句

季語|木蓮(もくれん)

仲春の季語 木蓮

白木蓮(しろもくれん・はくもくれん)

木蓮の俳句と季語モクレン目モクレン科モクレン属の落葉低木で、紫色の花をつけるため「シモクレン」とも。花がランに似ていることから、木蘭と呼ばれていたとも言われるが、現在では、蓮に似ているとして「木蓮」と呼ぶ。1億年前から既に存在していたことが判明しており、「最古の花木」の異名を持つ。
花が白い「ハクモクレン」や「コブシ」も、モクレン目モクレン科モクレン属。コブシの花期は3月から5月、ハクモクレンの花期は3月から4月、シモクレンの花期は4月から5月。コブシが日本原産なのに対し、シモクレン、ハクモクレンは中国原産。日本では、平安時代の「和名類聚抄」にその名が見えることから、古くから渡来していたと考えられている。

香色と呼ばれる薄紫色は、かつてシモクレンで染められ「木蘭染」となり、法衣に使われていたという。ハクモクレンは、太陽を浴びると蕾の先端が北を向くことから、「コンパスフラワー」と呼ばれる。

花木蘭という名の女性の物語が中国にあり、ディズニー映画「ムーラン」となった。老病の父に代わり、従軍して勝利するというストーリーである。

白い木蓮を「白蓮」というが、白いの花も「白蓮」と呼び、夏の季語になる。

【木蓮の俳句】

木蓮の風のなげきはただ高く  中村草田男

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|彼岸(ひがん)

仲春の季語 彼岸

彼岸会(ひがんえ)彼岸過ぎ(ひがんすぎ)

彼岸の俳句と季語(やまとにしき)雑節の一つで、春分を中日とし、前後各3日を合わせた各7日間を彼岸と言う。秋分を中日とする秋彼岸もあるが、単に「彼岸」ならば、春の彼岸を指す。最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸明け」と言う。
盆には、亡くなった先祖が帰ってくると言われているが、彼岸には帰ってこない。彼岸は、ぼたもちなどで先祖を供養し、悟りの境地「彼岸」へと思いを馳せる日。

真西に太陽が沈む春分・秋分に、遙か西方の極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まり。大同元年(806年)、日本で初めて彼岸会が行われた。なお彼岸の行事は、インドや中国の仏教にはなく、日本独自のものだとされる。

「和漢三才図会」(1712年)には、「龍樹菩薩天正験記」の引用があり、彼岸について述べている。それによると、春と秋の彼岸の7日間には、色界摩醯首羅天尊を中心とする神々が集って、人々の善悪を記すという。

語源は、サンスクリット語の Pāramitā つまり「波羅蜜」にあるとされ、これを意訳した「至彼岸」が元となっている。迷いや煩悩を川にたとえ、その向こうの涅槃を目指すもの。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、彼岸を過ぎると、春の陽気が支配的になる。

▶ 関連季語 春分(春)

【彼岸の俳句】

吹きよどむ風もをさまり彼岸過ぐ  加藤三七子
庭の木に同じ鳥くる彼岸入り  勝又星津女

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季語|春分(しゅんぶん)

仲春の季語 春分

中日(ちゅうにち)

春分の俳句と季語二十四節気の第4。太陽暦では3月20日頃が「春分の日」として祝日になり、彼岸の中日でもある。
昼の長さと夜の長さがほぼ等しい(太陽が点ではなく、大きさを持った球体としてあるため、太陽の直径分が移動するだけ、昼の方が長くなる)。また、ほぼ真東から太陽が昇り、ほぼ真西に日が沈む(春分点にある時間は、春分の日の中の一瞬なので、日の出・日の入りが春分点に当たらない限り、若干のずれが生じる)。
春分期間の七十二候は、雀始巣(すずめはじめてすくう)・桜始開(さくらはじめてひらく)・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)。

【春分の俳句】

春分の日なり雨なり草の上  林翔
たにぐゝの日ねもすなきぬお中日  原石鼎

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季語|万両(まんりょう)

三冬の季語 万両

万両の俳句と季語ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木で、7月頃に白い花を咲かせ、冬に赤い実をつける。もとは南方系の植物で、関東以南の林間に自生するものであるが、江戸時代から栽培も盛んに行われている。白い実をつけるシロミノマンリョウ、黄色い実をつけるキミノマンリョウなども知られている。
名前の目出度さより、正月の縁起物となる。同じく縁起物となる千両も同じように赤い実をつけるが、こちらはセンリョウ科の常緑小低木で、万両よりも実の数が少なく見えることから、千両と呼ばれる。万両は、実が互生の葉の下につくのに対し、千両は実が対生の葉の上につくといった違いがある。
他にも、ヤブコウジ科カラタチバナの別名「百両」、ヤブコウジ科ヤブコウジの別名「十両」、アカネ科アリドオシの別名「一両」があり、いずれも冬場に赤い実をつける。正月には、千両・万両とともに、これらのいずれかを並べ「千両・万両・有り通し」と縁起をかついで、 金運に恵まれることを願う。3

【万両の俳句】

万両にゆすらの花の白き散る  正岡子規
万両は兎の眼もち赤きかな  加賀千代女

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季語|冬の蝶(ふゆのちょう)

三冬の季語 冬の蝶

冬蝶(ふゆちょう)凍蝶(いてちょう)

冬の蝶の俳句と季語アゲハチョウやモンシロチョウなど、大多数の蝶は、蛹となって越冬するが、中には、卵や幼虫、成虫の形態で越冬するものもある。
冬の蝶と言う場合、モンシロチョウやモンキチョウなどの11月頃まで見られる種類と、タテハチョウなどの越冬種に分かれる。越冬種は、できるだけ動かずに寒さをしのぐが、気温が上昇した日だまりに見かけることが稀にある。

▶ 関連季語 蝶(春)

【冬の蝶の俳句】

冬蝶の影をはなしてとびにけり  松本ヤチヨ
凍蝶を過のごと瓶に飼ふ  飯島晴子

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季語|春時雨(はるしぐれ)

三春の季語 春時雨

春の驟雨(はるのしゅうう)

春時雨の俳句と季語「時雨」は冬を告げる雨であるが、春のにわか雨には明るさもある。

▶ 時雨(冬)

【春時雨の俳句】

いくたびも秋篠寺の春時雨  星野立子

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季語|穀雨(こくう)

晩春の季語 穀雨

穀雨の俳句と季語二十四節気のひとつで、太陽の黄経が30度に達した時を言い、太陽暦では4月20日頃。この日から、立夏前日までが「穀雨」と呼ばれる期間。
「百穀潤う」とも言われる、穀物の成長を促す暖かさがあり、種蒔きに最適な雨が降る。春の終わりを告げる雨である。

この期間の七十二候は、葭始生(あしはじめてしょうず)、霜止出苗(しもやんでなえいづる)、牡丹華(ぼたんはなさく)。

【穀雨の俳句】

苗床にうす日さしつつ穀雨かな  西山泊雲

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季語|寒昴(かんすばる)

三冬の季語 寒昴

すばる

寒昴の俳句と季語「すばる」とは、地球から400光年離れた、おうし座にあるプレアデス星団。ギリシア神話のプレアデス七姉妹に擬され、オリオンから逃げ続けていると言われている。
日本でも古くから親しまれており、枕草子にも「星はすばる」と、彦星(アルタイル)・夕づつ(金星)・よばひ星(流星)を差し置いて、一番に挙げられている。現代においては、 谷村新司の歌った「昴」が一番馴染み深いか。

「すばる」とは、「統べる(すべる)」から来た言葉で、太古には玉を連ねたものを「すまる」と言った。古事記には、「御統(みすまる)」というオトタナバタの首飾りが出てくる。
また、古代天皇は「スメラミコト」「スメラギ」と呼ばれており、これも「統べる」からきた言葉である。

【寒昴の俳句】

寒昴身のすきとほるほどひとり  椿文恵

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季語|七夕(たなばた・しちせき)

初秋の季語 七夕

星祭(ほしまつり)星合(ほしあい)

七夕の俳句と季語旧暦七月七日の夜のこと。五節句のひとつで、裁縫の上達を願い素麺が食されたりもする。現代の七夕祭りは、新暦7月7日に行われることが多いが、月遅れの8月7日に行われるところもある。
神事は、7月6日から7月7日に変わる「夜明けの晩」に行われる。民間では、7月6日に願い事を書いた短冊を笹に飾り、7月7日未明に海に流す。

中国には、農作業を司る星「牽牛星」と針仕事を司る星「織女星」に、女性が願掛けをする祭りがあった。それを「乞巧奠」と言い、中国では7月7日に行われていた。それが奈良時代に伝わり、日本の棚機津女(たなばたつめ)と結びついたと言われている。棚機津女の正体は解明されていないが、古事記・日本書紀の「アメノワカヒコ」の項に現われる「オトタナバタ」との関連が考えられる。
オトタナバタは、シタテルヒメが詠んだ歌の中に出てくる神の名で、裏切り者とされたアメノワカヒコと間違われたアジスキタカヒコネと関係する神である。この時に歌われたのはヒナブリ(夷振・夷曲)と言い、古今和歌集仮名序で、紀貫之が和歌の起源と見たものである。

天なるやオトタナバタのうながせる 玉の御統の穴玉はや み谷ふた渡らすアジスキタカヒコネ

天離る夷つ女の い渡らす迫門 石川片淵 片淵に網張り渡し 目ろ寄しに寄し寄り来ね 石川片淵

日本書紀には、男女の掛け合いとも見られるこの二首が載るが、古事記に載るのは前半部分のみである。アジスキタカヒコネは、シタテルヒメの兄神とされ、高鴨神社の御祭神で、農業の神である。大神とされるが、伝承の少ない謎の神である。

▶ 関連季語 天の川(秋)

【七夕の俳句】

七夕の逢はぬ心や雨中天  松尾芭蕉

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季語|天の川(あまのがわ・あまのかわ)

初秋の季語 天の川

銀河(ぎんが)銀漢(ぎんかん)

天の川の俳句と季語七夕伝説における織女星と牽牛星を隔てる河であることから、秋の季語となる。東アジアでは河と見る銀河も、西洋では Milky Way のように乳と見る。ギリシャ神話では、女神ヘラの母乳とされている。
季節により、天の川の見え方には違いがあり、北半球では、冬場よりも夏場の銀河の方がより広く濃く観察される。

万葉集には天河・天漢と表記され、50首を超える歌が七夕伝説に関連付けて掲載されている。

天の川浮津の波音騒くなり 我が待つ君し舟出すらしも

これは、 巻八に載る山上憶良の歌である。

▶ 関連季語 七夕(秋)

【天の川の俳句】

別るるや夢一筋の天の川  夏目漱石
荒海や佐渡に横とう天の川  松尾芭蕉

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