薄倖を頒くるごとくに蛍売る 文挾夫佐恵 蛍(夏)竹林に蛍の星座組まれけり 渡辺恭子 蛍(夏)蛍獲て少年の指みどりなり 山口誓子 蛍(夏)蛍一つ飛ぶは飛ばざるより淋し 後藤綾子 蛍(夏)蛍火の明滅滅の深かりき 細見綾子 蛍(夏)蛍火やまだ水底の見ゆる水 福永耕二 蛍(夏)一の橋二の橋ほたるふぶきけり 黒田杏子 蛍(夏)蛍籠蛍の死後も闇に置く 岡本眸 蛍籠(夏)やはらかく肩つかまれし蛍狩 朝倉和江 蛍狩(夏)次の間の畳の見ゆる火取虫 牧辰夫 火取虫(夏)火取虫翅音重きは落ちやすし 加藤楸邨 火取虫(夏)喪の家の窓すさまじき火蛾の群れ 中村苑子 火蛾(夏)森ふかきことを怖れず梅雨の蝶 根本北艸 梅雨の蝶(夏)夏蝶の影や大地は水のごとし 河内静魚 夏蝶(夏)現世へ誰つれてきし揚羽蝶 池濱フサ 揚羽蝶(夏)ものの種にぎればいのちひしめける 日野草城 物種(春)けふよりの妻と来て泊つる宵の春 日野草城(ミヤコホテル) 宵の春(春)夜半の春なほ処女なる妻と居りぬ 日野草城(ミヤコホテル) 春(春)枕辺の春の灯は妻が消し 日野草城(ミヤコホテル) 春の灯(春)をみなとはかかるものかも春の闇 日野草城(ミヤコホテル) 春の闇(春)薔薇にほふはじめての夜のしらみつつ 日野草城(ミヤコホテル) 薔薇(夏)妻の額に春の曙はやかりき 日野草城(ミヤコホテル) 春(春)麗らかな朝の焼麺麭はづかしく 日野草城(ミヤコホテル) 麗か(春)湯あがりの素顔したしく春の昼 日野草城(ミヤコホテル) 春の昼(春)永き日や相触れし手はふれしまま 日野草城(ミヤコホテル) 永き日(春)失ひしものを憶へリ花曇 日野草城(ミヤコホテル) 花曇(春)蠅帳をなつかしがりて蠅とまる 宮坂静生 蠅(夏)蛆虫の意地ある如く歩みをり 白川京子 蛆虫(夏)一つ追ひをれば二つに夜の蠅 久保田万太郎 蠅(夏)もくもくと忙しくゆく毛虫の毛 矢島渚男 毛虫(夏)毛虫焼く火のめらめらと美しき 木下夕爾 毛虫焼く(夏)毛虫かくも人に嫌はれねばならぬ 武田晩菫 毛虫(夏)煎られたる如く跳ねけりあめんぼう 行方克巳 あめんぼう(夏)あめんぼと雨とあめんぼと雨と 藤田湘子 水馬(夏)足繊き西施の湖の水すまし 松本澄江 水すまし(夏)空蝉のいづれも力抜かずゐる 阿部みどり女 空蝉(夏)電柱に充電にきて油蝉 佐藤和枝 油蝉(夏)もの音の吸ひこまれゐる蝉の穴 福永法弘 蝉の穴(夏)モナリザに仮死いつまでも金亀子 西東三鬼 金亀子(夏)ぶんぶんの死んだふりにはかかはらず 桂有梨子 ぶんぶん(夏)飛んできてガレの洋燈の金亀子 あらきみほ 金亀子(夏)死してなほ兜のおもき兜虫 土生重次 兜虫(夏)下駄箱に一夜預り兜虫 中西舗土 兜虫(夏)妻病みて髪切虫が鳴くと言ふ 加倉井秋を 髪切虫(夏)少年の少女へわたすてんと虫 きくちつねこ 天道虫(夏)のぼりゆく草細りゆく天道蟲 中村草田男 天道虫(夏)はらからの誰から死ぬや天道虫 金子晉 天道虫(夏)道をしへ帰郷の吾と知りて飛ぶ 大串章 道をしへ(夏)斑猫やわが青春にゲバラの死 大木あまり 斑猫(夏)斑猫の疑ふごとく振り返る 小松麗 斑猫(夏)蟻這はすいつか死ぬ手の裏おもて 秋元不死男 蟻(夏)蟻の列曲る見えざるものを避け 河合照子 蟻(夏)蟻を見るこころ疲れてゐる日かな 新明紫明 蟻(夏)蟻地獄昼酒利いてきたりけり 小原啄葉 蟻地獄(夏)蟻地獄すれすれに蟻働けり 加藤かけい 蟻地獄(夏)日は宙を音なくすすむ蟻地獄 黒崎かずこ 蟻地獄(夏)まくなぎに目鼻まかして牛の貌 清崎敏郎 蠛蠓(夏)まくなぎの阿鼻叫喚をふりかぶる 西東三鬼 蠛蠓(夏)まくなぎをはらひ男をはらふべし 仙田洋子 蠛蠓(夏)蚊柱の芯あるごとく直りたる 伊藤嶺水 蚊柱(夏)めまとひを連れて吊橋渡りけり 伊藤千代子 めまとひ(夏)蚊帳の中いつしか応えなくなりぬ 宇多喜代子 蚊帳(夏)ががんぼの溺るるごとくとびにけり 棚山波朗 ががんぼ(夏)ががんぼを追ふに疲れて夢のなか 大屋達治 ががんぼ(夏)ががんぼを和紙にくるみて葬れり 今津哲朗 ががんぼ(夏)蜘蛛の子の湧くがごとくに親を棄つ 加藤楸邨 蜘蛛の子(夏)蜘蛛の囲の下半分がなかりけり 高木晴子 蜘蛛の囲(夏)能の出の笛のごとくに蜘蛛の糸 宇佐美魚目 蜘蛛の糸(夏)聖書より光となりて紙魚出づる 菊池奇区夫 紙魚(夏)紙魚走る北斎の絵の波頭 藤田未捷 紙魚(夏)鴎外も茂吉も紙魚に食はれけり 藤田湘子 紙魚(夏)きらら虫江戸の江の字に沈みをる 長束澄江 雲母虫(夏)爆心地鉄骨曲げてなめくじり 松山足羽 なめくじり(夏)来しかたをかくもてらてらなめくぢら 阿波野青畝 なめくぢら(夏)蛞蝓といふ字どこやら動き出す 後藤比奈夫 蛞蝓(夏)子を殴ちしながき一瞬天の蝉 秋元不死男 蝉(夏)虱背をのぼりてをれば牢しづか 秋元不死男(瘤) 虱(夏)冬シャツ抱へ悲運の妻が会ひにくる 秋元不死男(瘤) 冬シャツ(冬)寝ねて不良の肩のやさしく牢霙る 秋元不死男(瘤) 霙(冬)でで虫や雨の匂ひの子が戻る 遠藤文子 でで虫(夏)このままの晩年でよし蝸牛 石田あき子 蝸牛(夏)蝸牛角出す昼を酒少し 小松崎爽青 蝸牛(夏)夜光虫燃ゆるうしろに波が消ゆ 山口草堂 夜光虫(夏)夜光虫岩を蝕むごとく燃ゆ 大野林火 夜光虫(夏)夜光虫見えざるものをみつめをり 加藤知世子 夜光虫(夏)糸垂れて大緑陰を一人占め 星野椿 緑陰(夏)緑蔭に読みくたびれし指栞 辻田克巳 緑蔭(夏)病みし馬緑陰深く曳きゆけり 澁谷道 緑陰(夏)新緑の闇よりヨーヨー引き戻す 浦川聡子 新緑(夏)三重の塔新緑を貫けり 池邉龍膽子 新緑(夏)緑さす石の聖母に石の御子 豊永秋郊 緑さす(夏)塔身のすつくと暗し若葉の夜 神尾久美子 若葉(夏)名簿より名を消してゆく青葉冷え 保坂敏子 青葉(夏)若楓囁くほどの風過ぎぬ 実渕真津子 若楓(夏)万緑に抱かれしより光る沼 稲畑汀子 万緑(夏)万緑を顧みるべし山毛欅峠 石田波郷 万緑(夏)暗きほど杜の都の茂りかな 竹尾嘉文 茂(夏)風を操る一本の大夏木 押谷隆 夏木(夏)夭折の素描を蔵す夏木立 山本洋子 夏木立(夏)門ありて唯夏木立ありにけり 高浜虚子 夏木立(夏)
俳句検索結果(季語付き)
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