太郎鮫血祭にして磯びらき 野見山朱鳥 季葱買て枯木の中を帰りけり 与謝蕪村 季島原や根深の香もあり夜の雨 池西言水 季二人居の一人が出でて葱を買ふ 細見綾子 季満月に葱折れてより交を絶つ 秋元不死男 季葱切つて潑刺たる香悪の中 加藤楸邨 季春風やまりを投げたき草の原 正岡子規 季●草化して胡蝶になるか豆の花 正岡子規 季たまはるる石花にかしこしひねり文 服部嵐雪 季だまり食ふひとりの夕餉牡蠣をあまさず 加藤楸邨 季松島の松に雪ふり牡蠣育つ 山口青邨 季牡蠣飯冷えたりいつもの細君 河東碧梧桐 季かきの殻藻にすむ虫のやどりかな 岡西惟中 季覚めて新雪割箸折つて火を創る 中島斌雄 季初雪は隠岐に残れる悲歌に降る 野見山朱鳥 季はじめての雪闇に降り闇にやむ 野澤節子 季木曽殿と背中合せの寒さかな 島崎又玄 季●星崎の闇を見よとや啼千鳥 松尾芭蕉 季ほととぎす郭公とて明にけり 加賀千代女 季ストーブや黒奴給仕の錢ボタン 芝不器男 季スチームやともに凭るひと母に似し 石田波郷 季暖房や時計鳴り出てゆるやかに 五十嵐播水 季緯度高く船の暖房通ひそむ 山口誓子 季一片のパセリ掃かるる暖炉かな 芝不器男 季●好日やわけても杉の空澄む日 石塚友二 季●横須賀や只帆檣の冬木立 正岡子規(寒山落木) 季●北風の星嶺も祈りの姿もつ 中島斌雄 季北風の奪へる声をつぎにけり 中村汀女 季北風に人細り行き曲り消え 高浜虚子 季青空に寒風おのれはためけり 中村草田男 季北風に糞落し行く荷馬かな 河東碧梧桐 季北風やあおぞらながら暮れはてて 芝不器男 季羽子板や子はまぼろしのすみだ川 水原秋桜子 季●わが頬にふれてあたたか枯芒 山口青邨 季鯛ひとつ投げて踊れる冬すゝき 水原秋桜子 季枯すすき海はこれより雲の色 平畑静塔 季中天の日の光浸み枯尾花 原石鼎 季狐火の燃えつくばかり枯尾花 与謝蕪村 季気をつけて見るほど寒し枯すすき 杉山杉風 季化粧ふれば女は湯ざめ知らぬなり 竹下しづの女 季漁火の見ゆる一ト間に湯ざめかな 池内たけし 季わが部屋に湯ざめせし身の灯をともす 中村汀女 季寒暮鵜の耐へとぶ一羽も叫ばずに 大野林火 季蜜柑十貧しき包ほどきけり 尾崎紅葉 季埋み置く灰に音を鳴くみかんかな 黒柳召波 季蜜柑山眼のみ頂上まで行けり 山口波津女 季寧き夜を賜へ時かけて蜜柑食ふ 石田波郷 季かの夫人蜜柑むく指の繊かりしが 安住敦 季焼芋や月の叡山如意ヶ嶽 日野草城 季さいかちの月夜や灯る焼藷屋 渡辺水巴 季石焼藷銀の匙もてすくへるよ 山口青邨 季焼薯をぽつかりと割る何か生れむ 能村登四郎 季菊の花咲くや石屋の石の間 松尾芭蕉 季●室の花日ねもすペンの音のそば 松本たかし 季室咲の豆科ばかりのはかなさよ 石塚友二 季白き巨船きたれり春も遠からず 大野林火(海門) 季●憂きことを海月に語る海鼠かな 黒柳召波(春泥発句集) 季●菊の後大根の外更になし 松尾芭蕉 季冬大根俵の中で芽出しけり 小西来山 季畑大根皆肩出して月浴びぬ 川端茅舎 季流れ行く大根の葉の早さかな 高浜虚子 季子を負うて大根干し居る女かな 正岡子規 季大根干す茅の軒端や舟大工 永井荷風 季掛大根月あそばせて家眠る 柴田白葉女 季干大根人かげのして訪はれけり 橋本多佳子 季たまたまに引人の有赤大根 服部嵐雪 季大根を引ば来てなく田鶴哉 小林一茶 季引きすすむ大根の葉のあらしかな 加舎白雄 季鞍壺に小坊主乗るや大根引 松尾芭蕉 季大根引くや低くさがりて鳶の声 村上鬼城 季ひとの家を更けてたちいで酉の市 石田波郷 季雑閙や熊手押あふ酉の市 正岡子規(俳句稿) 季●春をまつことのはじめや酉の市 宝井其角 季●世の中も淋しくなりぬ三の酉 正岡子規 季お宮迄行かで歸りぬ酉の市 正岡子規 季吉原を始めて見るや酉の市 正岡子規 季お酉樣の熊手飾るや招き猫 正岡子規 季酉の市小き熊手をねぎりけり 正岡子規 季傾城に約束のあり酉の市 正岡子規 季縁喜取る早出の人や酉の市 正岡子規 季女つれし書生も出たり酉の市 正岡子規 季子をつれし裏店者や酉の市 正岡子規 季夕餉すみて根岸を出るや酉の市 正岡子規 季こと問はん阿蘭陀広き都鳥 井原西鶴 季頭上過ぐ嘴脚紅き都鳥 松本たかし 季一里はみな花守の子孫かや 松尾芭蕉 季●駄菓子売る茶店の門の柿青し 正岡子規 季晩鐘や寺の熟柿の落つる音 正岡子規 季渋柿やあら壁つづく奈良の町 正岡子規 季渋柿や古寺多き奈良の町 正岡子規 季柿落ちて犬吠ゆる奈良の横町かな 正岡子規 季凛々と目覚時計寒波来 日野草城 季寒波来こゑを失くして息を吐く 岸田稚魚 季寒波山並われ腰立たず這い廻る 金子兜太 季建長寺さまのぬる燗風邪引くな 石塚友二 季ことごとく木枯去って陸になし 山口誓子 季虎落笛叫びて海に出て去れり 山口誓子 季荒海の能登より届く松葉蟹 星野椿 季手袋をはめ終りたる指動く 高浜虚子 季外套の襟立てて世に容れられず 加藤楸邨 季
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