季語|桜(さくら)

晩春の季語 

花(はな)花見(はなみ)桜狩(さくらがり)花盛り(はなざかり)花吹雪(はなふぶき)夕桜(ゆうざくら)

桜の俳句と季語バラ科サクラ属の落葉高木。現在では「花」と言えば、一般的には「桜」を指す。エドヒガンやヤマザクラは、古くから日本に自生していた。桜から派生した季語も非常に多く、桜の散り際に見られる「花吹雪」「花筏」、桜の咲くころの空を表現した「花曇」「養花天」、花見衣装の「花衣」など、枚挙に遑がない。
また、古くから歌にうたわれ、万葉集にも約40首の歌が載せられているが、梅の119首に比べると少ないことから、古代人が愛でた花は主に梅だったと言われる。紀貫之が古今集で「安積山の歌」とともに歌の父母とした王仁の

難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花

の「この花」は、その季節感から梅とされるが、これは「此の花」であり、高所に花をつける「木の花」とは異なるという考えもある。

皇祖の母神コノハナサクヤビメは、「サクヤ」から「サクラ」の語源にもなったとされる神で、富士山を祀る浅間大社に鎮座する。太宰治の「富嶽百景」で、「富士には月見草がよく似合う」と謳われるが、これは、富士でかぐや姫の遺した不死の薬を焼いたとされる竹取物語を参考にしたもので、本来の富士の姿は桜である。

また、太古より日本にはサガミ信仰という、稲の神霊「サガミ」が桜の木に宿るという信仰があり、山に入って花見を行いその年の豊穣を祈っていたという説がある。これを基に、「サ神」が宿る神座(クラ)を「サクラ」とする語源説もある。いずれにせよ、桜は太古より特別な花だったことから、多くの名歌が生まれている。

世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし  在原業平「古今和歌集」

ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ  紀友則「古今和歌集」

花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに  小野小町「古今和歌集」

願はくは花の下にて春死なんそのきさらぎの望月のころ  西行法師「続古今和歌集」

なお、弘仁2年(811年)に地主神社を訪れた嵯峨天皇は、「御車返しの桜」とも呼ばれるようになった桜に惚れ、これを機に、「梅」と「桜」の地位が逆転し、梅よりも桜が愛でられるようになったともいう。

▶ 関連季語 八重桜(春)
▶ 関連季語 枝垂桜(春)
▶ 関連季語 山桜(春)
▶ 関連季語 初桜(春)
▶ 関連季語 寒桜(冬)

【桜の俳句】

さまざまのこと思い出す桜かな  松尾芭蕉
世の中は三日見ぬ間に桜かな  大島蓼太

▶ 春の季語になった花 見頃と名所
▶ 俳句の季節「木の花は梅か桜か」

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季語|梅(うめ)

初春の季語 

白梅(しらうめ・はくばい)紅梅(こうばい)梅が香(うめがか)・春告草(はるつげぐさ)・風待草(かぜまちぐさ)・匂草(においぐさ)・花の兄(はなのあに)・好文木(こうぶんぼく)

梅の花バラ科サクラ属の落葉高木。梅の実は夏の季語になる。中国原産で、既に弥生時代の遺跡から梅の種子が見つかっているが、縄文時代の遺跡からは未検出。春一番に咲くことから、花の兄とも呼ばれる。拾遺和歌集の菅原道真公の歌は、梅をうたったものとして最も有名。

東風吹かば匂ひおこせよ梅の花主なしとて春を忘るな

木の花(このはな)との呼び名もあるが、古来、桜と梅のあいだで論争がある。コノハナサクヤビメを祀る神社に京都の梅宮大社があり、その関係性が注目されるが、埋立地上にある宮として「うめみや」の名があるとの説もあり、「コノハナ=梅」の裏付けとはならない。コノハナサクヤビメが皇孫を生んだこと(ウム)から「ウメ」に関連付ける説もあるが、これも一般的ではない。梅の語源は中国語の「梅(メイ)」の転訛にあるのではないかと言われている。
ただ、万葉集には既に「うめ」として登場し、桜の3倍、119首も歌われている。この中には、天平2年の正月に大伴旅人邸の新年会で歌われた32首が含まれており、梅を歌うことがこの時代の流行だったことも伺われる。

【梅の俳句】

梅一輪一輪ほどのあたたかさ  服部嵐雪
梅が香にのっと日の出る山路かな  松尾芭蕉

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|祭(まつり)

三夏の季語 

祭笛(まつりぶえ)神祭(かみまつり・かんまつり)・夏祭(なつまつり)・神輿(みこし)

祭の俳句と季語単に「祭」といった場合は夏の季語となる。神を「祀る」ことからきており、「奉る」と同源だと考えられている。また、「まつらう」に語源があるという説もあり、こちらは、神に順い奉仕することを指す。

【祭の俳句】

象潟や料理何くふ神祭  河合曾良
神田川祭の中をながれけり  久保田万太郎

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季語|野分(のわき)

仲秋の季語 野分

颱風(たいふう)台風(たいふう)

野分の俳句と季語東経100°から180°までの北半球に発生する、最大風速17.2m/s以上の強い低気圧を台風という。その中心は「台風の目」と言われるが、下降気流となり、晴れ渡っている。
古くは、風が野の草を吹き分けるところから、野分(のわき、のわけ)と呼んだ。源氏物語二十八帖「野分」には、夕霧の幼い恋が歌われている。

風騒ぎむら雲まがふ夕べにも忘るる間なく忘られぬ君

台風の語源は、台湾や中国福建省の「大風」にあるという説が有力。それがヨーロッパで「typhoon」となり、漢字圏に逆輸入されて「颱風」となったと言われる。

【野分の俳句】

一期はゆめ野分の鳥のただ狂へ  後藤綾子
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな  松尾芭蕉

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季語|紫陽花(あじさい)

仲夏の季語 紫陽花

七変化(しちへんげ)手毬花(てまりばな)額の花(がくのはな)

紫陽花の俳句と季語アジサイ科アジサイ属。日本に自生するガクアジサイが、アジサイの原種。梅雨時に最も映える植物であり、夏の季語となる。
七変化・手毬花の別名もあるが、手毬花は、レンプクソウ科ガマズミ属の「オオデマリ」の別名でもあり、こちらも夏の季語となる。オオデマリは、白い紫陽花のような姿をしている。
額の花は、紫陽花の原種であるガクアジサイのことで、小さな花の周りを額縁のように装飾花が囲んでいる。

紫陽花で一般的な「手まり咲き」のものは、ヨーロッパで品種改良されたセイヨウアジサイ。萼が発達した装飾花を持ち、花と呼ぶ部位は通常の花と異なる。万葉集にはすでに「あじさい」として登場し、

言問はぬ木すら紫陽花諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり  大伴家持

紫陽花の八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ  橘諸兄

の2首が見える。
語源は、藍色が集まったものを意味する「あづさい(集真藍)」にあるとする説がある。「紫陽花」は、白居易が別の花に付けた名で、平安時代の学者源順がこの漢字をあてたことから、誤って広まったと言われている。シーボルトは「日本植物誌」の中で「オタクサ」と命名したが、これは、彼の日本人妻であるお滝さんへの愛情が絡むと考えられている。

6月6日は、紫陽花の日とされ、玄関にアジサイの花を逆さ吊りすると、魔除け効果があるとか。

【紫陽花の俳句】

あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒  岩間乙二

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|色鳥(いろどり)

三秋の季語 色鳥

色鳥の俳句と季語秋に渡って来る羽の色の美しい小鳥。また、秋に渡ってくる「色々な鳥」の意ともいう。
俳諧歳時記栞草(1851年)にも、秋之部八月に分類され、「いろいろ秋わたる小鳥をいふ」とある。

▶ 関連季語 小鳥(秋)

【色鳥の俳句】

色鳥のわたりあうたり旅やどり  斯波園女
色鳥の残してゆきし羽根一つ  今井つる女

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季語|初松籟(はつしょうらい)

新春の季語 初松籟

初松風(はつまつかぜ)

初松籟の俳句と季語松の梢に吹く風や、その音を松籟という。富安風生の昭和15年の第3句集に「松籟」がある。

【初松籟の俳句】

有明山初松風をおろしけり  上田五千石

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季語|たんぽぽ

仲春の季語 たんぽぽ

蒲公英(たんぽぽ)・鼓草(つづみぐさ)

たんぽぽの俳句と季語キク科タンポポ属。在来種は外来種(セイヨウタンポポ)に比べ、背が低く、種の数が少ない。セイヨウタンポポは開花期間が長く、夏場でも見られる。

タンポポの名は、別名を鼓草と呼ぶことから、鼓を意味する小児語であったタンポポが使われるようになった。元はフチナ(藤菜)、タナ(田菜)などと呼ばれていたらしい。英語名の dandelion はフランス語の dent-de-lion に由来し、ライオンの牙を意味する。

【たんぽぽの俳句】

たんぽぽの花の仔細に着陸す  稲畑汀子
たんぽぽや長江濁るとこしなへ  山口青邨

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|凩(こがらし)

初冬の季語 

木枯らし(こがらし)木枯(こがらし)

凩の俳句と季語初冬の寒風は、木々をも枯らすと言われる。元禄3年(1690年)「新撰都曲」に載った「木枯の果はありけり海の音」は評判を呼び、池西言水は「木枯の言水」と呼ばれている。なお、この句の「海」は琵琶湖、「木枯」は比叡颪である。この句から派生したと見られる、山口誓子の「海に出て木枯らし帰るところなし」も秀句として知られる。

【凩の俳句】

木枯の果はありけり海の音  池西言水
海に出て木枯らし帰るところなし  山口誓子

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季語|秋の暮(あきのくれ)

晩秋の季語 秋の暮

暮秋(ぼしゅう)暮の秋(くれのあき)・秋暮る(あきくれる)・晩秋(ばんしゅう)

秋の暮の季語と俳句冬への移行も、秋の暮れ時をも指す秋の暮。新古今和歌集の「三夕の歌」は有名だけれども、それに先立つ後拾遺集に載る良暹法師の歌は、小倉百人一首70番。

淋しさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋のゆふぐれ

【秋の暮の俳句】

秋の暮水のやうなる酒二合  村上鬼城
この道や行人なしに秋の暮  松尾芭蕉

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