墓山の上にも一戸実南天 山根かよ子 季つくばひの水の鼓動や実南天 野口白城 季父先に死んでうれしき実南天 岡本高明 季生きものに眠るあはれや龍の玉 岡本眸 季深々と沈みて碧し龍の玉 野村喜舟 季塔の影およぶところに竜の玉 村沢夏風 季寒木瓜の鮮かな紅衰へず 山口波津女 季寒木瓜や先きの蕾に花移る 及川貞 季寒木瓜や性根すゑたる甲斐の山 日美清史 季寒木瓜や人よりも濃き土の息 福永耕二 季わが歩む落葉の音のあるばかり 杉田久女 季落葉明りに岩波文庫もう読めぬ 安住敦 季落葉踏む音にそばだて木々の耳 藤井亘 季落葉籠百年そこにあるごとく 大串章 季橡落葉して橡の実の落ちてゐず 茨木和生 季銀杏落葉一枚咬みて酒場の扉 土生重次 季葉を落しつくしたる木のやすらげる 加藤鎮司 季木の葉散る別々に死が来るごとく 津田清子 季いてふ散るすでに高きは散りつくし 岸風三樓 季足尾銅山枯葉に重さありにけり 渡辺恭子 季地の色となるまで枯葉掃いてゐる 野木桃花 季見てをりし枯葉を風の攫ひたる 高石幸平 季教会と枯木ペン画のごときかな 森田峠 季裸木となりて樹齢を偽らず 早野広太郎 季橋かけてさびしさ通ふ枯木山 岡本眸 季一本はうしろ姿の冬木立 和田耕三郎 季あせるまじ冬木を切れば芯の紅 香西照雄 季寒林をぬけ来し犬を犬が嗅ぐ 平井さち子 季立てかけて枯れと一つに竹箒 渡辺純枝 季青馬に一鞭枯れを急かせけり 高橋青塢 季大空に日はうすうすと枯茨 長谷川櫂 季枯蔓となりてこの世につながれる 和田孝子 季冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋桜子 季寒菊や母のやうなる見舞妻 石田波郷 季寒菊に文字生きしまま灰の紙 平畑静塔 季狂はねば恋とは言はず寒牡丹 西嶋あさ子 季菰ぬちに息ととのへて寒牡丹 松本澄江 季死ぬるまでかくてひとりや冬牡丹 有馬籌子 季箒目の乾きて消ゆる冬牡丹 千葉孝子 季葉牡丹のひとつひとつの夕明り 森口千恵子 季葉牡丹の渦きつちりと核家族 木内怜子 季四五本の雨葉牡丹の渦に消ゆ 角川春樹 季葉牡丹や険しき色を芯に措く 藤田直子 季水仙の葉先までわが意志通す 朝倉和江 季水かへて水仙影を正しけり 日野草城 季一茎の水仙の花相背く 大橋越央子 季千両の実だけが紅し日照雨過ぎ 細田寿郎 季万両やとび石そこに尽きてゐる 五十崎古郷 季坊つちやんの清こそよけれ藪柑子 須原和男 季風の日の水さびさびと赤蕪 長谷川久々子 季万葉の山の麓のかぶら売り 岸原清行 季軒先にいびつな夕日蕪蒸し 鍵和田秞子 季直會の供物さがりて緋の蕪 中原道夫 季土が力ゆるめ大根抜けにけり 黛執 季死にたれば人来て大根煮きはじむ 下村槐太 季干大根日かげればすぐ風が吹く 大峯あきら 季葱匂ふ深きより水湧くごとく 橋閒石 季数行の添書めきて葱の畝 宮津昭彦 季4Bで描く白菜の断面図 浦川聡子 季高原を立つ白菜の満載車 北本敏子 季白菜のまぶしき白を裂きにけり 柴田艶子 季何のむなしさ白菜白く洗ひあげ 渡邊千枝子 季身を折つて己を支ふ枯れ蓮 熊野鳥湖 季枯蓮の折れしを風の吹き起こす 兒玉南草 季折れし葉が枯れし蓮には重荷なる 津田清子 季魂の抜けし姿に蓮枯るる 今井つる女 季枯菊を剪りつくしたるあとの闇 小野寺すすむ 季枯菊を括り直して未だ焚かず 板橋美智代 季枯菊を焚きて母なる地を焦す 大橋敦子 季川幅を追ひつめてゆく枯芒 鷲谷七菜子 季日時計のやうな灯台枯葎 須原和男 季草枯れて牙美しきけものらよ 牧辰夫 季大阿蘇の冬草青き起伏かな 稲荷島人 季大いなる影が動きて冬の草 楠部秀一 季冬萌のけふしづかなる殉教地 山岸治子 季新年のゆめなき夜をかさねけり 飯田蛇笏 季オリオンの盾新しき年に入る 橋本多佳子 季一歳の稚児が禮して年新た 都筑智子 季あらたまの猪に目を入れ飴細工 有馬朗人 季やや涸れしこゑをあやつる年はじめ 原裕 季年迎ふ鈴を惜まず三番叟 飯島晴子 季年いよよ水のごとくに迎ふかな 大野林火 季山に立ち山に礼して年迎ふ 岡田日郎 季只の年またくるそれでよかりけり 星野麥丘人 季木に石に注連かけて年改まる 右城暮石 季句を捨てゝしづかに年の改まり 黒田杏子 季正月や楷書のごとき山の晴 林徹 季正月の地べたを使ふ遊びかな 茨木和生 季去年今年闇にかなづる深山川 飯田蛇笏 季暗きより火種をはこぶ去年今年 柿本多映 季枕に手置いてはるかや初昔 鷲谷七菜子 季琅玕や一月沼の横たはり 石田波郷 季元日やほのぼのと野に青むもの 鍵和田秞子 季元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介 季元日や日のあたりをる浅間山 臼田亞浪 季元日の畳恋しや肘と膝 三橋敏雄 季元日の人通りとはなりにけり 正岡子規 季元日の田ごとの畦の静かな 阿波野青畝 季元日の日向ありけり飛鳥寺 石田勝彦 季厠より元日の濤見てゐたり 本宮哲郎 季
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