山笑ふ大声の僧ひとり棲み 茨木和生 季蜃気楼今来た道を戻りけり 武藤尚樹 季巨き船出でゆき蜃気楼となる 山口誓子 季蜃気楼将棋倒しに消えにけり 三村純也 季白濁の春嶺霞に押し並ぶ 岡田日郎 季赤い鳥青い鳥ゐる春の山 甲斐遊糸 季ととのはぬ春の山道なぜ愉し 高瀬哲夫 季是からも未だ幾かへりまつの花 小林一茶(真砂古) 季露の世は露の世ながらさりながら 小林一茶 季せみなくやつくづく赤い風車 小林一茶 季陽炎や目につきまとふわらひ顔 小林一茶 季小言いふ相手もあらばけふの月 小林一茶 季あやとりのこんがらかりて春の川 たまきみのる 季笹船のほどけ流るる春の川 内山ギン 季かよひ妻歌仙に似たり春の川 加藤郁乎 季たけなはの雪となりける春野かな 山内将史 季東山より春の水流れ来る 中村十朗 季フラスコのかたちに在りぬ春の水 内田美紗 季加賀は美し百萬石の春の水 渡辺恭子 季わらはべの両足に水ぬるみけり 綾部仁喜 季水ぬるむ岸に大きな父の影 原裕 季水温む出勤したくないといふ 荒井八雪 季春の野に動けば見ゆる母校かな 落合水尾 季春の野や一輛電車風に舞ふ 白木啓市 季鵯や世の囀りも石の花 上島鬼貫 季によつぽりと秋の空なる不尽の山 上島鬼貫(大悟物狂) 季●水無月や風に吹かれに故郷へ 上島鬼貫 季あをぞらに日がひとつある干潟かな 細川加賀 季引き潮にひかれて人のゆく干潟 鳥居三朗 季まん中に立たせられたる干潟かな 千葉皓史 季遍照の夕日春田もその中に 廣瀬直人 季数珠もちて遠き春田の家へゆく 大峯あきら 季藪みちの向うの春田明かりかな 堤高嶺 季春濤にたうたうたらり扇落つ 秦夕美 季苗代にぽつと灯りし婚の家 長田等 季日輪のふつと滴る雪解村 細井みち 季雪解谷きのふの旅の人とあふ 矢島渚男 季へなへなのボールを抱いて雪解野へ 三森鉄治 季春の海より易々とかもめ翔つ 津田清子 季金星のひかり新し苗代田 奥坂まや 季谷越えのゴンドラ映す苗代田 升本行洋 季一枚の餅のごとくに雪残る 川端茅舎 季行きつきしところより春の波返す 矢島渚男 季人恋ふは春泥の坂ゆくごとし 秦夕美 季春泥がシューズの中で乾きをり 麻里伊 季渓へとぶ猿のみえて大雪崩 飯野燦雨 季ひとりだけ雪崩の音の聞こえしと 猪村直樹 季木流しをしばし雪崩がせきとめつ 沢田緑生 季遠国の仏見にゆく春の泥 黛執 季残雪を伽藍の蔭にのみ許す 橋本美代子 季残雪のそれも名残や命愛し 島田牙城 季ぜんまいののの字ばかりの寂光土 川端茅舎(華厳) 季どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎(華厳) 季約束の寒の土筆を煮て下さい 川端茅舎(白痴) 季●桜鯛かなしき目玉くはれけり 川端茅舎 季日天子寒のつくしのかなしさに 川端茅舎(白痴) 季寒のつくしたづねて九十九谷かな 川端茅舎(白痴) 季寒の野のつくしをかほどつまれたり 川端茅舎(白痴) 季寒の野につくしつみますおんすがた 川端茅舎(白痴) 季蜂の子の如くに寒のつくづくし 川端茅舎(白痴) 季寒のつくし法悦は舌頭に乗り 川端茅舎(白痴) 季寒のつくしたうべて風雅菩薩かな 川端茅舎(白痴) 季母の手を離れて駈けて入学児 村上沙央 季誰も見ず天水桶のうすごほり 永島靖子 季流氷の中に流氷立つが見ゆ 山崎秋穂 季太陽の没る所まで流氷群 三好曲 季凧日和流氷湾に押し入りつ 沢田緑生 季わが声もまじりて卒業歌は高し 寺山修司 季校塔に鳩多き日や卒業す 中村草田男 季石蹴つて石光らしむ卒業期 林翔 季入学の吾子人前に押し出だす 石川桂郎 季入学の日の雀らよ妻と謝す 岸田稚魚 季春ショール逢はずじまひにたたみけり 小畑八重 季汀歩むは放浪に似て春ショール 東野礼子 季遠景のごとくに揺るる春氷 小宅容義 季たらちねの母が溶けゆく春氷 綾部仁喜 季はなびらのごときをたたみ春日傘 片山由美子 季旅先の用意のおしやれ春日傘 稲畑汀子 季春日傘大きな船の着くを待つ 細川加賀 季遠足のおくれ走りてつながりし 高浜虚子 季遠足の女教師の手に触れたがる 山口誓子 季遠足の声を攫ひて電車去る 水上陽三 季廻転扉出て春服の吹かれけり 舘岡沙緻 季春セーター胸のあたりのたよりなき 小林篤子 季花衣脱ぐ間のなくて厨ごと 稲葉敦子 季花衣縫ひし熱かも知れず咳く 神尾久美子 季ぬぎをへて衣桁にとほき花ごろも 鷹羽狩行 季萬緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男(火の島) 季●降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男(長子) 季●玫瑰や今も沖には未来あり 中村草田男(長子) 季はたはたや退路絶たれて道初まる 中村草田男 季田楽に舌焼く宵のシュトラウス 石田波郷 季菜飯食ふ杜国はたぶん丸顔か 松村武雄 季箸置いて菜飯の色を賞でにけり 江國滋酔郎 季母訪へば母が菜飯を炊きくれぬ 星野麥丘人 季墨堤に雨の明るし桜餅 下山宏子 季わが妻に永き青春桜餅 沢木欣一 季桜餅子が寝て夫婦水入らず 西宮舞 季掌中の珠とまるめて蓬餅 富安風生 季アパートがつひの棲家か木の芽和 鈴木真砂女 季
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