旅人や秋に後るゝ雲と水 飯田蛇笏 季かなたなる海に日くらみ橇のみち 飯田蛇笏 季人妻のこゝろやさしき薫衣香 飯田蛇笏 季鷹ゆけり風があふれて野積み藁 成田千空 季盃の酒打ち捨つる落花かな 大谷句仏 季ひらかれて穴子は長き影失ふ 上村占魚 季穴子裂く大吟醸は冷やしあり 長谷川櫂 季穴子釣るや汐の満ちくる船溜り 野村喜舟 季善く笑ふ夫婦ぐらしや冬籠 正岡子規 季片富士の片そぎや雪の峰つゞき 河東碧梧桐(三千里) 季今日仕事忘れ勤労感謝の日 稲畑汀子 季松茸や知らぬ木の葉のへばりつく 松尾芭蕉 季冬すみれおのれの影のなつかしき 川崎展宏 季白鳥は悲しからんに黒鳥も 高屋窓秋 季あたゝかき十一月もすみにけり 中村草田男(長子) 季うらむ気は更にあらずよ冷たき手 高浜虚子(五百五十句) 季松虫に恋しき人の書斎かな 高浜虚子(五百句) 季蒲公英のかたさや海の日も一輪 中村草田男 季年忘れ一斗の酒を尽しけり 正岡子規 季世の中を知らずかしこし小鯵売 宝井其角 季活鯵や江戸潮近き昼の月 小林一茶 季梅を貰ひ梅酒を貰ひ水戸一泊 高野素十 季埋火や何を願ひの独りごと 井上井月 季迷惑の日も家礼とや煤払 井上井月 季飛魚の干物にされてしまひけり 鈴木真砂女 季橋をゆく人悉く息白し 高浜虚子(五百五十句) 季何となう死にに来た世の惜しまるゝ 夏目漱石 季芭蕉忌や茶の花折つて奉る 夏目漱石 季東風や吹く待つとし聞かば今帰り来ん 夏目漱石 季巡礼と野辺につれ立つ日永哉 夏目漱石 季冬籠心を籠めて手紙書く 高浜虚子 季鰯さいても誕生日 種田山頭火 季氷解けて水の流るゝ音すなり 正岡子規 季山越えて来たり峠は雪なりし 高浜虚子 季風吹て師走八日といふ日哉 正岡子規 季秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ 杉田久女 季秋鯵に遊行寺通り早日暮れ 長谷川かな女 季塚のしくれ紙にしめして泣日かな 三浦樗良 季狐火や髑髏に雨のたまる夜に 与謝蕪村 季この後の一百年や国の春 高浜虚子 季いさき食ふ海に六分の入陽かな 榎本好宏 季汐よしとうなづきて出づいさき船 松崎鉄之介 季赤貝のひもに終りし夜の鮓 森澄雄 季西瓜くふ奴の髭の流れけり 宝井其角 季瓜西瓜ねんねんころりころり哉 小林一茶 季夜雨しばしば照り極つて秋近し 大須賀乙字 季蚊遣火や縁に腰かけ話し去る 高浜虚子 季七種のそろはずとてもいわゐ哉 加舎白雄 季年は人にとらせていつも若夷 松尾芭蕉 季大阪の寒さこれより初戎 西村和子 季また過ぎぬ鏡開の一日も 百合山羽公 季寒燈にいつまで人の佇みぬ 高浜虚子(六百句) 季初花に伊勢の鮑のとれそめて 松尾芭蕉 季真中に鮑が坐る夏料理 鈴木真砂女 季太陽へ海女の太腕鮑さげ 西東三鬼 季どんど焼どんどゝ雪の降りにけり 小林一茶(七番日記) 季藪入に生れ落ちけり遠眼鏡 川崎展宏 季冬講義うしろ漂ふカレーの香 赤尾兜子 季マスクして我と汝でありしかな 高浜虚子(五百五十句) 季鶯の枝ふみはづすはつねかな 与謝蕪村 季水仙に春待つ心定まりぬ 高浜虚子(五百五十句) 季満月に落葉を終る欅あり 大峯あきら 季節分の豆をだまつてたべて居る 尾崎放哉 季春水の上の障子のあきにけり 野村泊月 季海原は塩味バレンタインデー 櫂未知子 季春一番今日は昨日の種明かし 上田日差子 季我心春潮にありいざ行かむ 高浜虚子 季うまづらかははぎ長き泣顔いかにせん 加藤楸邨 季二歩ふめば二歩近づきぬ春の富士 富安風生 季春の鳶寄りわかれては高みつつ 飯田龍太 季一片の蓼の葉あをし鱚にそへ 富安風生 季引潮の今がさかひや鱚を釣る 高浜年尾 季鱚釣や青垣なせる陸の山 山口誓子 季鱚の浦富士見えぬ日の幸多き 永田青嵐 季人の世は無常が常よ落椿 大谷句仏 季閏年や一日遅き花の春 正岡子規 季孤児たちに映画くる日や燕の天 古沢太穂 季わが死にしのちも夕焼くる坂と榎 加藤かけい 季鍛治の火に鰶焼くと見て過ぎつ 山口誓子 季市場人に氷片ふられ透くこのしろ 古沢太穂 季啓蟄の虫より早く起き出でて 山口青邨 季啓蟄のカーテン引けば常の夜 阿部みどり女 季舟岸につけば柳に星一つ 高浜虚子 季馬はゆけど今朝の不二見る秋路哉 上島鬼貫 季さしむかふ心は清き水かがみ 土方歳三 季九十年生きし春着の裾捌き 鈴木真砂女 季芽吹く木々おのおの韻を異にして 高浜虚子(六百句) 季蜂飛べりラジオ雑音となりし昼 長谷川かな女 季傷みやすい七十男とさより食ぶ 金子兜太 季夕風にそよりともせぬさよりかな 赤尾兜子 季干し上げてさよりに色の生まれたる 後藤比奈夫 季みちのくの淋代の浜若布寄す 山口青邨 季今生を燃えよと鬼の佞武多来る 成田千空 季てんと蟲一兵われの死なざりし 安住敦 季いつまでもいつも八月十五日 綾部仁喜 季葛城の山懐に寝釈迦かな 阿波野青畝 季夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ 川端茅舎 季秋風のどこにも吹けり竜飛崎 星野立子 季ケーキ焼く子が厨占め春休 稲畑汀子 季打つ櫂に鱸はねたり淵の色 宝井其角 季
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