俳句

季語|雀の子(すずめのこ)

晩春の季語 雀の子

子雀(こすずめ)親雀(おやすずめ)すずめの子(すずめのこ)

季語と俳句で雀の子留鳥として、日本では年中みられる雀。人間の生活に密着しており、太古より、人の住む隣で生活してきた馴染み深い鳥である。その雀は、屋根の軒の隙間などに営巣し、3月から8月頃に2回ほど繁殖する。集団繁殖の習性があり、迷子になった子雀は、集団で探索することがある。
雀の子を「黄雀(きすずめ・こうじゃく)」と呼ぶこともあるが、これは雀の雛の嘴が黄色いためである。徐々に黄味は薄れてくるが、秋くらいまでは嘴の基部に残っている。

「雀の子」は歌っていないが、「すずめのお宿」という童謡は民話「舌切り雀」を踏まえたもので、春の雀を描いたものとなっている。

▶ 関連季語 ふくら雀(冬)

【雀の子の俳句】

すずめの子そこのけそこのけ御馬が通る  小林一茶
雀子や走りなれたる鬼瓦  内藤鳴雪

【雀の子】
スズメ目スズメ科スズメ属。ユーラシア大陸の広範囲に分布し、日本では全国的に見られる。繁殖期は3月から8月。集団で繁殖する。(YouTube 動画)

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季語|春の虹(はるのにじ)

晩春の季語 春の虹

初虹(はつにじ)

春の虹・初虹「虹」は夏の季語であるが、「初虹」は春の季語となる。七十二候に「虹始見」があり、清明の末候、4月中旬にあたる。因みに、「冬の虹」という季語もあり、天候次第では、寒い季節にも虹は確認できる。

▶ 関連季語 虹(夏)

【春の虹の俳句】

青苔や膝の上まで春の虹  小林一茶
うすかりし春の虹なり消えにけり  五十嵐播水

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季語|チューリップ(ちゅーりっぷ)

晩春の季語 チューリップ

季語と俳句でチューリップユリ科チューリップ属の植物で、牡丹百合の名もある。和名は鬱金香(うこんこう)で、花の香りがウコンのように泥臭いことに由来する。チューリップの名は、オスマン帝国からヨーロッパに伝わった時に、誤って、ターバンのことである tülbend と伝わったことから来ている。

原産地はトルコのアナトリア地方で、チューリップで有名なオランダには16世紀頃伝わる。オランダは、チューリップ取引で栄え、17世紀にはじまった商品取引の元になったとされる。
オランダには、3人の騎士から求婚された少女が、悩んだ挙句、花になった話が伝わる。それぞれの騎士からの結納であった王冠・剣・財宝が、花・葉・球根になり、少女の名からチューリップと名付けられたとされる。
日本には、江戸時代後期に伝来したが普及せず、大正時代に入って富山や新潟で本格的な球根栽培が始まった。このことから、富山県と新潟県では県花に指定されている。
イラン・アフガニスタン・オランダ・トルコ・ハンガリーでは国花である。

【チューリップの俳句】

チューリップ喜びだけを持つてゐる  細見綾子

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|クローバー(くろーばー)

晩春の季語 クローバー

苜蓿(うまごやし)・シロツメクサ・クローバ

季語 クローバーマメ目マメ科シャジクソウ属の多年草。原産地はヨーロッパで、4月から12月にかけて白い花を咲かせる。明治時代以降、牧草として導入されたものが野生化した帰化植物。窒素固定作用があり、緑化資材にも適している。
1846年にオランダから献上されたガラス製品に緩衝材として詰められていたことから、ツメクサと呼ばれ、白い花を咲かせることからシロツメクサ(白詰草)になった。アイルランドでは国花となっている。

三位一体を説明するために三つ葉のクローバーが用いられたことから、花言葉は「約束」。滅多に見つけられない四つ葉のクローバーの花言葉は、「幸運」となる。
因みに、四つ葉となるのには、遺伝的要因と環境的要因があるとされる。踏みつけられるなどして傷つけられると、四つ葉のクローバーになり易い。また、四つ葉以上の多くの葉をつけることもあり、56枚葉のものも発見されている。

よく似た植物にウマゴヤシ(苜蓿)があり、こちらはウマゴヤシ属になる。やや小ぶりの葉に、黄色い花をつける。ただし、ウマゴヤシをクローバー(シロツメクサ)の俗称とすることもある。

【クローバーの俳句】

クローバや制服に夢ありし頃  藤崎美枝子

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季語|藤(ふじ)

晩春の季語 

藤浪(ふじなみ)

季語と藤マメ科フジ属のつる性落葉木本。つるが右巻きの藤を「フジ(ノダフジ)」、左巻きの藤を「ヤマフジ(ノフジ)」といい、共に日本固有種。4月から5月に花を咲かせる。
花序は垂れ下がり、上から下へと咲いていく。 藤の花が、春風にそよぐ様は「藤浪」という。
藤の成長は早く、絡みついた宿主を枯らしてしまうことがあり、嫌われることもある。藤の葉は、太陽光が強いときには、身を守るために閉じる。

古来親しまれてきた藤は、生活の様々なところに利用されてきた。花を天ぷらにして食すほか、蔓を椅子に利用したり紙にしたりする。また、和弓は藤蔓を巻き付けることによって仕上げる。
聖徳太子の冠位十二階では、最高の官職に藤色をあてた。枕草子では「めでたきもの」として、「色あひ深く花房長く咲きたる藤の花、松にかかりたる」を、唐錦・飾り太刀・作り仏のもくゑに次いで挙げている。「藤」は女性の象徴とされ、男を象徴する「松」とともによく描かれている。
古事記の時代から文学に現れ、「秋山の下氷壮夫と春山の霞壮夫」の挿話がある。女神との結婚を賭けた下氷壮夫と霞壮夫の話で、霞壮夫の母が藤蔓で服や道具を仕立ててやると花を咲かせ、女神と結婚できたという話である。
万葉集では「藤浪」として詠み込まれることが多く、大伴四綱は

藤波の花は盛りになりにけり 奈良の都を思ほすや君

と歌っている。
中臣鎌足は、天智天皇から藤原朝臣姓を与えられ、名門藤原氏が生まれる。藤原の名は、鎌足の生地である大和国高市郡藤原にちなむ。藤原姓は全国に広がり、そこから佐藤・伊藤・斎藤など、様々な「藤」を持つ姓が分化した。

「藤」の漢字は、つるが上によじ登る草を表している。「ふじ」には、「伏(ふ)しつつ迸る(ち)」の意味があるとも言われる。
藤の名所には、ノダフジの命名のもととなった大阪市福島区野田や、藤原氏の氏神である春日大社などがある。東京では、亀戸天神社の藤棚が有名。

【藤の俳句】

草臥れて宿借るころや藤の花  松尾芭蕉

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|虻(あぶ)

三春の季語 

季語と俳句で虻双翅目ハエ亜目に属する。二枚の翅を有する蝿や蚊の仲間であり、虻・蝿の間に、明確な区分はない。
虻と言えば、血を吸う害虫のイメージもあるが、多くの種類はハナアブやヒラタアブに代表されるような、植物の受粉を助ける益虫である。血を吸うアブには、ヤマトアブやウシアブがあり、メスのみが吸血する。成虫の活動期も6月から9月頃であり、春のイメージはない。

「虻」は本来「あむ」と発音する。古事記の雄略天皇の項には、「アム、御腕を咋ひけるを、すなわち蜻蛉来て、そのアムを咋ひて、飛びき」とあり、古来、害虫との位置づけにあったことが読み取れる。虻を退治する蜻蛉の勇猛さを称えて、大和の国を蜻蛉島(あきづしま)と呼ぶようになったと、ここで語られている。
飛翔時に「ボー」と音を出すことから、虫偏に「亡」があてがわれて、「虻」の漢字が生まれたと言われている。「蝱」は異字体。

【虻の俳句】

大空に唸れる虻を探しけり  松本たかし

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季語|春雷(しゅんらい)

三春の季語 春雷

春の雷(はるのらい)初雷(はつらい)

春雷(出雲大社)「雷」は夏の季語、「寒雷」は冬の季語で、「春雷」と言えば、立春を過ぎて鳴る雷の事をいう。特に、立春後に初めて鳴る雷を「初雷」という。春の雷は、暖かさを呼ぶものとされており、夏の雷ほどの激しさはない。
啓蟄の頃によく鳴ることから、「虫出しの雷」とも呼ばれる。

【春雷の俳句】

下町は雨になりけり春の雷  正岡子規
春雷や布団の上の旅衣  島村元

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季語|紫雲英(げんげ)

仲春の季語 紫雲英

蓮華草(れんげそう)

季語と俳句の紫雲英中国原産の、マメ科ゲンゲ属に分類される越年草で、日本へは17世紀ころ渡来してきたと考えられている。4月ころに花をつける。
蓮に花が似ていることから、「れんげ」「れんげそう」とも呼ぶ。「紫雲英」は、一面に咲く花を、低くたなびく紫雲に見立てたところからきており、通常は「しうんえい」と読む。「げんげ」は「れんげ」の転訛。

紫雲英は、淡黄色のよい蜂蜜がとれることでも知られ、「はちみつの王様」とも呼ばれている。
化学肥料が自由に使えなかった頃は、8月から9月頃に種をまいて、翌春の田植え前にれんげ畑となったところを鋤き込んで、緑肥とした。戦後は、化学肥料の使用が自由になったことなどにより、れんげ畑は急速に減っている。

ギリシア神話には、紫雲英にまつわるドリュオペとイオレの姉妹の神話がある。祭壇の花にするため、ドリュオペが摘んだ紫雲英は、ニンフが変身したものだったというもの。イオレに、「女神が姿を変えたものだから、もう花は摘んではならない」と言いながら、ドリュオペは紫雲英に変わっていったという。
1966年(昭和41年)、運輸相に抜擢された政治家荒舩清十郎は、深谷駅問題などで辞任に追い込まれた。その時に、川島正次郎自民党副総裁が、「野におけレンゲ草だったよ」と荒舩清十郎を、表舞台に立つべきではない人物だったと評している。その言葉の元となったのは、滝野瓢水の「手に取るなやはり野に置け蓮華草」。遊女を身請しようとした友人を止めるために詠んだ句である。

【紫雲英の俳句】

げんげ田や故郷へつづく雲流れ  西村冬水

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|蓬(よもぎ)

三春の季語 

季語と俳句で蓬中央アジア原産のキク科の多年草。日本では在来種として、本州以南に自生する。特有の香りを持ち、ハーブの女王の異名がある。
繁殖力が強く、地下茎を伸ばして集団で生えている。早春に若芽を出し、8月から10月にかけて、淡褐色の小花を穂状につける。風媒花であり、秋の花粉症の原因ともなる。
食材に用いることが多い春の季語となるが、「夏蓬」という夏の季語にもなる。

別名を餅草(もちぐさ)といい、餅に入れて食すほか、新芽を汁物の具にしたり、天ぷらにしたりする。また、灸に使うもぐさにしたり、漢方薬にもなる。
語源説にはいくつかあるが、よく繁殖して四方に広がる様を「四方草(よもぎ)」と書いたという説が有力。万葉集の大伴家持の長歌には「余母疑(よもぎ)」と詠み込まれているが、古くは「さしも草」とも呼ばれ、小倉百人一首第51番には藤原実方朝臣の和歌(後拾遺集)で、

かくどだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを

がある。

【蓬の俳句】

蓬つむ洗ひざらしの母の指  中尾寿美子

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季語|薊(あざみ)

晩春の季語 

眉はき(まゆはき)

季語と俳句で薊キク科アザミ属で、日本では100種類ほどが知られており、春から秋にかけて花が咲く。「薊」だけでは春の季語であるが、夏の季語となる「夏薊」、秋の季語である「富士薊」などがある。
日本での普通種はノアザミ。

紫だけでなく、黄色や赤色の花を咲かすアザミもある。多くの種類があるアザミは交雑しやすく、雑種を多く生じている。そのため、詳細な分類が難しい植物である。

葉や総苞にトゲがあるため、驚くという意味の「あざむ」が語源だと考えられている。古くは、婦人の眉払の形に似ていたため、「眉作(まゆつくり)の花」と呼んだ。「山ごぼう」として新芽や根を食す地方もある。
花言葉は「独立」「触れないで」「報復」「守護」。ノルウェー軍の侵攻を、薊のトゲを踏みしめる音で感知して勝利したことにちなみ、スコットランドでは国花となっている。

【薊の俳句】

この野道薊の外に花もなし  久保より江

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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