俳句

季語|芹(せり)

三春の季語 

芹の水(せりのみず)水芹(みずぜり)根芹(ねぜり)

芹の季語と俳句春の七草の一つで、セリ科の多年草で、「白根草(しろねぐさ)」の別名も持つ。日本原産で湿地を好み、畦などに自生する芹を「山ぜり」「野ぜり」、水田で栽培されているものを「田ぜり」、畑で栽培されているものを「畑ぜり」という。強い芳香を持つ。8月頃に、白い小さな花をたくさんつける。
旬は1月から3月で、春の七草として七草粥に使われるほか、鍋や炒め物、和え物などにも用いられる緑黄色野菜である。
同じセリ科植物に日本三大有毒植物のドクゼリがあり、形状がよく似ているので注意が必要である。

「俳諧歳時記栞草」(1851年)では、正月兼三春物に分類し、「水旱及び赤白の二種有。水芹は水中に生じて根多く、旱芹は平地に生じて根少し。赤芹は味悪くして用ひず、白芹は味美にして常用す」とある。
古くから和歌にも詠まれ、万葉集には葛城王と薛妙観命婦の間に贈答歌がある。

あかねさす昼はたたびてぬばたまの 夜の暇に摘める芹こそ  葛城王
丈夫と思へるものを太刀佩きて かにはの田居に芹ぞ摘みける  薛妙観命婦

競り合うように群生して伸びることから、語源は「競り」にあると言われている。

【芹の俳句】

我がためか鶴はみのこす芹の飯  松尾芭蕉
我事と鯲のにげし根芹かな  内藤丈草

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季語|桜前線(さくらぜんせん)

晩春の季語 桜前線

桜前線の俳句と季語桜(主にソメイヨシノ)の開花予想日を結んだ線のこと。気象庁は、昭和30年から「さくらの開花予想」を発表していたが、その中に「等期日線図」というのがあり、昭和40年頃、マスコミがそれを気象で使う前線に擬えて「桜前線」と呼んだ。
近年では民間気象事業者も開花予想をするようになり、気象庁では平成22年から開花予想の発表は行わなくなった。しかし、開花の観測は引き続き行われており、標本木が5,6輪咲くと開花宣言が出る。
開花平年日は、福岡3月22日、大阪3月27日、東京3月24日、仙台4月8日、青森4月22日、札幌5月1日。平年と比べて3日以上のずれを「早い」「遅い」とし、7日以上ならば「かなり早い」「かなり遅い」と発表する。
現在、日本気象協会では「桜開花予想」を1月下旬頃より発表している。また、気象情報会社のウェザーニューズでは、3月1日に第1回目の開花予想を発表し、「さくら開花予想マップ」を作成している。

▶ 関連季語 桜(春)

【桜前線の俳句】

桜前線泊まると決めてけむり雨  角川春樹

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季語|花月夜(はなづきよ)

晩春の季語 花月夜

花月夜の俳句と季語桜の花が咲いた美しい月夜をいう。しかし、季語として定着しているというよりも、「花」を「桜」と見て、春の季語になるという感覚である。そのため、「〇〇の花月夜」と詠み込まれ、春以外の季になることもある。
多肉植物のエケベリアに「花月夜」という品種があり、「かげつや」と読む。しかし、これは季語にはならない。

▶ 関連季語 桜(春)

【花月夜の俳句】

チゝポゝと鼓打たうよ花月夜  松本たかし

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季語|白酒(しろざけ)

仲春の季語 白酒

お白酒(おしろざけ)

季語と俳句で花見酒季語となる「白酒」は、みりん・蒸米・米麹などでつくられる混成酒の一種で、雛祭に供される。俳諧歳時記栞草(1803年)には、春之部三月に分類し、「本朝食鑑」の引用で「酵は白酒の甘き也。和名、之良加須(しらかす)、云々。和俗、三月三日節物として、雛祭に供ず」とある。さらに「句作によりて、三春にわたるべき也」と追記がある。
古代中国では3月3日の上巳に、厄をはらうために、桃の花びらを浮かべた酒を飲むという行事があった。日本に伝わり、時代が下るにつれ、桃の花の赤い色との対比から「白酒」が供されるようになったとされる。「桃(もも)」と「百(もも)」を掛けて、百歳までも長生きできるようにとの願いを込めて飲まれるものである。
江戸では「豊島屋の白酒」が名物となっており、「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」と謳われ、2月の売り始めの日には大勢の客が押し寄せたという。豊島屋は、現在でも豊島屋本店として東京で酒類醸造販売業を営んでおり、清酒「金婚」の総発売元としても知られている。

中国では白酒と書いてパイチュウと読み、穀類を原料とする蒸留酒の総称となっている。
古代から日本には、神酒に黒酒や清酒などとともに白酒を捧げる風習がある。ここでは白酒を「しろき」と読む。
また、濁酒(どぶろく)を白酒と呼ぶこともある。因みに濁酒は秋の季語である。

【白酒の俳句】

白酒の紐の如くにつがれけり  高浜虚子

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季語|花見酒(はなみざけ)

晩春の季語 花見酒

季語と俳句で花見酒花見の際に飲む酒を「花見酒」と言うが、特に桜を見ながら飲む酒を言う。「花見酒」の言葉自体は、酒を売って金儲けをしようとして向島に行き、結局酒を飲んだだけで終わってしまったという落語の噺から来ている。
桜の花を愛でることは平安時代から続く行事であるが、そこに酒宴が定着したのは、慶長3年3月15日(1598年4月20日)に豊臣秀吉が醍醐寺で開催した「醍醐の花見」だと言われている。

花札では、「菊に盃」と「桜に幔幕」の二枚の札が揃った時、「花見酒」という。

【花見酒の俳句】

むさし野やつよう出てきた花見酒  井原西鶴

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季語|花粉症(かふんしょう)

晩春の季語 花粉症

花粉症植物の花粉によるアレルギー症状のことで、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみなどの症状が現れる。花粉症を引き起こす植物には、スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどがあり、花粉症は春に限ったアレルギー症状ではない。しかし、季語で「花粉症」を用いる時には、スギ・ヒノキによりもたらされる春の花粉症となる。
スギの花粉の飛散は、1月頃から始まり、2・3月をピークとして5月頃まで続く。ヒノキは2月頃に始まり、3月をピークとして6月頃まで続く。近年では、PM2.5との関連も報告されるようになり、PM2.5の濃度が上昇する冬から春にかけては症状が悪化しやすいとの研究もある。

西洋での「花粉症」は1800年代より研究され、アメリカでは乾草熱としてその存在が知られていた。日本ではブタクサ公害として1970年代頃から認識されるようになり、戦後の杉の植林の影響で、平成になってからは大きく社会問題化したと言われている。

日本書紀の一書では、素戔嗚尊(すさのおのみこと)の髯が杉になったと記されている。

【花粉症の俳句】

花粉症かほのさびしくなるばかり  都筑典子

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季語|虎杖(いたどり)

仲春の季語 虎杖

季語と俳句で虎杖1.5メートルほどの高さに育つタデ科の多年生植物。東アジア原産で日本全土に分布し、近年ではヨーロッパやアメリカで帰化したものが生態系を破壊し、問題になっている。
雌雄別株で、冬は地下茎や根で越冬し、春に地上から新芽が出てくる。春にはこの新芽を食したり、中空になっている茎の皮を剝いで食したりする。因みに花期は7月から10月頃で、白い小さな花をたくさんつける。

若葉に止血と痛み止めの効果があることから、「痛み取り」が転訛して「イタドリ」になったと考えられている。「虎杖」の漢字は杖に使われたことによるもので、茎の虎斑模様から「虎杖(こじょう)」とされたことに因る。
別称に「左伊多津万(さいたづま)」があり、この名は春の若草の代名詞でもあり、襲の色目にもなっている。「大和物語」(平安時代)に、虎杖を摘みに出た娘がその美しさに魅せられて「明日また来る」と袋を被せておいたところ、一夜の内に葉が広がって見る影もなくなり

きのふ見し沢の虎杖けふははや 葉びろになりぬ衣たべ君

と歌った。これがきっかけとなり、「裂いた爪(先)」の意で「さいたづま」と呼ぶようになったという。

日本では古くから馴染みのある植物で、日本書紀の反正天皇項にも出てくる。そこでは「多遅(たじ)」と呼ばれ、産湯に使った井戸に花が落ちたことから、天皇の幼名である「多遅比瑞歯別」に反映されたとある。
俳諧歳時記栞草(1851年)には春之部二月に分類されている。
茎を切り取り、両端に切り込みを入れて水に晒すと、外側に反る。中空になっている茎の中に棒を入れ、水の流れの中でくるくる回す玩具を、「虎杖水車」と呼ぶ。

【虎杖の俳句】

虎杖の手応へもなく折られけり  柚山美峯

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季語|襟巻(えりまき)

三冬の季語 襟巻

マフラー(まふらー)ショール(しょーる)

襟巻の俳句と季語防寒を主目的とする服飾品。江戸時代には首巻と呼び、隠居や病人が使用するものだった。素材には、ウール・絹・ナイロンなどがあり、大きさや形などによって、マフラー・ショール・ストール・スカーフ・ネッカチーフなどと呼び分ける。この内、季語として認知されているのはマフラーとショールで、共に冬の季語である。
マフラーの語源は、ラテン語で包み込むことを意味する「maffle」である。ショールの語源は、ペルシャ語で大きな布を意味する「shāl」で、折ったりなどして三角形にしたものを肩に羽織る。

【襟巻の俳句】

襟巻を別れてよりは二重にす  福井隆子

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季語|蕪(かぶ・かぶら)

三冬の季語 

赤蕪(あかかぶ)

蕪の俳句と季語アブラナ科アブラナ属の根菜類の一つ。蕪菜・鈴菜・豊菜・大頭菜などとも呼ぶ。鈴菜として、春の七草のひとつとなっている。淡色野菜に分類される根(胚軸)や、緑黄色野菜に分類される茎や葉を食用にする。
原産は地中海地方で、アジア系とヨーロッパ系の二変種が存在する。京野菜など西日本を中心に栽培されるものは中国伝来のアジア系で、東日本にはシベリア経由のヨーロッパ系が在来種として存在する。関ケ原付近で二分されるため、それを専門家は「かぶらライン」と呼ぶ。
日本では約80品種が生産され、白菜・チンゲンサイ・小松菜なども蕪の仲間になる。冷涼な気候を好み、野菜としては10月から12月と、3月から5月の2回旬がある。

日本へは弥生時代に中国からもたらされたとの説があり、「古事記」に「吉備の菘菜(あおな)」として登場する。また、万葉集にも長忌寸意思吉麻呂の歌で

食薦敷き青菜煮持来む梁に 行縢懸けて息むこの君

がある。俳諧歳時記栞草(1851年)には冬之部兼三冬物に分類され、「蕪菁(かぶら)」として掲載されている。
語源は、丸く育った根の部分を頭に見立てて、頭を意味する「かぶり」と呼んだところから「かぶら」と呼ばれるようになり、「かぶ」に転訛したとの説が有力。

【蕪の俳句】

おく霜の一味付けし蕪かな  小林一茶

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季語|寒牡丹(かんぼたん)

三冬の季語 寒牡丹

冬牡丹(ふゆぼたん)

寒牡丹の季語と俳句(いま姿 寒牡丹)牡丹」は夏の季語であるが、冬に開花するものがあり、それを「寒牡丹」「冬牡丹」という。ただし、寒牡丹と冬牡丹の間には違いがある。
つまり、「寒牡丹」とは、初冬と早春に咲く二季咲きの品種の牡丹が冬に花をつけたものを言う。「冬牡丹」とは、夏季に咲く品種の開花を温度調整で抑制して、冬に開花させるものを言う。見た目には、「寒牡丹」には葉がほとんどないのに対し、「冬牡丹」は葉をつけるといった違いがある。また、「冬牡丹」は寒さに弱いため「わらぼっち」と呼ばれる藁囲いをつけるのに対し、「寒牡丹」はわらぼっちがなくても育つ。

俳諧歳時記栞草(1851年)には「冬牡丹」のみ冬之部十月に立項されており、「大和本草」の引用で「冬牡丹、八月より葉出て十月より花さく。臘寒の時も花あり。凡、如此なるは、人功を以て天地造化の力をぬすみてこれを成。怪むべし」とある。

【寒牡丹の俳句】

狂はねば恋とは言はず寒牡丹  西嶋あさ子

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