寒月や門なき寺の天高し 与謝蕪村 季木の影や我影動く冬の月 正岡子規 季草枯れて狐の飛脚通りけり 与謝蕪村 季極月や雪山星をいただきて 飯田蛇笏 季寒けれど富士見る旅は羨まし 正岡子規 季しんしんと寒さがたのし歩みゆく 星野立子 季杉の雪一町奥に仁王門 正岡子規 季ともかくもあなた任せの年のくれ 小林一茶(おらが春) 季●南天に雪吹きつけて雀鳴く 正岡子規 季南天よ炬燵やぐらよ淋しさよ 小林一茶 季箱根こす人もあるらしけさの雪 松尾芭蕉 季化けそうな傘かす寺の時雨かな 与謝蕪村 季初雪や水仙の葉のたわむまで 松尾芭蕉 季百八の鐘鳴り止みぬそとは雪 三橋鷹女 季日を追うて歩む月あり冬の空 松本たかし 季冬の月寂寞として高きかな 日野草城 季冬紅葉冬のひかりをあつめけり 久保田万太郎 季三つ星の上に月ある寒さかな 及川貞 季吾が影の吹かれて長き枯れ野かな 夏目漱石 季わが門へ来さうにしたり配り餅 小林一茶 季をさな子や文庫に仕舞ふはつ氷 小林一茶 季麦の穂をたよりにつかむ別れかな 松尾芭蕉 季●朝夕に雫のふとるこのめ哉 加賀千代女 季鶯の笠おとしたる椿かな 松尾芭蕉 季鶯や柳のうしろ薮の前 松尾芭蕉 季梅が香にのつと日の出る山路哉 松尾芭蕉(炭俵) 季●門松やおもへば一夜三十年 松尾芭蕉 季下萌に明さあるごと昼の月 原石鼎 季春水や四条五条の橋の下 与謝蕪村 季春草の姿持たる裾野かな 上島鬼貫 季白梅やひと日南をあこがれぬ 石川啄木 季手折らるる人に薫るや梅の花 加賀千代女 季笋のうんぷてんぷの出所かな 小林一茶 季筍や目黒の美人ありやなし 正岡子規 季近道へ出てうれし野の躑躅かな 与謝蕪村 季長閑さや垣間を覗く山の僧 小林一茶 季白桃や莟うるめる枝の反り 芥川龍之介 季花の雲鐘は上野か浅草か 松尾芭蕉(続虚栗) 季●春たちてまだ九日の野山かな 松尾芭蕉 季春立つや昼の灯くらき山社 正岡子規 季春の夜は桜に明けてしまひけり 松尾芭蕉 季春もややけしきととのう月と梅 松尾芭蕉 季百両の石にもまけぬつつじ哉 小林一茶 季ほろほろと山吹散るか滝の音 松尾芭蕉 季枕べにことしの春は立ちにけり 日野草城 季山路きて何やらゆかしすみれ草 松尾芭蕉(野ざらし紀行) 季●暁の紺朝顔や星一つ 高浜虚子 季入る月の跡は机の四隅哉 松尾芭蕉 季薄月夜花くちなしの匂いけり 正岡子規 季籠かばふ鬼灯市の宵の雨 水原秋桜子 季川風や薄柿着たる夕涼み 松尾芭蕉 季さじなめて童たのしも夏氷 山口誓子 季山門の大雨だれや夏の月 小林一茶 季涼風の曲がりくねって来たりけり 小林一茶 季七夕の逢はぬ心や雨中天 松尾芭蕉 季散れば咲き散れば咲きして百日紅 加賀千代女 季月の頃は寐に行夏の川辺哉 杉山杉風 季月の輪をゆり去る船や夜半の夏 杉田久女 季月見草神の鳥居は草の中 水原秋桜子 季夏川をこすうれしさよ手にぞうり 与謝蕪村 季夏の夜のあけ残りけり吾妻橋 正岡子規 季ほととぎすなくなくとぶぞいそがはし 松尾芭蕉 季水底の草にこがるるほたる哉 与謝蕪村 季水の奥氷室尋ぬる柳哉 松尾芭蕉 季やがて死ぬけしきは見えず蝉の声 松尾芭蕉(猿蓑) 季●夕顔の花に冷つく枕かな 小林一茶 季夕がほや月の鏡もまたでさく 横井也有 季夕立にうたるる鯉のかしらかな 正岡子規 季赤とんぼ筑波に雲もなかりけり 正岡子規(新聞日本) 季●秋風のふきぬけゆくや人の中 久保田万太郎 季秋草のすぐ萎るるをもてあそび 中村汀女 季秋の空露をためたる青さかな 正岡子規 季秋の夜やあまへ泣き居るどこかの子 杉田久女 季朝顔や一輪深き淵の色 与謝蕪村 季一枚の紅葉かつ散る静かさよ 高浜虚子 季うつくしや障子の穴の天の川 小林一茶 季鰯雲ひとに告ぐべきことならず 加藤楸邨(寒雷) 季●大いなる団扇出てゐる残暑かな 高浜虚子 季かりがねの声の月下を重ならず 大野林火 季今日からは日本の雁ぞ楽に寝よ 小林一茶 季くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏(霊芝) 季●この道の富士になり行く芒かな 河東碧梧桐 季この道や行人なしに秋の暮 松尾芭蕉 季秋冷のまなじりにあるみだれ髪 飯田蛇笏 季白露もこぼさぬ萩のうねりかな 松尾芭蕉 季白露や茨の刺に一つづつ 与謝蕪村 季そよりともせいで秋たつことかいの 上島鬼貫 季月天心貧しき町を通りけり 与謝蕪村 季なかなかにひとりあればぞ月を友 与謝蕪村 季何着てもうつくしうなる月見かな 加賀千代女 季野ざらしを心に風のしむ身かな 松尾芭蕉(野ざらし紀行) 季●行燈に薬鑵釣りたる霜夜哉 久村暁台 季鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子 季風吹けば来るや隣のこいのぼり 高浜虚子 季春潮といへば必ず門司を思ふ 高浜虚子 季三つ食へば葉三片や桜餅 高浜虚子 季薄暑はや日陰うれしき屋形船 高浜虚子 季涼しさの肌に手を置き夜の秋 高浜虚子 季葛水に松風塵を落とすなり 高浜虚子 季客を待つ夏座布団の小ささが 高浜虚子 季
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