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小林一茶 

秋風やむしりたがりし赤い花  (おらが春)
うまさうな雪がふうはりふわりかな 
是がまあつひの栖か雪五尺  (七番日記)
すずめの子そこのけそこのけお馬が通る  (おらが春)
名月をとってくれろと泣く子かな 
やせ蛙負けるな一茶これにあり  (七番日記)
雪とけて村一ぱいの子どもかな 
ともかくもあなた任せの年のくれ  (おらが春)
南天よ炬燵やぐらよ淋しさよ 
わが門へ来さうにしたり配り餅 
をさな子や文庫に仕舞ふはつ氷 
笋のうんぷてんぷの出所かな 
長閑さや垣間を覗く山の僧 
百両の石にもまけぬつつじ哉 
山門の大雨だれや夏の月 
涼風の曲がりくねって来たりけり 
夕顔の花に冷つく枕かな 
うつくしや障子の穴の天の川 
今日からは日本の雁ぞ楽に寝よ 
春雨や猫に踊りを教える子 
大根引き大根で道を教えけり 
供部屋がさわぎ勝ちなり年始酒 
是からも未だ幾かへりまつの花  (真砂古)
露の世は露の世ながらさりながら 
せみなくやつくづく赤い風車 
陽炎や目につきまとふわらひ顔 
小言いふ相手もあらばけふの月 
世の人は地獄の上の花見哉 
あいつらも夜永なるべしそそり唄 
秋の草鶴見る人も年のよる 
はせを忌と申すもたつた一人かな 
秋の日やかへらぬ水をなく烏 
夕暮や土とかたればちる木の葉 
鵙の声かんにん袋破れたか 
脇へ行くな鬼が見るぞよ寒雀 
寒烏かはいがられてとられけり 
草の穂は雨待宵のきげんかな 
鷹来るや蝦夷を去る事一百里 
藪の蜂来ん世も我にあやかるな 
今来たと顔を並べるつばめかな 
新茶の香真昼の眠気転じたり 
麦秋や子を負ひながら鰯売 
雲を吐く口つきしたり蟇 
やれ打つな蠅が手をすり足をする 
初蝉や人松陰をしたふ比 
うす縁や蓮に吹かれて夕茶漬 
六十年踊る夜もなく過しけり 
名月にけろりと立しかゞし哉 
菊咲くや二夜泊りし下々の客 
秋霧に河原撫子見ゆるかな 
今尽きる秋をつくづくほふしかな 
艸原や提灯行くに虫すだく 
足元へいつ来たりしよ蝸牛 
一番に乙鳥のくゞるちのわ哉 
大根を引ば来てなく田鶴哉 
粥くふも物しりらしき冬至かな 
花の影寝まじ未来が恐しき 
いざゝらば死ゲイコせん花の陰 
木つつきの死ねとてたたく柱かな 
死下手の此身にかゝる桜哉 
死下手とそしらば誹れ夕炬燵 
死にこぢれ死にこぢれつゝ寒さかな 
君が世や風治りて山ねむる 
陽炎や道灌どのの物見塚  (七番日記)
青い田の露をさかなやひとり酒 
木々おのおの名乗り出でたる木の芽かな 
まん丸に草青みけり堂の前 
酒尽きてしんの座につく月見かな 
春雨や食はれ残りの鴨が啼く 
丸にのゝ字の壁見えて暮遅き 
春の雪地祭り唄にかかるかな 
小酒屋の出現したり春の山 
盥から盥に移るちんぷんかん 
けつかうな御世とや蛇も穴を出る 
わか草に笠投やりて入る湯哉 
初虹もわかば盛りやしなの山 
青苔や膝の上まで春の虹 
三日月はそるぞ寒はさえかへる 
あまり湯のたらりたらりと日永哉 
春風や牛に引れて善光寺 
其夜から雨に逢ひけり巣立鳥 
下京の窓かぞへけり春の暮 
里の子や草摘んで出る狐穴 
白髪同士春ををしむもばからしや 
艸の葉も風癖ついて暮の春 
けむからんそこのけそこのけきりぎりす 
やよや蝶そこのけそこのけ湯がはねる 
一夜酒隣の子迄来たりけり 
むさし野や只一つ家のうかれ猫 
なの花にまぶれて来たり猫の恋 
陽炎に何やら猫の寝言哉 
陽炎や縁からころり寝ぼけ猫 
猫の恋人のきげんをとりながら 
虫干に猫もほされて居たりけり 
どら猫のけふもくらしつ草の花 
年の内に春は来にけり猫の恋 
としの夜や猫にかぶせる鬼の面 
一番に猫が爪とぐ衾哉 
侘ぬれば猫のふとんをかりにけり 
栗拾ひねんねんころり言ひながら 

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