俳句

季語|啄木鳥(きつつき・たくぼくちょう・けら・けらつつき)

三秋の季語 啄木鳥

きつつきけらつつき

コゲラ(啄木鳥)キツツキ目キツツキ科に属する鳥として、アオゲラ・アカゲラ・コゲラ・ヤマゲラ・クマゲラなどが知られる。渡りをせずに森林などに生息し、木を嘴で突いて穴をあける。この木をつつくことをドラミングと言い、「木の中の虫を捕らえて餌にする」「木に穴をあけて巣にする」「コミュニケーションをとる」の、大きく分けて3つの目的がある。
求愛行動として木をつつくのは初夏にピークを迎えるが、秋は木の葉が落ちて、その姿を確認しやすい。よって、秋の季語になっている。

「キツツキ」という名の鳥は存在せず「〇〇ケラ」のような名前がついている。俳諧歳時記栞草に、「昔、玉造に天王寺を建し時、此鳥、群来て寺の軒を啄き損ず。故に寺啄(てらつつき)と名く。守屋が怨霊、鳥となりしといふ」とある。ここにある「てらつつき」が「けらつつき」に転訛し、「ケラ」と呼ぶようになったとの説がある。

【啄木鳥の俳句】

木つつきの死ねとて敲く柱かな  小林一茶

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季語|鹿(しか)

三秋の季語 鹿

雄鹿(おじか)雌声(めじか)鹿の声(しかのこえ)

鹿ウシ目シカ科シカ属ニホンジカ。日本には、エゾシカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲシカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7つの亜種がある。雌雄別々に群れを形成し、9月から11月に交尾を行う。この繁殖期に発する雄の声が哀愁を帯びており、古くから和歌に歌われることが多く、秋の季語となった。
古くは、皮を意味する「か」と呼ばれていた。それに肉を表す「し」がついて、「しか」と呼ばれるようになったと言われている。また、雄を指す「兄(せ)」に「鹿(か)」がくっついて「せか」と呼ばれていたものが、転訛して「しか」になったとの説もある。

古事記の天岩戸の項には、「天の香山の真男鹿(さをしか)の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の波々迦を取りて、占合まかなはしめて」とあり、鹿の骨を使った太占(ふとまに)の記述がある。
万葉集には妻恋の声を歌った舒明天皇の

夕されば小倉の山に鳴く鹿の 今宵は鳴かず寝ねにけらしも

などがある。また、「紅葉に鹿」と言われるように、紅葉とともに歌われたものも多く、古今和歌集にのる

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋はかなしき

などがよく知られている。

春日大社では、武甕槌命が神鹿に乗って鹿島神社からやってきたと伝わるため、神の使いとして大切にされている。宮島の鹿は、不浄を嫌って狩猟が禁止されたために増えたと言われている。

【鹿の俳句】

おれがふく笛と合はすや鹿の声  小林一茶
鹿啼てはゝその木末あれにけり  与謝蕪村

【鹿の鳴き声】
繁殖期の雄鹿の鳴き声と、雌鹿の警戒音。(YouTube 動画)

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季語|流星(りゅうせい・ながれぼし)

三秋の季語 流星

星飛ぶ(ほしとぶ)夜這星(よばいぼし)

露の俳句と季語小天体が大気に突入する時に発光する現象。通常100~150km上空で光り始める。これは、小天体自体が光って見えているのではなく、摩擦によってプラズマ化したガスが発光したものである。特に明るいものは「火球」と呼ばれることもあるが、これは季語にはならない。
流星となるものは普通、「流星物質」と呼ばれる、彗星などが放出した塵である。塵の塊のある空間が地球の公転軌道と重なった時、流星群となる。秋は、ペルセウス座流星群や、しし座流星群、オリオン座流星群が観測できる、流星の観測しやすい季節である。

枕草子に「星は、すばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて」とあるが、ここに言う「よばひ星」は「尾」について言及されており、彗星のことだとの説がある。
流れ星を霊魂と見なして願をかけるキリスト教と結びつき、昭和に入って日本では、流星が消えるまでに願いを3回唱えると叶うと言われるようになった。

【流星の俳句】

星飛べり空に淵瀬のあるごとく  佐藤鬼房

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季語|目白(めじろ)

三秋の季語 目白

目白の季語スズメ目メジロ科メジロ属。全国に分布する留鳥。鶯色の体色で、目の周りが白い。目の周りが白いことから「めじろ」と呼ばれる。雑食だが、蜜を好む。
秋の季語にはなっているが、夏に分類する歳時記もある。俳諧歳時記栞草では、秋八月に分類され、「眼白鳥」とある。「柿を好む」とあることから、秋の季語となったものだろう。その体色から、葉の茂った夏季には見つけにくい。むしろ、新緑前の春季に、椿の蜜を吸いに来るのがよく観察される。梅の蜜も好むため、鶯と間違えられることがある。
声が美しいため、江戸時代から「鳴き合わせ」がよく行われていた。現在では鳥獣保護法により愛玩目的での捕獲・飼育が禁止されている。
和歌山県と大分県では県鳥に指定されており、大分県では「めじろん」というマスコットキャラクターも生まれている。
押し合って枝に並ぶ習性があることから、「目白押し」という慣用句がある。

【目白の俳句】

誰やらが口まねすれば目白鳴く  正岡子規

【目白の鳴き声】
「チーチー」という地鳴きもあるが、花の蜜を吸いに来るときなどは、高く可愛らしい声で鳴く。(YouTube 動画)

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季語|鰯雲(いわしぐも)

三秋の季語 鰯雲

鱗雲(うろこぐも)鯖雲(さばぐも)

鰯雲の俳句と季語5kmから15kmの高い空にできる上層雲に、巻積雲がある。薄い小さな雲片が多数出現し、鱗のように見えることから、鱗雲との名がつく。また、この雲が出ると鰯の大漁があると言われ、鰯雲とも、鯖の背紋に似ていることから、鯖雲とも呼ばれる。
巻雲の次に現れ、この雲が現れると、天気は下り坂に向かうことが普通である。

【鰯雲の俳句】

鰯雲ひとに告ぐべきことならず  加藤楸邨

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季語|鶏頭(けいとう)

三秋の季語 鶏頭

鶏頭の俳句と季語ヒユ科の一年生植物で、7月から12月頃に、ニワトリのトサカに似た花を咲かせるために「鶏頭」の名がある。原産地は、インドと言われ、日本には奈良時代には渡来しており、韓藍(からあい)と呼ばれていた。万葉集には4首登場し、山部赤人の和歌に

我が屋戸に韓藍蒔き生し枯れぬれど 懲りずてまたも蒔かむとぞ思ふ

とあるように、当時から好んで栽培されていた花である。また、詠み人知らずの和歌に

秋さらばうつしもせむと我が蒔きし 韓藍の花を誰れか摘みけむ

があるが、この歌より、花をうつし染めに用いたことが分かっている。因みに韓藍は、「美しい藍色」の意味をも持つ。
学名は Celosia cristata で、 Celosia はギリシャ語の「燃焼」を語源とする。花と葉は、食用とされることもある。

【鶏頭の俳句】

鶏頭の十四五本もありぬべし  正岡子規

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|梨(なし)

三秋の季語 

梨の俳句と季語バラ科ナシ属。梨の花は春の季語、梨の実は秋の季語。8月から11月頃に実をつける。普通に梨と呼ばれるのは和梨(日本なし)のことで、他に中国梨・洋梨(西洋梨)がある。
和梨の原産地は中国であり、弥生時代に大陸から導入されたものと考えられている。

日本では発掘遺物より、弥生時代に既に食用にされていたと考えられている。日本書紀では、持統天皇7年(693年)に、五穀を補うために桑・紵・梨・栗・蕪菁などの草木を植えることが奨励されている。
栽培技術が発達したのは江戸時代で、明治時代になると、千葉県松戸市において二十世紀、神奈川県川崎市で長十郎が発見されるに至った。さらに戦後には、幸水や豊水も生まれている。
なお、果皮の色から、幸水や豊水などの赤梨系と、二十世紀などの青梨系に分けられる。幸水は、最もはやく市場に現われ、7月に店頭に並ぶこともある。

梨の語源は、中心部ほど酸味が強い「中酸(なす)」であるとも言われるが、古くは「つまなし」と呼ばれてきたことから、その丸さを表現した「端(つま)無し」に見るのが妥当だろう。
「なし」は「無し」に通じるため、これを忌み「ありのみ」と呼ぶことがある。また、鬼門の方角に梨を植え、「鬼門無し」と縁起を担ぐこともある。「栄養なし」などと言われることもあり、実際にビタミン類などの含有量は多くないが、夏バテ防止や発汗作用を持つ成分が含まれており、夏に食べるのに適した果物だと言える(秋の季語だということを残念に思う)。
果実を歌ったものではないが、万葉集に「梨」は3首掲載されている。その内2首は「妻梨」の名で出ており、「妻無し」に掛けた歌である。

黄葉のにほひは繁ししかれども 妻梨の木を手折りかざさむ(詠み人知らず)

梨を使った熟語なども比較的多く、歌舞伎界を意味する「梨園」、「梨」を「無し」に掛けた「梨のつぶて」などがある。

【梨の俳句】

この梨の二十世紀の残り食ふ  須原和男

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季語|虫(むし)

三秋の季語 

虫の声(むしのこえ)虫の闇(むしのやみ)虫時雨(むししぐれ)虫籠(むしかご・むしこ・むしご)

虫の俳句と季語単に「虫」と言えば、蟋蟀を中心とした秋に鳴く虫を指すため、秋の季語となる。万葉集の時代、秋に鳴く虫は全て「こほろぎ」と呼ばれている(長歌に出てくる「虫」もあるが、「火に入る夏虫」である)。
古今和歌集の時代には、中国から伝わった虫の音を楽しむ文化の影響で、「虫」を見る目に変化が訪れた。今で言う「コオロギ」を指す「きりぎりす」が歌われるほか、藤原敏行朝臣に

秋の夜のあくるも知らず鳴く虫は わがごと物や悲しかるらむ

の和歌がある。
なお、江戸時代以前の秋の虫の呼称には、注意を払う必要がある。「蟋蟀」「竈馬」「きりぎりす」「松虫」「鈴虫」いずれも、現在とは違うものを指している場合がある。

「虫」という漢字は「キ」と読み、ヘビをかたどった象形文字と言われ、人間を含めた生物全般を指す「蟲(チュウ)」とは、本来異なっていた。「虫」が「蟲」の略字体として使用される過程で、「虫」と「蟲」は同化したと言われる。
日本において、「むし」の表現は日本書紀に既に現れるが、「這う虫」や「夏虫」である。これらの「むし」は「まむし」に通じ、異形の存在を指し示す言葉だったと考えられるが、その語源は「産す(むす)」であろう。
「虫」には多くの慣用句があり、「腹の虫」「虫の知らせ」「虫が好かない」「虫がつく」「虫も殺さない」「虫の息」などがある。

現代感覚では、虫籠と言えば昆虫採集に使うものと捉え、夏のものと考えがちである。しかし、古くは鳴く虫を飼うために使用するものであり、秋の季語となる。

▶ 関連季語 蟋蟀(秋)
▶ 関連季語 松虫(秋)
▶ 関連季語 鈴虫(秋)

【虫の俳句】

行水の捨てどころなし虫の声  上島鬼貫
残る音の虫はおどろくこともなし  中村草田男

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季語|蟋蟀(こおろぎ・きりぎりす)

三秋の季語 蟋蟀

ちちろ虫(ちちろむし)・ちろろ・つづれさせ

蟋蟀の俳句と季語(森白甫画)直翅目バッタ目コオロギ科の代表種「こおろぎ」。日本に生息するのは、最も普通に見られるエンマコオロギのほか、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギなど。
かつて「こおろぎ」は、鳴く虫すべてを指す言葉だったと言われている。語源は定かでないが、鳴き声を「こおろ」と聞きなしたところから来たという説がある。
文部省唱歌の「虫のこえ」では、鳴き声を「キリキリ」と聞きなしており、カマドコオロギの鳴き声だと言われている。

俳諧歳時記栞草では「蟋蟀」と書いて「きりぎりす」と読ませ、「立秋の後、夜鳴く。イナゴに似て黒し・・・俗につゞりさせとなくといふ。・・・秋の末までなく故に、古歌に霜夜によめり。」とあり、現在で言う「コオロギ」の説明をしている。また、「今俗にいふきりぎりすは莎雞(はたおり)也」と、現在におけるキリギリスの呼称を俗称としている。
因みに「こほろぎ」には「竈馬」の文字が当てられ、鳴かぬ虫「かまどうま」の説明をしている。
このように、現代になって名前が固定されるまでは、コオロギ・キリギリス・カマドウマなどの呼称は、かなり混乱している。

8月から11月にかけて鳴き声を聞くことができるが、鳴くのはオスだけで、縄張りを主張したり、メスを誘う目的で、翅の発音器をこすり合わせて鳴く。
一般に夜鳴くと思われているが、気温の低下とともに昼に鳴くようになる。新古今和歌集(小倉百人一首第91番)後京極摂政前太政大臣の歌

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに 衣かたしきひとりかも寝む

の「きりぎりす」は、霜夜を生き延びるが故に「コオロギ」のことだと言われているが、霜夜の頃には昼に鳴くことが多い。
因みに万葉集に「蟋」は歌われているが、ここでは「こおろぎ」と読み、「白露」や「浅茅」「草」とともに歌われる。まだ「霜夜」との関連付けもなく、種類の特定が難しいが故に秋の夜に鳴く虫のこととする。詠み人知らずの歌には

草深みこほろぎさはに鳴くやどの 萩見に君はいつか来まさむ

がある。

中国には、闘蟋というオスのコオロギを戦わせる賭博が唐の時代からあり、人気を集めているという。最近では、昆虫食が注目されているが、その代表のひとつが蟋蟀食である。おいしいらしい。。。

▶ 関連季語 きりぎりす(秋)

【蟋蟀の俳句】

こほろぎや犬を埋めし庭の隅  正岡子規
酒蔵の酒のうしろのちゝろ虫  飴山實

【エンマコオロギの鳴き声】
北海道から九州まで分布する。日本に生息するコオロギの中で最も大きい。人家の近くにも生息する、日本人に最も馴染み深いコオロギ。顔の模様を閻魔に見立てて命名された。(YouTube 動画)

【ツヅレサセコオロギの鳴き声】
北海道から九州まで分布する。単にコオロギともいう。ツヅレサセとは漢字で「綴刺せ」と書き、むかしこのコオロギの鳴き声を聞いて、冬着を縫い始めたという。(YouTube 動画)

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季語|露(つゆ)

三秋の季語 

白露(しらつゆ・はくろ)露けし(つゆけし)芋の露(しらつゆ・はくろ)・露葎(つゆむぐら)

露の俳句と季語大気中の水蒸気が、放射冷却などの影響で水滴となったものが「露」であり、秋の夜間などの気温低下の激しい時に発生する。露が凍結したものは「」である。
一般的に夜間に生成されるが、人との接触時間に応じて「朝露」「夜露」と呼び分けることがある。古い句では「秋露」として出てくることがあるが、現代では「露」で秋の季語となるために「秋露」を使用することは避ける傾向にある。
露は主に植物についた様子を歌うものであるが、特に水を弾く里芋の葉に着いた露は「芋の露」として特別である。この露は、「芋の葉の露」として、七夕の短冊に願い事を書くための墨をするのに使われる。

「露」は「あらわ」と読んだり、「つゆ知らず」などのように使用されることもあり、明白であることを指す言葉である。しかしまた、僅かであることを言う言葉でもあり、「露の命」「露の身」「露の世」などのように儚さをも表現する。
古くから、涙を指すものとしても知られる露は、

秋萩に置きたる露の風吹きて 落つる涙は留めかねつも(万葉集 山口女王)
あはれてふ言の葉ごとに置く露は 昔を恋ふる涙なりけり(古今和歌集 詠み人知らず)

などとして歌われる。

【露の俳句】

今日よりや書付消さん笠の露  松尾芭蕉
露の世は露の世ながらさりながら  小林一茶
芋の露連山影を正しうす  飯田蛇笏

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