三春の季語 春の月
春月(しゅんげつ)・春満月(はるまんげつ)・朧月(おぼろづき)・朧(おぼろ)
単に「月」といえば秋。澄み渡った秋の月に対し、春の月は朧を特徴とする。
月の語源は、太陽の次に明るいことから次(つく)が変化したものだと言われている。なお、古事記で月の神は三貴神に数え上げられ、イザナギの左目から生まれた太陽神アマテラスの次に、右目からツクヨミとして生まれている。
月白(つきしろ)・月光(げっこう)・月影(つきかげ)・月明(げつめい・つきあかり)・月下(げっか)・昼の月(ひるのつき)・月の秋(つきのあき)・月待ち(つきまち)
単に「月」といえば三秋の季語。名月ならば仲秋の季語。俳諧とつながりのある連歌・連句では、秋の月と春の花は特別視され、月には「月の定座」として月の句を詠みこまなければならない箇所がある。詠み込まれる「月」には、秋の清けさを映す。
万葉集の時代から「月」は数多く歌われていたが、特に額田王の歌と言われている
熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな
は有名。また、月が出ようとしている東の空の明るさを、月白と言って愛でる。
月の語源は、太陽の次に明るいことから次(つく)が変化したものだと言われている。なお、古事記で月の神は三貴神に数え上げられ、イザナギの左目から生まれた太陽神アマテラスの次に、右目からツクヨミとして生まれている。
月を語源とする「時(とき)」や「憑く(つく)」などの言葉もある。
▶ 関連季語 名月(秋)
浮世の月見過しにけり末二年 井原西鶴
ふるさとの月の港を過るのみ 高浜虚子
返り花(かえりばな)・帰咲(かえりざく)・狂咲(くるいざき)・狂花(くるいばな)・忘花(わすればな)・二度咲(にどざき)
桜に限らず、桃やツツジなど、11月頃に季節を違えて咲く花をいう。身請けされた遊女が再び勤めに出ることもまた「帰り花」という。
散った花がその年のうちにもう一度花をつける様を、帰ってきたと見なす。
ねむり木(ねむりぎ)・ねぶの花(ねぶのはな)
「歓喜」の花ことばを持つ。マメ科の落葉高木で、7月頃開花する。よって夏の季語となる。日本では、本州・四国・九州に自生。万葉集に合歡木(ねむ)として既にその名が見られ、
昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ見めや戯奴さへに見よ 紀女郎
我妹子が形見の合歓木は花のみに咲きてけだしく実にならじかも 大伴家持
我妹子を聞き都賀野辺のしなひ合歓木我れは忍びず間なくし思へば よみ人しらず
の三首が載る。
夜になると葉を閉じるため、「眠り木」が転じてネムとなった。中国では、ネムノキが夫婦円満の象徴とされていることから、「合歓」の字が当てられた。
彼岸花(ひがんばな)・死人花(しびとばな)・地獄花(じごくばな)・幽霊花(ゆうれいばな)・狐花(きつねばな)・曼朱沙華(まんじゅしゃげ)
「情熱」の花ことばを持つ。秋の彼岸に開花することから彼岸花とも言い、秋の季語となる。赤い花をつけるが、白いものなどもある。稲作の伝来とともに中国から入ってきたと言われている。古い文献にはほとんど登場しないが、これは、「火事につながる」「摘むと死人が出る」などと言われて、忌避されてきたからだと考えられる。実際、全体に毒を有し、そのまま食すと中枢神経を侵して死に至ることも。しかし、薬として活用されることもあり、毒抜きをすれば救荒食にもなる。
曼珠沙華の語源はサンスクリット語にあり、サンスクリット語では manjusaka と発音し「赤」を指す。
初電車(はつでんしゃ)・初飛行(はつひこう)
その年初めて乗り物に乗ることを言う。
乗るは、古くは宣ると同義であったか。宣るは、「告げる」の意味を持ち、言霊信仰をもとに呪いに関与する。乗るは、のりうつることを意味したと思われる。
夏空(なつぞら)・夏の雲(なつのくも)・夏雲(なつぐも・かうん)・夏の天(なつのてん)・夏天(かてん)
主に、夏の晴れた空を指す。
空は、見上げる時に身体を反らすから「そら」とよばれるようになったとの説がある。なお、山幸彦で知られる天孫・日子穂穂出見を虚空津日高(そらつひこ)と呼ぶが、古くは、天と地上の間にある場所を虚空(そら)と呼んでいたと思われる。