筍や甥の法師が寺とはん 与謝蕪村 季竹の子や幼き時の絵すさび 松尾芭蕉 季たかんなの影は竹より濃かりけり 中村草田男 季竹の子や児の歯ぐきのうつくしき 服部嵐雪 季客ありて筍掘の小提灯 高野素十 季筍の親竹遠くはえにけり 村上鬼城 季宿々はみな新茶なり麦の秋 森川許六 季新茶汲むや終りの雫汲みわけて 杉田久女 季新茶古茶しらず疲れに喫したる 皆吉爽雨 季新茶の香真昼の眠気転じたり 小林一茶 季女夫仲いつしか淡し古茶入るる 松本たかし 季出流れの晩茶も八十八夜かな 正岡子規 季卯花も母なき宿ぞ冷じき 松尾芭蕉 季花桐や二条わたりの夕月夜 内藤鳴雪 季桐の花一しなありし木立かな 椎本才麿 季暁をさへぎるものや桐の花 松瀬青々 季花桐や重ね伏せたる一位笠 前田普羅 季塀越しに大工遣ひや桐の華 岩田涼菟 季花桐の琴星を待てば下駄屋かな 正岡子規 季鰹売いかなる人を酔はすらん 松尾芭蕉 季たらたらと地に落ちにじむ紅さうび 高浜虚子 季手の薔薇に蜂来れば我王の如し 中村草田男 季夕風や白薔薇の花皆動く 正岡子規 季ふところに朝刊薔薇を頒たれし 永井東門居 季吹き満ちて雨夜も薔薇のひかりあり 水原秋桜子 季夕焼消え真紅の薔薇を抱き来し 野見山朱鳥 季己れ刺あること知りて花さうび 高浜虚子 季愁いつつ岡にのぼれば花いばら 与謝蕪村 季撫子や夏野の原の落し種 荒木田守武 季緑わく夏山陰の泉かな 大島蓼太 季掬ぶよりはや歯にひゞく泉かな 松尾芭蕉 季いのち短し泉のそばにいこひけり 野見山朱鳥 季麦の秋雀等海へ出てかへす 山口誓子 季麦秋の蝶吹かれ居る唐箕光 飯田蛇笏 季草原へ投網なげ干し麦の秋 原石鼎 季麦秋や子を負ひながら鰯売 小林一茶 季麦秋や乳子に嚙まれし乳の創 橋本多佳子 季青雲と白雲と耀り麦の秋 日野草城 季花をやれとかく浮世は車百合 西山宗因 季蟇歩くさみしきときはさみしと言へ 大野林火 季雲を吐く口つきしたり蟇 小林一茶 季凡人の雨夜覗くや蟇 佐藤惣之助 季塔の下蟇出でゝ九輪睨みけり 河東碧梧桐 季蟾蜍長子家去る由もなし 中村草田男 季酔うて寝むなでしこ咲ける石の上 松尾芭蕉 季ところてん逆しまに銀河三千尺 与謝蕪村 季清滝の水汲ませてやところてん 松尾芭蕉 季夏の風邪半月傾ぎゐたりけり 加藤楸邨 季夏風邪はなかなか老に重かりき 高浜虚子 季鼻汁溝泥のごとくかなしや夏の風邪 山口青邨 季夏草に松の木やせる岡辺かな 河合曾良 季夏草に延びてからまる牛の舌 高浜虚子 季青草に猫夕濤を見てくれば 大野林火 季葛引くや朽ちて落ちたる山筧 原石鼎 季仲春や庭の撩乱古机 松根東洋城 季五月雨や檜の山の水の音 高浜虚子 季道ふさぐ竹のたわみや五月雨 正岡子規 季眼を病んで灯ともさぬ五月雨 夏目漱石 季若葉雨なにかやさしくものを言ふ 西島麦南 季梅雨永や隣の屋根の瓦浪 松根東洋城 季夕立のかしら入れたる梅雨かな 内藤丈草 季葉を巻いてトマト病みをり梅雨の庭 松本たかし 季梅雨凝つて四山暗さや軒雫 原石鼎 季談笑のいと朗かに梅雨の宿 富安風生 季目をつむり梅雨降る音のはなれざる 長谷川素逝 季梅雨見つめをればうしろに妻の立つ 大野林火 季梅雨の海静かに岩をぬらしけり 前田普羅 季荒梅雨の降れば必ず人死ぬる 日野草城 季降音や耳もすふ成梅の雨 松尾芭蕉 季天龍の黴雨や白髪の渡し守 森川許六 季やれ打つな蠅が手をすり足をする 小林一茶 季金蠅のごとくに生きて何をいふ 加藤楸邨 季蒼蠅邪神凶人水に溺れぬる 佐藤惣之助 季生創に蠅を集めて馬帰る 西東三鬼 季憂き人の旅にも習へ木曾の蠅 松尾芭蕉 季虹のぼりゆき中天をくだりゆき 山口誓子 季虹たるるもとや樗の木の間より 黒柳召波 季夕虹に蜘蛛の曲げたる青すゝき 飯田蛇笏 季赤ん坊腕にやはらかし虹仰ぐ 中島斌雄 季寝るべしや梅干ほして一昼間 鈴木道彦 季梅干にすでに日蔭や一むしろ 河東碧梧桐 季木の下に其梅漬ける小庭かな 尾崎紅葉 季梅干して人は日蔭にかくれけり 中村汀女 季塩噴きしひね梅干を珍重す 富安風生 季摘み摘みて隠元いまは竹の先 杉田久女 季かたつぶりけさとも同じあり所 黒柳召波 季蛇嫌ひなりし学僧わがあとに 後藤夜半 季水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首 阿波野青畝 季若き蛇跨ぎかへりみ旅はじまる 西東三鬼 季汲まぬ井を娘のぞくな半夏生 池西言水 季病室に降る煤のあり半夏生 石田波郷 季半夏水や野菜のきれる竹生島 森川許六 季医通ひの片ふところ手半夏雨 大野林火 季涼風や青田のうえの雲の影 森川許六 季一点の偽りもなく青田あり 山口誓子 季虹の中人歩きくる青田かな 松本たかし 季書きだめて手紙ふところ青田道 石橋秀野 季山々を低く覚ゆる青田かな 与謝蕪村 季能舞台地裏に夏の山入り来 高浜虚子 季夏嶽の月に霧とぶさるをがせ 飯田蛇笏 季
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