俳句に詠める寿司メニュー(入荷待多数)
鮓(すし)は、夏の季語である。「なれずし」が中心の上方では「鮓」、握り鮨が中心の江戸では「鮨」が使われる傾向にあった。「なれずし」が夏につくられ食されたことで、「すし」自体は夏の季語となっている。
【春が旬の寿司種】
【夏が旬の寿司種】
たこ きす えび かわはぎ とりがい すずき はも いか とびうお ほたて いさき あわび あゆ あなご あじ
【秋が旬の寿司種】
かつお さば さんま このしろ さけ たちうお いくら いわし
【冬が旬の寿司種】
【日本全国銘酒一覧】
ビールや焼酎もいいが、寿司の味を引き立てるのは、やっぱり日本酒。しかし、幅広い味わいをもつ日本酒は、その選択が難しい。ここに、日本全国の銘酒を調査し、間違いのない日本酒を厳選。寿司は美味い日本酒とともに!
春が旬の寿司ネタ|赤貝(あかがい)
市場で「本玉」と呼ばれる赤貝は、浅海の砂泥に潜って生活しており、比較的簡単に採取できるが、ほとんどのものが韓国や中国から輸入されている。しかし、新鮮な国産ものに比べると差は歴然としており、宮城県の「閖上赤貝(ゆりあげあかがい)」は超高級食材となっている。美味なのは12月から3月に出回るものであるが、特に春先のものが美味い。夏の産卵期には貝毒を発生し、それ以降は身がやせて不味くなる。
赤貝|三春の季語
古事記にも登場するほど、日本人には古くから馴染みがある貝。「蚶」とも書く。
赤貝のひもに終りし夜の鮓 森澄雄
夏が旬の寿司ネタ|鯵(あじ)
単に「鯵」といった場合は、マアジを指すことが多い。マアジは回遊性のものと瀬つきのものがある。回遊性のものは地方によって旬の季節に違いが生じるが、概ね春から夏の産卵前のものが旨い。瀬つきの鯵の代表は、大分県のブランド魚「関アジ」であるが、旬は3月から10月である。マアジのほかに、最高級のアジとも言われる「シマアジ」があるが、こちらは体長1mにもなる大型の鯵で、旬は6月から8月である。
鯵|三夏の季語
味が良いことから「アジ」の名がついたとされる。
活鯵や江戸潮近き昼の月 小林一茶
秋鯵|三秋の季語
夏の鯵よりも秋の鯵の方が旨いと言う者もいて「秋鯵」も季語になっている。因みに「秋味」は鮭のことである。
秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ 杉田久女
夏が旬の寿司ネタ|穴子(あなご)
アナゴ科の魚は数あるが、「穴子」と言った場合には「マアナゴ」を指す。穴子はさっぱりとした味が好まれる傾向にあり、旬は6月から8月で、「夏穴子」と呼ばれ、脂が乗らない。脂が乗るのは10月から12月頃の穴子で、鰻のような味わいがあり、こちらの方を好む者もいる。近年では対馬のブランド「黄金穴子」が有名であるが、江戸前穴子も健在である。春の珍味、穴子の稚魚「のれそれ」を提供する店もある。
穴子|三夏の季語
砂泥に穴を掘り、昼間は頭を穴の中から出しているために、「穴子」の名がある。
ひらかれて穴子は長き影失ふ 上村占魚
夏が旬の寿司ネタ|鮎(あゆ)
一年で一生を終える鮎は年魚や香魚とも呼ばれ、秋に川を下って河口域で産卵し、海で成長した後に川を遡上する。稚魚が育つ晩秋から春にかけては禁漁となり、初夏に鮎漁が解禁されると、各地の川に釣り客が押し寄せる。7月の若鮎は、瑞々しくて特に美味いが、川魚のために生食にすることは稀である。寿司ではなれずしが有名で、それを「鮎鮨」といって夏の季語にもなっている。その他、炙りや押し寿司にしたものも美味い。
若鮎|晩春の季語
「若鮎」は、清々しい若さの比喩ともなっている。3月頃から川を遡上する。
若鮎の二手になりて上りけり 正岡子規
鮎|三夏の季語
古くから日本人になじみのある魚で、神功皇后は占いに用いた。万葉集にも多く歌われている。
四万十川の水の匂の鮎届く 藤川澄子
落鮎|三秋の季語
川を下って産卵地である河口へと向かう鮎のことで、その体色から「錆鮎(さびあゆ)」ともいう。
落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり 前田普羅
夏が旬の寿司ネタ|鮑(あわび)
日本で食される鮑にクロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビ・エゾアワビがある。クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビの旬は夏であり、エゾアワビは冬。種類によって食味に若干の違いがあり、メガイアワビの身は柔らかい。寿司では、コリコリした食感が際立つクロアワビが人気。因みに鮑を雄貝・雌貝に分け、雄貝をクロアワビ、雌貝をアカアワビとしたりするが、生殖器で区別しているわけではない。
鮑|三夏の季語
万葉集にも歌われ、片思いの洒落言葉「磯の鮑の片想い」を生んだ。
真中に鮑が坐る夏料理 鈴木真砂女
夏が旬の寿司ネタ|烏賊(いか)
烏賊といっても、食されるものはコウイカ・ヤリイカ・ケンサキイカ・アオリイカ・スルメイカ・ホタルイカなど。種類や大きさによって食味に大きな違いがあり、人気のアオリイカは甘み、コウイカは食感に特徴がある。旬は、コウイカやヤリイカは冬から春、アオリイカやホタルイカは春から夏。最高級とも言われる呼子の烏賊はケンサキイカに属し、夏が旬である。また秋には、コウイカなどの生まれたての「新イカ」も旨い。
花烏賊|晩春の季語
主に、桜が咲くころ産卵のために沿岸にやってくるコウイカを指し、桜烏賊ともいう。
花烏賊の甲羅を舟のごと浮かし 長谷川かな女
蛍烏賊|晩春の季語
「富山湾の神秘」と呼ばれる春の名物。産卵のために沿岸に押し寄せてくるもので、ほとんどは雌。
さびしさが焼きころがして螢烏賊 能村登四郎
烏賊|三夏の季語
縄文時代から食されていたと考えられている烏賊。「真烏賊」とも呼ばれるスルメイカは、夏場に水揚げが最も多くなり、その漁火は夏の風物詩。
銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく 金子兜太
秋が旬の寿司ネタ|いくら
サケ科の魚の卵巣膜を取り除き、卵を1粒づつに分けたものを「いくら」と言い、特に鮭(シロザケ)のものを指す。海で水揚げされた鮭から採られる。冷凍などで、一年中食すことができるが、本物のイクラを食べるなら秋。北海道では9月下旬から10月中旬、三陸では10月から12月、新潟では10月下旬から11月下旬。時期が早いものは皮が柔らかく未熟で、筋子として流通するものが多く、遅くなるにつれて皮が厚くなる。
はららご|仲秋の季語
江戸時代から既に「鮞(はららご)」として歳時記に載っている。「いくら」は、ロシア語に語源がある。
産み捨てのはららごは散り四海波 三橋敏雄
夏が旬の寿司ネタ|いさき
スズキ目に属するイサキは、一年中食すことのできる磯魚の代表的なものである。白身の魚であり、産卵を控えた6月から7月に揚がるものが、脂が乗って旨い。特に梅雨時のいさきは、「麦わらいさき」「梅雨いさき」と呼ばれ、鯛よりも旨いとの声もあがる。天然物には豊後水道の「関いさき」や、長崎の「値賀咲(ちかさき)」などのブランド魚も存在する。体長は50センチに達するものもあり、サイズが大きいほど旨い。
いさき|三夏の季語
トサカのような背びれを持つところから漢字では「鶏魚」とも書く。
いさき食ふ海に六分の入陽かな 榎本好宏
秋が旬の寿司ネタ|鰯(いわし)
鰯は足がはやく、握りで提供できる店は限られる。ウルメイワシやカタクチイワシもあるが、主にマイワシが用いられる。12月頃から7月頃までが産卵期に当たり、産卵前の秋の鰯にはよく脂が乗っている。年中水揚げされるものの、漁獲量が最も多くなるのは梅雨の時期で、そのころの鰯を「入梅鰯」と呼んで、食味も悪くはない。「鰯鮨(いわしずし)」というものもあるが、これは糟漬の一種である。
鰯|三秋の季語
弱って腐りやすいために「よわし」と呼ばれ、「いわし」に転訛した。「鰯」は国字であるが、奈良時代には既に用いられている。
名月や鰯もうかぶ海の上 正岡子規
潤目鰯|晩冬の季語
大きな目が潤んでいるように見えるところから、「うるめ」。
火の色の透りそめたる潤目鰯かな 日野草城
冬が旬の寿司ネタ|鰻(うなぎ)
鰻の旬は夏ではない。むしろ、夏場はいちばん食味が落ちる。美味い鰻に、産卵のために川を下る秋の「落鰻」があるが、冬の「寒うなぎ」が最高だという声もある。冬眠に入るために泥に潜った頃の鰻は、体じゅうに栄養を蓄えていて、ひじょうに脂が乗っている。ちなみに海に棲む鰻を「青うなぎ」といい、特有の旨みと食感が珍重される。岡山の「青江うなぎ」が有名であるが、かつて「江戸前」と呼ばれた江戸の鰻も海にいた。
鰻|三夏の季語
宝暦年間においては、「江戸前」といえば「鰻」のこととされていた。
浅草の鰻をたべて暑かりし 臼田亞浪
土用鰻|晩夏の季語
かつて、夏に不人気だった鰻。平賀源内が、丑の日に「う」のつくものを食べると良いという伝承を利用し、「本日土用の丑の日」と大書して、夏場の鰻屋の窮状を救ったという。
遣り過す土用鰻といふものも 石塚友二
落鰻|晩秋の季語
落鰻は餌を食べないために釣ることができず、鰻簗で捕まえる。
落鰻落ちゆく蘆の無尽蔵 石田勝彦
春が旬の寿司ネタ|海胆(うに)
濃厚な味わいで高級とされる北海道産のバフンウニは、3月から4月が旬。それをも凌ぐ旨さといわれるエゾバフンウニは、7月から8月。淡白で上品な味わいのムラサキウニは黒ウニとも呼ばれ、西日本では3月から6月が旬である。生殖腺(精巣・卵巣)を食すが、通常は精巣と卵巣が混ざった状態で流通している。精巣ばかりを集めたものは高級品。バフンウニは濃黄、エゾバフンウニは橙色、ムラサキウニは淡黄色をしている。
雲丹|晩春の季語
殻付きのものは「海栗」、殻を外したものは「海胆」、加工品は「雲丹」と書く。夏の季語に分類されることもある。
ぬくめしに雲丹をぬり向きあつてゐる 種田山頭火
夏が旬の寿司ネタ|海老(えび)
海老と言っても多くの種類があるが、寿司といえばまずは「車海老」。近年は南洋での養殖が盛んで、冬によくみられるようになったが、天然物の旬は夏。大きなものは30センチを超えるが、あまりに大きいものは食味が落ちる。食感や甘みは、生よりも茹でた方が勝る。生で海老を楽しむなら、牡丹海老。富山海老がボタンエビの名で出回っているが、本物の牡丹海老は本州の太平洋側にのみ生息する貴重なもので、春が旬となる。
桜蝦|晩春の季語
本格的な漁が始まったのは近代に入ってからで、比較的新しい食材。春と秋が漁期であるが、桜色をしているために「桜蝦」の名がある。
桜えびすしに散らして今日ありぬ 細見綾子
車海老|三夏の季語
身を丸めた時に縞模様が車輪のように見えるところから車海老と呼ぶ。
朝顔や潮がしら跳ぶ車海老 水原秋桜子
伊勢海老|新春の季語
古くから伊勢名物で、縁起物である。冬場が旬である。
伊勢海老の月にふる髭煮らるると 加藤楸邨
秋が旬の寿司ネタ|鰹(かつお)
南洋に生まれた鰹は、黒潮に乗って北上し、初夏に鎌倉沖、初秋には三陸沖に達する。初物がもてはやされた文化の名残で、鰹といえば「初鰹」を連想しがちであるが、いちばん脂がのっているのは三陸沖に達した時のもの。親潮に乗って南下をはじめる時期のものでもあるので「戻り鰹」と呼ばれ、脂がよく乗っているので「トロ鰹」の別名もある。因みに、この頃の鰹の脂肪分は、初鰹の約10倍である。
初鰹|初夏の季語
「初物七十五日」といって初物を食べると75日命が延びるとされ、特に初鰹は珍重された。中でも鎌倉沖のものが珍重され、「女房子供を質に出してでも食え」と言われた。
目には青葉山ほととぎす初がつお 山口素堂
まな板に小判一枚初鰹 宝井其角
鰹|三夏の季語
身が堅いことから「かたうお」に語源があるとされる。古事記にはすでに記載され、神社建築にも鰹木としてその型が模されている。
鰹売いかなる人を酔はすらん 松尾芭蕉
秋鰹|三秋の季語
「戻り鰹」の季語もある秋鰹。その旨さは絶品であるが、「初鰹」の印象があまりに強いためか、俳句となるものは少ない。
はねるほど哀れなりけり秋鰹 椎本才麿
冬が旬の寿司ネタ|蟹(かに)
握りで食すなら、蟹の中でもズワイガニ。場所によって「松葉蟹」「越前蟹」などと呼ばれる。漁期は地方によって異なり、食材として人気のオスは、越前や山陰で11月6日から3月20日に解禁。安く流通するメスの漁期は1月10日までであるが、こちらの方が美味と言う者もいる。刺身で食すこともできるし、蟹味噌の軍艦巻も美味。主に北海道で獲れるタラバガニも寿司ネタとなるが、これは正式なカニではなく、ヤドカリの仲間。
蟹|三夏の季語
俳句で蟹といえば、横歩きをするもの。甲が赤いところから「甲丹」に語源があると考えられている。食材として人気の「わたり蟹」も夏の季語。
散る波の岩にすばやき小蟹かな 大利式子
ずわい蟹|三冬の季語
語源は、細い木の枝を指す古語「楚(すわえ)」にある。
大皿に越前蟹の畏まる 檜紀代
鱈場蟹|三冬の季語
近縁種には、秋の季語となるハナサキガニもある。「蟹工船」で知られる蟹である。
鱈場蟹おのが甲羅で煮られをり 長谷川櫂
夏が旬の寿司ネタ|皮剥(かわはぎ)
フグ目カワハギ科に分類される魚の一種で、淡白な食味が特徴の高級魚。同じカワハギ科にスリムな体型をしたウマヅラハギもあるが、やや食味に劣る。カワハギの最大の特徴は、「海のフォアグラ」とも呼ばれる肝にある。肝が大きくなる秋から冬は、肝にとられて身が痩せ気味となるため、握りにするなら6月から7月ころのものが美味い。肝を堪能するなら、肝や、身を肝和えにしたものを軍艦巻きにしてもらう。
皮剥|三夏の季語
調理する時に面白いように皮が剝げることから「皮剥」の名がついた。
うまづらかははぎ長き泣顔いかにせん 加藤楸邨
夏が旬の寿司ネタ|鱚(きす)
スズキ目スズキ亜目キス科の魚に、シロギスやアオギスなどがあるが、食味ではシロギスが勝り、「キス」と言えばほぼシロギスを指す。夏場が旬と言われるが、特に産卵前の6月のキスには上品な旨みがあって絶品である。そのまま握っても美味いが、酢締めや昆布締めの握りも捨てがたい。ただ、「疫病神除けに鱚を断って、船霊様に願を掛ける」という風習があり、江戸前寿司では敬遠されるネタでもある。
鱚|三夏の季語
素直で飾り気のないことを指す「きす」が語源で、魚を表す接尾語「ご」をつけて「きすご」と呼んでいた。
一片の蓼の葉あをし鱚にそへ 富安風生
秋が旬の寿司ネタ|鮗(このしろ)
コノシロは出世魚。「シンコ」⇒「コハダ」⇒「ナカズミ」⇒「コノシロ」と名を変える。コノシロの旬は冬であるが、寿司に好まれるのは夏のシンコや、秋に出てくるコハダである。これらは「光もの」の代表として知られ、酢締めにしたものは江戸前には欠かせない食材となっている。最も高値のつくシンコは、春に生まれたものが5センチほどにまで成長したもの。寿司ネタとして人気のコハダは、秋祭りに欠かせない。
このしろ|初秋の季語
武士は、腹開きにすることから「腹切魚」と呼び、「この城」に通じることからも、食べるのを避けた。
市場人に氷片ふられ透くこのしろ 古沢太穂
秋が旬の寿司ネタ|鮭(さけ)
秋味とも呼ばれる鮭(シロザケ)は、実は、餌も取らずに川を遡上しようとするため、秋の栄養状態は最悪。それよりも、アムール川で生まれて南下し、北海道沖を夏に回遊するシロザケは、時鮭(ときしらず)と呼ばれ、脂がのって旨い。さらに、アムール生まれの脂ののった若魚が、北海道生まれの親魚に混じり水揚げされることがあり、それを鮭児(けいじ)と呼んで珍重する。1万尾に1尾とも言われる鮭児の旬は、11月。
鮭|三秋の季語
かつては「鮏」の字があてられていたが、生臭いという意味があるために、明治時代に「鮭」が使われるようになった。秋の江戸では、千葉あたりで獲れたものを「初鮭」として珍重した。
初鮭の荷や銀さびの夜明け頃 溝口素丸
秋が旬の寿司ネタ|鯖(さば)
マサバには外洋を回遊するものと内海にすみ着くものがあり、ブランド魚として有名な「関鯖」は後者である。外洋性のものは、八戸沖で獲れるものが最も脂がのっているとされ、「戻りのサバ」として人気である。いずれも秋に入ってから旬を迎え、10月から12月にかけてのものが旨い。しめ鯖や炙り鯖を用いる握りや、鯖寿司やバッテラも親しまれている。衛生上の問題で、よほど新鮮で高品質なものでなければ刺身にしない。
鯖|三夏の季語
かつては北陸で夏によく釣れ、それを京に持ち込むために「鯖街道」もできた。鯖街道を行く鯖は「塩鯖」である。
朝市やまだ海色のさばをせる 角川春樹
秋鯖|三秋の季語
「秋鯖は嫁に食わすな」の慣用句もあり、旬の魚は、季節を冠して季語になった。
鮪より旬の秋鯖たうぶべし 鈴木真砂女
春が旬の寿司ネタ|鱵(さより)
トビウオの近縁種ではあるが、白身の高級魚とされる。全国の沿岸部で水揚げされ、秋くらいからよく目にする魚である。産卵前の3月から4月にかけてが特に旨い。秋に出回り始める小さなものは「鉛筆」と呼ぶが、さよりは大きなものの方が美味である。特に大きなものは「かんぬき」と呼び、珍重する。古くは酢締めにしたものが中心であったが、そのまま捌くと、除いた腹腔にあった苦みが、絶妙の旨みを演出する。
さより|三春の季語
見かけによらず腹黒い人を、「さよりのように腹黒い」という。
傷みやすい七十男とさより食ぶ 金子兜太
秋が旬の寿司ネタ|秋刀魚(さんま)
秋を代表する魚である秋刀魚。日本近海を回遊しているものは、オホーツク海から南下してくる9月から10月くらいのものが最も脂が乗って旨くなる。今では冷凍ものも出回り、一年中食すことができるが、やはり秋の秋刀魚は格別。ブランド秋刀魚づくりも盛んで、「青刀さんま」「一本立ち歯舞さんま」「大黒さんま」など、北海道ものを中心に評価を得ている。押し寿司にした「秋刀魚寿司」も美味いが、新鮮ならばぜひ握りで。
秋刀魚|晩秋の季語
落語の「目黒のさんま」にもなった庶民の魚。俳句ではよく焼かれる。
夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ 川端茅舎
春が旬の寿司ネタ|蝦蛄(しゃこ)
海老に似て、種類は全く異なる口脚目。かつては東京湾の名物だったが、現在では漁獲量は少なく、有明海・伊勢湾・瀬戸内海・小樽のものが多い。通常は茹でるが、新鮮なものは生で提供することもある。旨いと言われるのは、産卵期の雌で、その卵巣はカツブシと呼ばれて、コクのある旨みが珍重される。よって、旬は3月から5月頃となる。ただし、脱皮をして冬に入った頃の蝦蛄もまた、身がしまって旨い。
蝦蛄|三夏の季語
茹でた時の色が石楠花に似ていることから、江戸時代にはシャクナゲと呼ばれていた。石楠花を指す「石花(シャクカ)」が転訛して、「シャコ」に。
釜茹での蝦蛄に夕映始まれり 高沢良一
夏が旬の寿司ネタ|鱸(すずき)
出世魚で、「コッパ」⇒「セイゴ」⇒「フッコ」⇒「スズキ」と名を変え、スズキは凡そ30センチ以上のものになる。河口付近に多く、淡水域まで遡上するものがある。産卵に入る前の秋に釣りやすいが、旬は夏場で、6月から8月のよく肥えたものが旨い。沖縄を除く全国で獲れ、近年では東京湾のスズキも見直されており、千葉県船橋市の「江戸前船橋瞬〆すずき」はブランド魚としての地位も築いている。
鱸|三秋の季語
万葉集にも歌われた鱸。江戸時代の歳時記にも「鱸釣」が立項されている。
貧厨の光を生ず鱸かな 正岡子規
春が旬の寿司ネタ|鯛(たい)
「めでたい」に掛けて慶事には欠かせない食材であるとともに、高級食材としても認識されている真鯛の旬は、産卵期を目前とした2月から4月。この頃は、産卵のために岸に寄ってくる。桜のシーズンに獲れるものは特に、「桜鯛」といって珍重する。近年では養殖技術が発達して脂ののったものが出荷されているが、天然物は潮流にもまれて身がしまり、体色が鮮やかなものが多い。明石鯛や鳴門鯛は、ブランド魚として有名。
桜鯛|晩春の季語
鎌倉時代の歌人である藤原為家は「ゆく春のさかひの浦のさくらだひ あかぬかたみにけふや引らん」と歌っており、古くから「桜鯛」は風物詩として認識されていた。
俎板に鱗ちりしく桜鯛 正岡子規
夏が旬の寿司ネタ|蛸(たこ)
ミズダコやイイダコも食されるが、「蛸」と言えばマダコ。マダコは身が締まり、濃厚な旨みがあって高級とされる。年中獲れるが、明石の蛸が有名な関西では、産卵期の6~7月を旬とし、これを「麦わらだこ」と呼ぶ。ただし、11月から12月に漁期を迎える三陸では、マダコの旬は冬場だととらえられている。一般には、吸盤が整然と並ぶメスの方が、オスよりも身が柔らかくて美味いとされている。
蛸|三夏の季語
関西では半夏生に蛸を食べる習慣がある。松尾芭蕉に「たこ壺やはかなき夢を夏の月」の句もあるが、夏の季語となったのは近年のことである。
地のもののこれ一品と云へば蛸 高沢良一
秋が旬の寿司ネタ|太刀魚(たちうお)
スズキ目サバ亜目タチウオ科タチウオは、季節による食味の変動は意外と少ない。それでも秋が旬と言われるのは、産卵のために沿岸部に押し寄せ、よく釣れるため。ただし、小ぶりのものは食味が落ち、大きなものほど高級とされる。最近では輸入物の近縁種なども販売されているが、食べるならやはり国産の天然物。近年ではブランド化も進んでおり、大分の「銀たち」や熊本の「田浦銀太刀」は、ブランド魚として定着している。
太刀魚|仲秋の季語
太刀のような魚体を持つことや、垂直に立って泳ぐことから「タチウオ」と呼ばれる。
太刀魚の出刃庖丁にはてにけり 正岡子規
夏が旬の寿司ネタ|飛魚(とびうお)
「丸トビ」と呼ばれるホソトビウオや、「角トビ」と呼ばれるツクシトビウオ・ハマトビウオなど、多くの種類がある。種が特定された状態で流通することは少ないが、より大型の角トビの方が美味く、ハマトビウオは「春トビ」、ツクシトビウオは「夏トビ」と、旬の季節を冠して呼ばれることがある。脂が少ない魚であり、同じ青魚のサンマなどとは異なる旨さを有している。因みに夏が旬のトビッコは、飛魚の卵。
飛魚|三夏の季語
顎が落ちるほど美味いために「アゴ」と呼ぶ地方もある。
飛魚の干物にされてしまひけり 鈴木真砂女
夏が旬の寿司ネタ|鳥貝(とりがい)
東北以南の内湾の泥地に生息しているが、冷凍して中国や韓国から輸入したものが多く出回っている。丹後地方では稚貝の育成方法が開発され、ここで養殖した鳥貝は天然物よりよく育ち、「丹後とり貝」というブランド物となった。「丹後とり貝」の旬は6月であるが、天然ものの鳥貝の旬は4月から7月である。秋に獲れるものは歯ごたえがあるが、春貝に比べて甘みが少ない。因みに、食用にするのは、足と呼ばれる部分である。
鳥貝|三春の季語
「鳥貝」の名は、オハグロと呼ばれる足の部分が鳥の嘴に似ているところからきている。
幸かひとり鳥貝の寿司食ふは 小池一覚
夏が旬の寿司ネタ|鱧(はも)
関東ではあまり馴染みがない鱧であるが、関西ではメジャーな魚である。蒲焼を用いる鱧鮨は、京都の夏に欠かせない名物料理でもある。鱧は8月から9月にかけてが産卵期であり、産卵前に栄養を蓄えた鱧は脂が乗っている。ただし、本当に美味い鱧は、10月から11月にかけて獲れたもの。この頃の鱧は「落ち鱧」と呼ばれ、冬眠に入るために栄養をたくさん取り込み、産卵前の鱧以上に脂が乗っている。
鱧|三夏の季語
客人を鱧でもてなす祇園祭のために、このころの鱧は「祭鱧」とも呼ばれる。初夏の出始めの鱧は「水鱧」ともいう。
飯鮓の鱧なつかしき都かな 宝井其角
冬が旬の寿司ネタ|鮃(ひらめ)
現在では養殖ものが多くなり、季節を問わず脂の乗った鮃を食べることができるが、天然ものの旬は冬。全国で水揚げされ、一大産地の青森では11月から1月、長崎では1月から3月が旬である。春から夏にかけて産卵期を迎え、産卵した後の鮃は「くそ鮃」と呼んで敬遠する傾向にある。また、「えんがわ」といえば一般に鮃の縁側を指すが、回転寿司店などの「えんがわ」の多くは、別種のオヒョウの縁側を使っている。
鮃|三冬の季語
ムニエルなどされる舌鮃は別種となり、こちらは夏の季語である。かつて鮃と鰈は、大きさで区別されていた。大きい方が鮃。
人間になりそこねたる比目魚かな 佐藤鬼房
冬が旬の寿司ネタ|河豚(ふぐ)
河豚でも「とらふぐ」が最高級。とらふぐの旬は「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われるが、産卵前の晩冬から初春が最も美味。菜種河豚と呼ばれる晩春の天然物の河豚は、特に毒性が増し食用には向かない。しかし、無毒河豚の研究が進み、年中安心して食せるようになってきた。ただ、最大の魅力ともいえる食感など、天然物に及ばないところが多い。近年ではブランド河豚も多く出てきたが、本場はやはり下関。
河豚|三冬の季語
平安時代には「ふく」「ふくべ」と呼んでいた。大阪では、時々毒に当たることを「たまに当たる」として、「てっぽう」と呼ぶ。
河豚食わぬ奴には見せな富士の山 小林一茶
冬が旬の寿司ネタ|鰤(ぶり)
代表的な出世魚で、関東では、モジャコ⇒ワカシ⇒イナダ⇒ワラサ⇒ブリ、関西では、モジャコ⇒ワカナ⇒ツバス⇒ハマチ⇒メジロ⇒ブリと名前を変え、80cmあるいは6㎏以上のものが鰤である。日本近海を回遊しており、11月末から2月にかけて獲れた天然物は、「寒鰤」と呼ばれる。特に、富山の「氷見の寒鰤」は有名。脂がよくのった魚であるが、寒鰤は背までサシが入り、身もよく締まっている。
鰤|三冬の季語
「アブラ」に語源があると言われる「鰤」。冬場の雷は豊漁を呼ぶとして、「鰤起し」という季語もある。
いのちかけて待ちゐし鰤や鰤来る 上村占魚
夏が旬の寿司ネタ|帆立(ほたて)
帆立は北海道や東北の浅い海で獲れるが、養殖が盛んに行われており、本物の天然ものは少ない。主に貝柱が食される帆立の旬は、貝柱が最も大きくなる6月から8月頃であり、この頃には甘みも増す。冬場には生殖巣が発達して貝柱が小さくなるものの、生殖巣にも独特の味わいがあって好まれる。雄の生殖巣は白く雌は赤いが、味にほとんど違いはない。また、貝柱の周囲につくヒモも、その食感と味わいが好まれ、ヒモのみの握りも人気。
帆立貝|三夏の季語
貝を帆にして海を走るという俗説がある。貝殻を扇に見立てて「海扇」という名もある。
活ホタテ開きほっけに地酒酌む 高沢良一
冬が旬の寿司ネタ|鮪(まぐろ)
塩蔵では食味が落ちるため、江戸時代に醤油が普及して「ズケ」が登場するまでは下魚として不人気だった鮪。トロは「猫またぎ」といって毛嫌いされた。今では、部位ごとに名を持ち、「赤身」「中トロ」「大トロ」どれも人気の寿司ネタとなっている。年中食すことが出来る鮪であるが、最高級品は冬場に撮れた天然物のクロマグロ。中でも12月から1月に回遊してくる大間崎沖で獲れたものは有名で、身がしまり脂がよく乗っている。
鮪|三冬の季語
縄文遺跡から発掘され、古事記にも記され親しまれてきた鮪は、古くは「しび」と呼ばれた。和歌の世界では、「大魚(おふを)よし」は「鮪(しび)」の枕詞である。
鮪糶る男の世界覗きけり 鈴木真砂女
一生を泳ぎつづける鮪かな 星野恒彦
壁掛けカレンダー 30冊から【名入れ専用品】日本の味(寿司)【 カレンダー 名入れカレンダー 印刷 社名 団体名 小ロット】【楽ギフ_名入れ】 料理15088円(税込/送料別)カード利用可・海外配送不可・翌日配送不可カレンダー 印刷 卓上カレンダー 壁掛けカレンダー カレンダー 名入れ 名入れカレンダー カレンダー カレンダー2025 カレンダー令和7年 【おしごと工房】
Tweet