釣りあげて魚にもつばさ白南風 鷹羽狩行 季梅雨あけて奥の山より一つ蝉 前田普羅 季梅雨明けのためらひゐるや病また 松本たかし 季鉄の手に紙箱痿える雨期永し 西東三鬼 季雨季をはる垂木に鎌をさせしまゝ 加倉井秋を 季地下鉄にかすかな峠ありて夏至 正木ゆう子 季オリーヴ葉カレーに煮込み酷暑なる 細見綾子 季母の髪極暑まぶしき月照らす 飯田龍太 季三伏の琴きんきんと鳴らしけり 長谷川かな女 季土用東風船玄海にかかりけり 正岡子規 季山女釣晩涼の灯を焚きゐたり 水原秋桜子 季夏暁の子供よ土に馬描き 西東三鬼 季夏の暁安全地帯そこここに 秋元不死男 季四方から青みて夏の夜明哉 正岡子規 季夏の朝よく歩きしと戻り来し 星野立子 季病床に鉛筆失せぬ夏の暮 石田波郷 季ガソリンと街に描く灯や夜半の夏 中村汀女 季晩夏光バットの箱に詩をしるす 中村草田男 季終車駅に酔客となり夏惜しむ 能村登四郎 季夏終る四方山の事知らずして 相生垣瓜人 季秋待や径ゆきもどり日もすがら 室生犀星 季熱風に炎え落つる葉を眼にぞ追ふ 臼田亞浪 季夏風やこときれし児に枕蟵 飯田蛇笏 季夏天翔ぶ何かを街に置き忘れ 横山白虹 季このをとこ夏雲たてば憤怒る 富沢赤黄男 季夏雲の下に砂金の町遠し 高野素十 季海ゆ湧く夏雲へ押す一輪車 佐藤南山寺 季河童子にのしかかりたる入道雲 石原舟月 季焼岳の焼けてをるなり日の盛り 大森桐明 季炎熱のまま夜が来る流れぬ河 榎本冬一郎 季朝凪のいかなご舟に波送る 殿村菟絲子 季夕凪に乳啣ませてゐたるかな 久米三汀 季思ふこと言はじと決めし夏の星 市川一男 季日もすがら卯の花腐し茶を淹るゝ 星野立子 季頼政も鵺も昔の宿帳に 高浜虚子 季音より止むスコール人が歩き出す 橋本風車 季喜雨の納屋大闇小闇濃くなりしよ 香西照雄 季慈雨到る絶えて久しき戸樋奏で 高浜虚子 季雹晴れて豁然とある山河かな 村上鬼城 季照り霞めども舟上に浪散る日 村山古郷 季露涼し夜のかげ深き鳳凰樹 船田松葉女 季夏の露やうやく豆の青実垂る 飯田蛇笏 季うつ伏して山角這ひぬ夏の霧 長谷川かな女 季夏霧やにほひ濃くして高野山 山田悦子 季晩霜や生ける屍が妻を叱る 日野草城 季五月富士夫病床をいつ捨てむ 石田あき子 季雪解富士新幹線の厚硝子 遠山弘子 季刻々の大赤富士となりゐつつ 岸田稚魚 季茶屋の裏紺青にして夏の川 阿波野青畝 季洗ひ髪の糸引く先や夏の水 長谷川秋子 季冷水を湛ふ水甕の底にまで 山口誓子 季さされ蟹足はひのぼる清水かな 松尾芭蕉 季石工の鑿ひやしたる清水かな 与謝蕪村 季岩清水霧立つてゐる間かな 大須賀乙字 季大敷をしづめてあをし夏の潮 富安風生 季大いなる青峯の下最上川 山口誓子 季雲海に嶽のかげおく月夜かな 河野南畦 季雪渓と思ふあたりも夜の闇 山口波津女 季お花畑岩に棲む鳥来て隠る 堀口星眠 季内職かかへ労働祭の溝をとぶ 町山直由 季憲法記念日裏町長屋見透しに 石川桂郎 季五月五日わが青き空青き山 中塚太々夫 季武者人形青山軒に聳え立ち 椎名亮 季舟に見える膳所の城下の幟かな 正岡子規 季菖蒲葺く庇の下を通ひ舟 高野素十 季菖蒲湯の香のしみし手の厨ごと 中村汀女 季木雫の吹き入る窓や菖蒲風呂 戸沢撲天鵬 季竹酔日胡麻を煎る香の中にあり 能村登四郎 季煌々と夏場所終りまた老ゆる 秋元不死男 季風匂ひ人匂ひ五月場所大入り 菅裸馬 季郵便配るこの身が時計の時の日よ 磯貝碧蹄館 季雨少し降りて冷き巴里祭 松井草一路 季セルを着て村にひとつの店の前 飯田龍太 季地下鉄の青きシートや単物 中村汀女 季単衣きてただの一個のわれなりし 細木芒角星 季花楓なほ稚なき女のありて 山口誓子 季パイプ椅子鉄の灰皿棕櫚の花 木下夕爾 季柿の花石燈籠に落ちてとぶ 高浜虚子 季夾竹桃しんかんたるに人をにくむ 加藤楸邨 季又しても槐の花のゆらぎかな 岡井省二 季千年の樗の花に棲み古りぬ 三橋鷹女 季栴檀の花のさかりの睡き昼 日野草城 季まぶしかる海に垣して黐の花 森澄雄 季花柘榴大雨に明けて白き空 内田百閒 季恋難し石榴の花は実の先に 秋元不死男 季ゆるやかに着ても浴衣の折目かな 大槻紀奴夫 季水のごとき夜を愉しめり白上布 石原舟月 季帷子にあたゝまりまつ日の出かな 内藤丈草 季夏服や海の光の貝ぼたん 野村喜舟 季麻服のおのが白さに眩み行く 篠原梵 季椎の花漆黒の夜の鉄橋に 太田鴻村 季橡の花きつと最後の夕日さす 飯島晴子 季花芭蕉ゆふべはあをき狭斜の灯 大野きくほ 季芭蕉の花めくれ落ちたる水の上 岡井省二 季仙人掌の花に近づく月と星 木村要一郎 季船着くと花仙人掌のかげに湯女 向野楠葉 季みちのくのたのしき友よ花水木 角川源義 季一つづつ花の夜明けの花みづき 加藤楸邨 季家裏に廻る夕日や花みづき 草間時彦 季かはたれの水木の花のうすなさけ 松本光太郎 季
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