おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒 江國滋酔郎 季繭玉に宵の雨音籠りけり 永井東門居 季麦畑や出抜けても猶麦の中 志太野坡 季春蝉のひやひやと鳴くや山の松 河東碧梧桐 季春蝉の声引き潮の音もなく 臼田亞浪 季春蝉や多摩の横山ふかからず 篠田悌二郎 季雪解川名山けづる響かな 前田普羅 季秋雨やみちのくに入る足の冷 木下杢太郎 季花あれば西行の日とおもふべし 角川源義 季山からの雨潔き夏野かな 松根東洋城 季プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 石田波郷 季蛍かごラジオのそばに灯りけり 瀧井孝作 季墓守の娘に会ひぬ冬木立 寺田寅彦 季臘梅や枝まばらなる時雨ぞら 芥川龍之介 季行く春を近江の人と惜しみける 松尾芭蕉(猿蓑) 季●日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり 松瀬青々 季毛糸編み来世も夫にかく編まん 山口波津女 季浜木綿の花の上なる浪がしら 神尾季羊 季生誕も死も花冷えの寝間ひとつ 福田甲子雄 季かごからほたる一つ一つを星にする 荻原井泉水 季足もとはもうまつくらや秋の暮 草間時彦 季手をあげて足を運べば阿波踊 岸風三樓 季くらがりの歳月を負ふ冬帽子 石原八束 季木曽の痩せもまだなほらぬに後の月 松尾芭蕉 季磐梯の晴るる夜まれに後の月 河東碧梧桐 季後の月名にも我が名は似ざりけり 八十村路通 季我衣に洩る思ひ有り後の月 高桑闌更 季後の月に明るうなりぬ八重葎 村上鬼城 季静かなる自在の揺れや十三夜 松本たかし 季嫁はつらき茄子枯るるや豆名月 松尾芭蕉 季雨の後の栗名月やひろひもの 安原貞室 季端居してかなしきことを妻は言ふ 村山古郷 季短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎 竹下しづの女(ホトトギス) 季●さびしさは垂井の宿の冬の雨 永田舟泉 季クリスマス佛は薄目し給へり 相生垣瓜人 季ナイル河の金の睡蓮ひらきけり 石原八束 季わが詩の仮幻に消ゆる胡砂の秋 石原八束 季名は花にさだまる秋の小草かな 勝見二柳 季秋の草鶴見る人も年のよる 小林一茶 季秋草一茎少しもつれて轍の中 中村草田男 季秋草に子は休らへり父も亦 前田普羅 季しら波の染にあがるや千ぐさ迄 大島蓼太 季淋しきがゆゑにまた色草といふ 富安風生 季何もかも知つてをるなり竈猫 富安風生 季凩や浪の上なる佐渡ヶ島 伊藤松宇 季葵草むすびて古きあそびかな 三浦樗良 季目の前をよぎりし蝶のもう遥か 星野高士 季行く秋の我に神無し仏無し 正岡子規 季福笹を置けば恵比寿も鯛も寝る 上野章子 季風光る海峡のわが若き鳶 佐藤鬼房 季百方に借あるごとし秋の暮 石塚友二 季火を投げし如くに雲や朴の花 野見山朱鳥 季秋扇あだに使ひて美しき 田畑美穂女 季いなびかり北よりすれば北を見る 橋本多佳子(紅絲) 季●夢いくつ見て男死ぬゐのこぐさ 能村登四郎 季コスモスの君と言はれし人思ふ 山口青邨 季人殺ろす我かも知らず飛ぶ螢 前田普羅 季白日はわが霊なりし落葉かな 渡辺水巴 季てのひらに落花とまらぬ月夜かな 渡辺水巴 季旅人と我名よばれん初しぐれ 松尾芭蕉(笈の小文) 季●はせを忌と申すもたつた一人かな 小林一茶 季一つ杭に繋ぎ合ひけり花見船 長谷川零余子 季アドバルーン冬木はづれに今日はなき 吉岡禅寺洞 季うつくしきあぎととあへり能登時雨 飴山實 季鳥のうちの鷹に生れし汝かな 橋本鶏二 季はつゆめの半ばを過ぎて出雲かな 原裕 季大鯉のぎいと廻りぬ秋の昼 岡井省二 季蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野 季茶の花や細道ゆけば銀閣寺 中川四明 季かくぞあれ鮎に砂かむ夜べの月 炭太祇 季落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり 前田普羅 季滝の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半(翠黛) 季●いつ死ぬる金魚と知らず美しき 高浜虚子 季八文字ふむや金魚のおよぎぶり 永井荷風 季水仙の花のみだれや藪屋敷 広瀬惟然 季水仙の香やこぼれても雪の上 加賀千代女 季鮎落ちて美しき世は終りけり 殿村菟絲子 季怒らぬから青野でしめる友の首 島津亮 季羅や人かなします恋をして 鈴木真砂女 季しんしんと肺碧きまで海のたび 篠原鳳作 季●朝やけの雲海尾根を溢れ落つ 石橋辰之助 季月大きく枯木の山を出でにけり 寒川鼠骨 季春眠や覚むれば夜着の濃紫 岡本松濱 季外にも出よ触るるばかりに春の月 中村汀女 季朝鵙に夕鵙に絣織りすすむ 村上霽月 季昼も寝て聞くや師走の風の音 岡本綺堂 季夜々おそく戻りて今宵雛あらぬ 大島民郎 季ロシヤ映画みてきて冬のにんじん太し 古沢太穂 季散る花の宙にしばしの行方かな 山口草堂 季蝶墜ちて大音響の結氷期 富沢赤黄男 季●春愁や草を歩けば草青く 青木月斗 季夕立や四山とどろく水の上 角田竹冷 季夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣 季露草や赤のまんまもなつかしき 泉鏡花 季大空に伸び傾ける冬木かな 高浜虚子 季日本は南進すべし芋植うる 小野蕪子 季乳母車夏の怒濤によこむきに 橋本多佳子 季たんぽぽの花大いさよ蝦夷の夏 橋本多佳子 季秋雨の瓦斯が飛びつく燐寸かな 中村汀女 季咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女 季
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