鉄階にいる蜘蛛智慧をかがやかす 赤尾兜子 季たのむ洋傘に無数の泡溜め笑う盲人 赤尾兜子 季藁積んで広く淋しき枯野かな 江左尚白 季あかがねの大仏こそ花の冷 長谷川櫂 季降り足りて三日月寒き残花かな 金尾梅の門 季花冷に欅はけぶる月夜かな 渡辺水巴 季花すぎて花の冷えある昨日けふ 上村占魚 季夕毎の雷遠く雛育ちゆく 金尾梅の門 季雨少し雷少し第一夜 高野素十 季雷の下キヤベツ抱きて走り出す 石田波郷 季雷の音ひと夜遠くを渡りをり 中村草田男 季雷やみて茅の輪ぬけ出し心かな 釈蝶夢 季遠雷のいとかすかなるたしかさよ 細見綾子 季風鈴の舌の赤さや大雷雨 野村喜舟 季鳴きこたふ山家の鶏やはたた神 水原秋桜子 季戦争の終りたゞ雷鳴の日なりけり 中村草田男 季きてもみよ甚べが羽織花ごろも 松尾芭蕉 季今宵死ぬ人もやあらん花衣 大谷句仏 季旅衣花衣ともなりながら 星野立子 季春塵やいつひろごりし生活の輪 久保田万太郎 季春塵の衢落第を告げに行く 大野林火 季春塵裡常凡の夫婦たらむかな 石塚友二 季風に汲む筧も濁り花の雨 杉田久女 季くれなゐの糸のごとくに花しぐれ 角川春樹 季退院すエイプリルフールに先んじて 百合山羽公 季当てつけに死んでやらうか万愚節 鈴木真砂女 季四月馬鹿真顔さらして花のもと 臼田亞浪 季うかれける人や初瀬の山桜 松尾芭蕉 季曙や露とくとくと山桜 臼田亞浪 季海手より日は照りつけて山ざくら 与謝蕪村 季どしや降りに落花ただよふ仏生会 大野林火 季麦飯や母にたかせて仏生会 宝井其角 季大雨の降りかくす嵯峨や仏生会 渡辺水巴 季雲のあゆみ水の行くかたや仏生会 加舎白雄 季仏母たりとも女人は悲し灌仏会 橋本多佳子 季浜風に色の黒さよ誕生仏 小林一茶 季花祭みづやまの塔そびへけり 飯田蛇笏 季奈良七重七堂伽藍八重桜 松尾芭蕉 季ひとひらの雲ゆき散れり八重桜 三橋鷹女 季日と空といづれか溶くる八重桜 渡辺水巴 季花守や夜は汝が八重桜 小林一茶 季たとふれば独楽のはぢける如くなり 高浜虚子 季一つ根に離れ浮く葉や春の水 高浜虚子 季馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ 水原秋桜子 季月花の愚に針たてん寒の入 松尾芭蕉 季燃え出づるあちらこちらの花篝 日野草城 季まだ焚かぬ花の篝や夕間暮 高浜虚子 季花篝月の出遅くなりにけり 西島麦南 季花篝焚かぬ京には宿とらず 池内たけし 季春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎 季秋の暮業火となりて秬は燃ゆ 石田波郷 季目黒なる筍飯も昔かな 高浜虚子 季時鳥うらみの滝のうら表 松尾芭蕉 季傘つくる宿に咲いたり白牡丹 長谷川かな女 季蜘蛛に生れ網をかけねばならぬかな 高浜虚子 季いさかへる夫婦に夜蜘蛛さがりけり 種田山頭火 季夕蜘蛛のつつと下り来る迅さ見る 中村汀女 季吾を離さず山寺の女郎蜘蛛 山口誓子 季夕影や脱衣をあるく女郎蜘蛛 飯田蛇笏 季海士の顔先づ見らるゝやけしの花 松尾芭蕉 季けしの花見てゐるうちは散らざりし 加舎白雄 季梅雨晴れの夕茜してすぐ消えし 高浜虚子 季舟きては梅雨の晴間の帆を下ろす 水原秋桜子 季梅雨の人コートをぬげば服白き 星野立子 季紫陽花や昨日の誠今日の嘘 正岡子規(寒山落木) 季●華葦の伏屋ぞつひの吾が棲家 竹下しづの女 季埋火の上落魄の指五本 竹下しづの女 季飯鮓の鱧なつかしき都かな 宝井其角 季鱧の酢や満座の酔に酔はずをり 能村登四郎 季余り多く酒たしなまず鱧茶漬 青木月斗 季汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓 石田波郷 季泡盛や汚れて老ゆる人の中 石塚友二 季こんこんと親子の眠り貘枕 高橋淡路女 季雪柳さらりと女盛り過ぐ 高橋淡路女 季橋ありて水なかりけり額の花 高橋淡路女 季憂きわれをさびしがらせよ閑古鳥 松尾芭蕉 季汽車の窓案山子も人も走りけり 吉岡禅寺洞 季春めくや銀ほどきたる猫柳 吉岡禅寺洞 季季節の歯車を早くまわせスイートピーをまいてくれ 吉岡禅寺洞 季麦の毛見にぎしぎし焔あげている 吉岡禅寺洞 季月さすや沈みてありし水中花 前田普羅 季いきいきと死んでゐるなり水中花 櫂未知子 季それらしき花となりゆき水中花 片山由美子 季ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 石田波郷 季水中花培ふごとく水を替ふ 石田波郷 季衆生花に酔へば済度に我醒めん 大谷句仏 季散るときが浮むときなり蓮の花 大谷句仏 季末法の世に正法の帰り花 大谷句仏 季勿体なや祖師は紙衣の九十年 大谷句仏 季船人の應と答へし朧かな 大谷句仏 季早鮓や東海の背戸の蓼 正岡子規 季早鮓に平相国の鱸かな 炭太祇 季鮓桶の塗美しき燈下かな 星野立子 季夕立や鮓売る男しとゞなる 寺田寅彦 季鮨喰うて道を急がずなりにけり 石原八束 季あるときは船より高き卯浪かな 鈴木真砂女(生簀籠) 季●熱帯魚青きひかりを藻に点ず 水原秋桜子 季虹のごとくつらなることも熱帯魚 山口青邨 季しづかにもひれふる恋や熱帯魚 富安風生 季こひびとを待ちあぐむらし闘魚の辺 日野草城 季
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