日焼子の肩胛骨は翼のあと 大佐優 季山の日に焼けてつとめの明日がまた 大島民郎 季夏まけの歩のふわふわと二学期へ 林翔 季夏風邪やすずめのこゑに耳藉して 星野麥丘人 季忙中閑ありて夏風邪もらひけり 西村勝美 季眠たさの涙一滴夏の風邪 野澤節子 季夏痩の髪も細ると思ひけり 宇都木水晶花 季夏痩せて神宿る瞳をおそれけり 佐野まもる 季月添ひてかなしさこほる萩すすき 服部土芳 季竹割つて竹の匂ひの端午かな 木内彰志 季雨がちに端午ちかづく父子かな 石田波郷 季立山に雲をとばして鯉のぼり 中山純子 季子供の日小さくなりし靴いくつ 林翔 季父の日や手もちぶさたの耳掃除 津端きしを 季父の日の後姿を妻が言ふ 有働亨 季父の日の高波のいつ衰へし 大牧広 季滝なすや四万六千日の雨 有馬朗人 季鬼灯市夕風のたつところかな 岸田稚魚 季鬼灯市雨あをあをと通りけり 永方裕子 季水の輪とかやつり草と祭かな 藤田湘子 季祭笛吹くとき男佳かりける 橋本多佳子 季将門の日照雨ぱらつく祭かな 蟇目良雨 季形代に黒髪のなき怨みかな 鈴木鷹夫 季思川白きもの立て夏祓 阿波野青畝 季真向ひに海ある茅の輪くぐりけり 福島勲 季鉾揺れて祇園囃子の揺れて過ぐ 山口超心鬼 季月鉾の月に地球の雨が降る 町垣鳴海 季東山回して鉾を回しけり 後藤比奈夫 季絵日記に幼な手の藍原爆忌 佐藤鬼房 季原爆忌真赤な花を駅に買ふ 渡辺よし生 季広島忌雷雨となりて海叩く 林徹 季業平忌青女房の恋疾し 筑紫磐井 季水音のどこから夢の業平忌 寺井谷子 季硝子戸に竹幹の青業平忌 茨木和生 季蚊を打つて我鬼忌の厠ひびきけり 飴山實 季青年の黒髪永遠に我鬼忌かな 石塚友二 季河童忌の庭石暗き雨夜かな 内田百閒 季水中にくもる白日桜桃忌 鷲谷七菜子 季他郷にてのびし髭剃る桜桃忌 寺山修司 季傘立にのこる一本桜桃忌 遠藤若狭男 季赤楝蛇消えて伊那谿深くなり 石寒太 季蛇のあとしづかに草の立ち直る 邊見京子 季蛇搏ちし棒に力のなほ余る 牧辰夫 季父となりしか蜥蜴とともに立ち止る 中村草田男 季いつまでも尾の見えてゐる蜥蜴かな 藺草慶子 季蜥蜴消え日当る石となりにけり 小澤光洋 季蟾蜍さびしき顔をして寄り来 安住敦 季円覚寺累代の蟇さぶらへり 筑紫磐井 季靴先で蟇の一歩を促せり 富田直治 季母呼べば馳せてくるなり羽抜鶏 日原傳 季韋駄天走り板につきたる羽抜鶏 倉橋羊村 季郵便夫ゆけば蹤きゆく羽抜鶏 小原啄葉 季あけぼののふくらんで来る閑古鳥 小出和成 季郭公や何処までゆかば人に逢はむ 臼田亞浪 季郭公のもの黎明の高原は 里川水章 季袖ふるは峠のならひほととぎす 中山世一 季ほとゝぎすなべて木に咲く花白し 篠田悌二郎 季子を捨てし時鳥いま南へ 中村苑子 季木枯の根にすがり付檜皮かな 天野桃隣 季昼舟に乗るやふしみの桃の花 天野桃隣 季子があれば子をおもふなり青葉木菟 成瀬櫻桃子 季母がりの夜着の重さよ青葉木菟 塩谷はつ枝 季三男の一男が逝き青葉木菟 淵脇護 季ねむらねば血はうすくなる青葉木菟 平川光子 季星よりも高き祖谷の灯木の葉木菟 杉田智栄子 季杉くらし仏法僧を目のあたり 杉田久女 季仏法僧こだまかへして杉聳てり 大野林火 季束稲山は雲の須彌壇なつうぐひす 中原道夫 季待つ明るさ夏うぐひすの次の声 加倉井秋を 季老鶯や鉈彫なれど美男仏 岡田貞峰 季郷に入るしづけさ二羽の残り鴨 川島千枝 季水暗きところにをりぬ通し鴨 星野麥丘人 季通し鴨塵焚く煙あびてあり 皆川盤水 季舷の高さに浮巣上がりけり 佐久間慧子 季朱き嘴しきりに動く浮巣かな 藺草慶子 季緑地課の預りとなる鳰浮巣 能村研三 季熱帯魚ひとも横顔見せて待つ 岡田貞峰 季水換ふる金魚をゆるく握りしめ 川崎展宏 季金魚屋の水とんがりてゆれてをり 上野章子 季焼串に鮎躍らせてありにけり 長谷川櫂 季鮎食べて父母の山河をまだ訪はず 関戸靖子 季四万十川の水の匂の鮎届く 藤川澄子 季断つほどの酒にはあらず初鰹 鷹羽狩行 季鰹樽食み出す尾鰭みな動く 中尾優里 季鰹船出でゆく沖はなほ荒れつ 山口草堂 季夕風にととのふ鉦や祭鱧 桂信子 季まつくらな山見て鱧の洗ひかな 住田榮次郎 季大粒の雨が来さうよ鱧の皮 草間時彦 季海に還す水母の傷は海が医す 津田清子 季裏返しみても海月は海月かな 戸塚きんじ 季岸壁に打つ波水母裏返す 加藤絹子 季蟹つかむことを覚えて帰りけり 国友すみ女 季貝塚に蟹は火色に生きてをり 飯山修 季沢蟹の一瞬われに立ち向かふ 須崎京子 季散る波の岩にすばやき小蟹かな 大利式子 季舟虫の四散におくれゐるひとつ 森本純子 季舟虫のぞろぞろと身のこそばゆし 日美井雪 季舟虫の生涯ひとを怖るるや 樋笠文 季舟虫の敗走めくも壇の浦 濱坂ひろむ 季蛍見てあやふき橋を戻りけり 山本昭子 季
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