三夏の季語 夏
太陽暦では6月から8月まで、陰暦では4月から6月までを夏という。二十四節気では、立夏から立秋の前日まで。五行思想で、赤色を夏に配するところから「朱夏」「赤帝」ともいう。
語源は、「暑い」の「あつ」が転じて「なつ」となったとする説がある。万葉集にある持統天皇の歌、
春過ぎて夏来るらし白妙の衣ほしたり天の香具山
は、「春すぎて夏きにけらし白妙の衣干すてふ天のかぐ山」として百人一首の2番。
帰る鳥(かえるとり)・鳥雲に入る(とりくもにいる)・鳥雲に(とりくもに)・鳥曇(とりぐもり)
鴨や白鳥など、日本で越冬した鳥が北方へ帰ること。秋の「鳥渡る(渡り鳥)」に対応する。
その鳥が、彼方の雲に見えなくなる様を「鳥雲に入る」「鳥雲に」という。また、その雲を指す「鳥雲」や、天候を指す「鳥曇」という季語も有る。
鳥を特定する季語としては「引鶴」「引鴨」「帰雁」「白鳥帰る」「戻り鴫」などがある。
▶ 関連季語 鳥渡る(秋)
陰暦の師走は晩冬。現在では、新暦の12月も師走と呼ぶ。古くは、暮れの数日のみを「しはす」と言っていたらしい。
語源は、僧が読経に走り回るために「師馳す」にあるとされ、平安時代から支持されてきたが、一年の終わりを指す「年果つ(としはつ)」にあると見る方が正しいか。一年の行事を為し終えたことを「為果つ(しはつ)」と表現したとの説もある。万葉集には、一首だけ「師走」の歌が載るが、これは「十二月」を「しはす」と読む。
十二月には沫雪降ると知らぬかも梅の花咲く含めらずして 紀小鹿郎女
紋白蝶(もんしろちょう)・蝶々(てふてふ・ちょうちょう)・胡蝶(こちょう)・黄蝶(きちょう)
同じ蝶でも、「揚羽蝶」は夏の季語となる。蝶のことを新撰字鏡では「加波比良古(かわひらこ)」とし、亡くなった人の魂をも表した。川の近くでひらひら飛んでいたからこの名前がついたと言われ、蝶の古名とされるが、カワトンボとの混同ではないかとも疑われる。
因みに蝶は、奈良時代に唐から入ってきた言葉で、「てふ」と読んだ。万葉集に蝶の歌は載らないが、巻五の梅の歌の序文に1箇所だけ「新蝶」として出てくる。古今和歌集には、僧正遍照の和歌として
散りぬればのちはあくたになる花を思ひ知らずも惑ふてふかな
がある。
秋の風(あきのかぜ)・あきの風(あきのかぜ)・金風(きんぷう)・色なき風(いろなきかぜ)・爽籟(そうらい)
秋が五行説の金行にあたるので「金風」ともいう。その爽やかな響きを爽籟という。「飽き」に掛けて、男女間の愛情が冷めることにもたとえられる。万葉集には「秋風」を詠んだ歌が60首あまりあり、大伴家持は夫人を亡くしてひと月経って、
うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも
と歌った。芭蕉の句「物いへば~」は、半ば慣用句。