昼の虫なに読むつもりなりしかな 橋本夜叉 季法の世や在家のばせを花が咲く 小林一茶 季虫売りのさゝやかながら絵行燈 内藤十夜 季月落ちてさみしくなりぬ虫送り 馬場移山 季うたゝ寝のさめて火もなし茶立虫 高田蝶衣 季素枯れ鳴く虫に土蔵の白かりき 諏訪悠生子 季残る虫いくたび地震の弾む夜ぞ 橋本夜叉 季七草やまこと飢えたる日の記憶 諏訪悠生子 季ゆく水の跡や片寄る菱の花 天野桃隣 季はたはたはわぎもが肩を越えゆけり 山口誓子 季いなご取りの顔細長き夕となりぬ 林冬城 季放屁虫かなしき刹那刹那かな 川端茅舎 季火を襲ふ浮塵子こぼれぬ本の上 贄川他石 季芋虫の雨を聴き居る葉裏かな 尾崎紅葉 季芋虫は芋のそよぎに見えにけり 炭太祇 季秋蛙まひるの風にまぎれけり 吉野静人 季蛇穴に入るや冷たく光る石 徳永天魚 季秋蚕飼ふ家のうしろを岨の径 竹内南蛮寺 季秋の繭しらじら枯れてもがれけり 飯田蛇笏 季片隅にかたまる秋の金魚かな 渋木三思 季佛壇に電球の買ひ置き花慈姑 宮坂静生 季鬼怒の瀬の波にのる鮭突きにけり 大和田寥水 季よごれたる大漁旗や鮭颪 小野寺仙秋 季秋鮎や宿も古る千曲川 水原秋桜子 季ひらひらと鰈もちさし沙魚の竿 籾山梓月 季鯊釣や不二暮れそめて手を洗ふ 水原秋桜子 季薄濁り来し上潮やふるせ釣 羽村野石 季鰡の飛ぶ夕潮の真ツ平かな 河東碧梧桐 季川中の石に草なき鰍かな 徳山青星 季鯖雲や乾ききつたる岩の群 有働亨 季どうだんに秋芽のたちしうすぐもり 星野麥丘人 季ふと咲いて冷雨にあひぬ秋の薔薇 山本湖南 季祭来る秋果に雨の降りいでぬ 角田雪弥 季木の実降る伽藍のまへの日向かな 田島柏葉 季木の実独楽まはり狂ひて横たはり 海上新多浪 季しろじろと湖はさわげり栗拾ふ 横山白虹 季病閑に過ぐる月日や吊し柿 伊藤柏翠 季甘干に軒も余さず詩仙堂 松瀬青々 季干柿の粉を吹く風の北となる 梅田久子 季梨青し我屋に廂なかりけり 村山古郷 季仮住みや棗にいつも風吹いて 細見綾子 季海の鳥来て木隠りぬ朱欒の樹 石田波郷 季文旦の頭にあたる庭掃除 都外川南嶽 季九年母や我孫子も雪となりにけり 石田波郷 季九年母や沼へ坂なす我孫子町 横手艸雨 季仏手柑や土を去る事遠からず 三宅嘯山 季をさな子はさびしさ知らね椎拾ふ 滝春一 季樫の実の落ちて馳け寄る鶏三羽 村上鬼城 季日をはじく実は銀鈴のあふちかな 若林いち子 季橋白く栴檀の実の多きところ 中村草田男 季あさがほのはつのつぼみや原爆忌 久保田万太郎 季枸杞の実や石積む岸の滑川 石塚友二 季細道のたそがれ淋し枳殻の実 山田秋灯 季月の蒸れからたちの実を金に染め 高田鬼仏 季桐の実や母ゐまさねばとほき郷 小松崎爽青 季椋鳥のこぼして椋の実なりける 岸風三樓 季事無げに椿実りて居たりけり 柳川春葉 季手にのせて火だねのごとし一位の実 飴山實 季藤は実を垂らし山の日ここに消ゆ 木村蕪城 季茨の実見え来る岸に船を著け 深川正一郎 季むくろじの落ちて人来ず山の寺 成松丘風 季夕風やさいかちの実を吹き鳴らす 石井露月 季秋の戸の倒れしままに茱萸熟るゝ 尾添静由 季山椒摘む愚痴はひとりの刻に吐き 玉川行野 季万年青の実蝸廬の年浪流れけり 飯田蛇笏 季花木槿旅館といふもたゞの家 沢井山帰来 季常夏に切り割る川原川原かな 小林一茶 季露の世や露のなでしこ小なでしこ 小林一茶 季なでしこや人をたのまぬ世すごしに 中村汀女 季梅もどき折るや念珠をかけながら 与謝蕪村 季木置場のぬくき日ざしや梅嫌 北原冬村 季下刈りの男の夕日の蔓もどき 飯田龍太 季肌寒し竹伐る山のうす紅葉 野沢凡兆 季噴煙の燦たり樹々はいま黄ばむ 石田波郷 季櫨紅葉ただうとうととねむりたし 加藤楸邨 季日の当る漆紅葉や山半ば 山口花笠 季青天に一枚早し柿紅葉 近藤不彩 季一葉地に還る夕焼音もなし 塩田紅果 季おしろいは妹のものよ俗な花 正岡子規 季草花や嵯峨は小径ぞなつかしき 村山葵郷 季山は暮れ野は黄昏の薄哉 与謝蕪村 季落柿舎の道細ければ尾花かな 戸羽山碧雲子 季芒散る水のさざ浪月照りそめ 鈴木義州 季時雨馳せうこんの花のさかりなる 大野林火 季相逢うて相別るゝも男郎花 高浜虚子 季雨ながら朝日まばゆし秋海棠 水原秋桜子 季葉がくりに現はれし実のさねかづら 高浜虚子 季石山に篠なす雨や鳥頭 高橋貞俊 季藪中の墓や折りさす鳥かぶと 村上蛃魚 季しびとばな生けて花買ふこともなし 日野草城 季花たばこ空に明日あり便りまつ 角川源義 季わが旅路たばこの花に潮ぐもり 阿波野青畝 季みぞはぎや墓とも言へず石二つ 八木ぎし彦 季みぞ萩のちる哀れさも見馴れたり 大貫巴水 季関門の跡ぞ鈴鹿の鬼薊 川端柳生 季秋薊千種の上に倒れけり 前田普羅 季長雨の降るだけ降るや赤のまま 中村汀女 季ななかまど鷹がこゑ曳き落ちゆけり 小林黒石礁 季濃竜胆ひたせる渓に櫛梳り 杉田久女 季藪からし根笹の雨に枯れつくす 宮下塔山 季
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